著者
岡 寛 小山 洋子 中村 満行 松本 美富士 西岡 久寿樹
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.45-50, 2014-03-30 (Released:2015-05-30)
参考文献数
18

線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)は,全身に広範囲な痛みを主訴とする原因不明の疾患で,本邦に推定で200万人以上存在する.痛みの強さの評価は,従来Visual Analog Scale(VAS),Numeric Rating Scale(NRS)等によって行われてきたが,これらは主観的である.痛みを定量化できれば痛みの認知療法となり治療は格段に進化すると考えられる.昨今,痛みを定量的に評価できる痛み定量化システム(Pain Vision®)がニプロ社より実用化され,患者の持つ痛みを客観的に評価される事が可能になった. 我々はACR1990の分類基準を満たすFM患者83人の痛みを,現在のNRSとPain Vision®で測定し,比較検討した.その結果,Pain Vision®によるFM 患者の男性閾値は9.35±2.64μA(平均±SD),女性閾値は7.93±2.30μAであったが,FM の女性で閾値の低い集団が一定の割合存在した.Pain Vision®による痛み度は男性649.91±312.94,女性688.08±526.65,と男女ともに著明な高値を示し,FM 患者の痛み度は対照群の関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)患者の痛み度346.23±335.82より有意に高かった(P<0.0001).さらにFM 患者の女性では痛みの閾値が低く,疼痛知覚過敏との関連が示唆され,これに対して,RA患者では,閾値の低下はなかった.NRSの平均は,FM患者5.7±2.0とRA患者5.5±2.2では差がなかったが,FM患者ではNRSスコアが高いほど,痛み度が高い傾向が認められた(P=0.0177). Pain Vision®による痛み度の測定は,FM患者の痛みの病態を知るうえで,優れていると考えられる.
著者
中村 満紀男 平田 勝政 岡田 英己子 二文字 理明 星野 常夫 荒川 智 宮崎 孝治 渡辺 勧持
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

19世紀末にイギリスで誕生した優生学は、瞬く間に欧米列強にも後進国にも受容される。それは、それぞれが優生学を必要とする国内情勢と国際環境に置かれており、民族自滅を回避し、人種(種族)改良をめざしていたからである。その具体策として、肯定(積極)的優生学よりは否定(肯定)的優生学が諸科学の関与のもとに展開される。その主たる対象としては「精神薄弱」「狂気」等が、方法としては断種が選択される。断種の当初の目的は、優生学を目的とする劣等種の減少・解消と収容施設の不足に対する補完を意図する優生断種にあったが、優生学の科学的根拠に対する疑問とともに、精神薄弱者のコミュニティ生活可能論および性行動受容論、子どもをもつことによる生活・養育の困難等の社会適応上の理由に基づく選択断種へと転換することになる。この過程において、精神薄弱者およびその行動を正常とみる範囲が拡大したことは確かである。このような優生学とその影響は、国と地方によって差異があったが、それは優生学に対する支持勢力の有無に基づいていた。宗教的要素と科学の関与の度合いが最大の要因となる。概ね優生学を歓迎したプロテスタント教会と社会学等の関与が強力な場合は、優生学運動は拡大し、断種法が可決されたが、ローマ・カトリック勢力が強大で、科学が消極的な場合は、優生学運動の影響は限定され、断種は促進されなかった。20世紀末に至ってても優生学は消失していない。生殖医療と先端医療技術の普及にともなって、障害発生予防を目的として、優生学的思考を孕んだ新優生学として、社会下層やマイノリティや特定のエスニシティに関連して発展しつつある。
著者
中村 満 繩田 隆生 松岡 憲二 小田原 良誠 長谷川 汪 田和 宗徳 池内 隆治 大田 信太郎 西牧 紀子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.177-184, 1983-11-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

うつ病は近年増加の一途をたどり, 鍼灸の臨床においても仮面うつ病の患者にしばしば遭遇する。これらの患者には症状の原因である抑うつ感情に対する治療が必要である。今回, 仮面うつ病スクリーニングテストを行い, うつ傾向の者を選び出し鍼治療を行った。方法: Actual Group として百会, 身柱, 心兪, 巨闕, 神門, 三陰交, Placebo Group として陶道, 風門, 水分, 下廉, 懸鐘を選び金鍼にて置鍼10分, 週3回の治療を行った。結果: Actual Group は4週後には71%が正常域に達し, 精神症状と身体症状ともに改善された。Placebo Group では4週後でも64%が抑うつ領域にあった。結論: 精神疾患によく用いられる経穴による鍼治療で精神症状と同時に身体症状の改善をもたらし, うつ状態の寛解か認められた。
著者
長岡 章平 中村 満行 瀬沼 昭子 関口 章子
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.389-397, 2005-12-31
被引用文献数
1 3

1998年8月から2003年12月までの期間中当科において初めてMTXを開始した活動性RA460例(男80例,女380例,平均年齢59.3歳)についてカルテベースにて検討した.MTX投与24週後のACR20改善率61.3%,50%改善率30.4%であり,投与48週までの累積投与継続率は0.567であった.観察期間中260例(56.5%),304回に有害事象を認めた.有害事象のため投与中止した症例は52例,11.3%,死亡例は10例,2.2%であった.1%以上の内訳は,肝機能異常31.7%,感染症6.1%,消化器症状5.0%,口内炎3.9%,血球減少3.5%,骨折3.5%,悪性腫瘍2.6%,間質性肺炎2.0%,脳あるいは心血管障害2.0%,頭痛1.7%,皮疹1.3%,脱毛1.1%であった.有害事象例は高齢者,高Stageに多かった.MTXの有用性が再評価されたが,慎重なモニタリングが大切であると思われた.<br>
著者
岡 典子 中村 満紀男 米田 宏樹 佐々木 順二
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、インクルーシブ教育についてその本質と課題を明らかにするため、インクルーシブ教育がもっとも盛んに議論されており、しかし同時に、インクルーシブ教育に関わる問題をもっとも深刻に抱えるアメリカ合衆国を対象として、インクルーシブ教育の理念的・制度的・方法論的出発点としての特殊学級の成立と展開の過程ならびにその教育的・社会的意味について検討した。特殊学級は、今日、インクルーシブ教育推進者によって、その対極に位置する特殊教育の象徴的存在として、特殊教育批判の重要な一角とみなされてきている。しかし、彼らの批判に反して、実は特殊学級には開設初期から既に、今日のインクルーシブ教育に連なる理念やそれを達成する方法あるいは実践が含まれていたのである。たとえば、インクルーシブ教育をめぐる現代の議論では、個別的ニーズへの着目と通常教育との一体化という理念のみが先行しているように思われるが、このような認識と議論は、特殊学級においても初期の段階から重要な課題として存在してきたし、障害種によって方法と程度は異なっていたが、その対応策も考案されてきた。アメリカの特殊学級は、すべての都市において、またすべての障害種について同一の様相を示していたわけではない。たとえば統合と分離(separation)あるいは隔離(segregation)をめぐる議論とその背景、特殊学級に対する障害当事者の見解、特殊学級の発展や挫折を生じさせた諸条件、教育内容や方法の開発・改善、スティグマなどは、いずれも時期によって、あるいは地域や障害種によって異なる実相をもつ。したがって、インクルーシブ推進者が主張するような特殊学級がすべて排除的・排他的であったという批判は正鵠を得たものではないし、むしろ特殊学級において何が達成され、何が実現できなかったのかを詳細に解明することで、インクルーシブ教育の実現に必要な課題と手段が具体化できるのである。
著者
服巻 孝 中村 満夫
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会論文集 (ISSN:02884771)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.337-342, 1992-08-05 (Released:2009-06-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Copper to copper lap joint was made by the resistance heating, applying pressure simultaneously. The copper plate was pre-soldered and the alloyed layer was pre-formed by using Pb-50Sn solder and then joint mechanism of press-soldered joints was analyzed.The reason of enhancing strength and heat resistance heated by applying voltage in press-soldered joints is summarized as follows.(1) Solder composition turns to Cu-Sn alloy composition.(2) Joint layer with higher melting point was formed in which Cu increases and Sn decreases.(3) In terms of the crystal structure, Cu3Sn, Cu6Sn5 and Cu(α) phases turns to Cu41Tn11 and Cu(α) phases which have high heat resistance.
著者
服巻 孝 中村 満夫
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会論文集 (ISSN:02884771)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.228-233, 1992-05-05 (Released:2009-06-12)
参考文献数
7

Copper and some other materials were joined using the resistance heating apparatus by which heating and pressure could be applied simultaneously. The materials used were presoldered and the alloyed layer was formed on each of them by using Pb-Sn solder.Tensile test at the room temperature revealed that fracture of all specimens originated in copper material.The layers consisted mainly of Cu-Sn, Cu-Zn-Sn, Cu-Ni-Sn, Cu-Fe-Ni-Sn when copper, brass, nickel, and Fe-42Ni alloys were jointed with copper respectively.
著者
鮫島 達夫 前田 岳 土井 永史 中村 満 一瀬 邦弘 米良 仁志 武山 静夫 小倉 美津雄 諏訪 浩 松浦 礼子
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.126-133, 2000

神経ブロック, 各種薬物療法などの効果なく, 反応性にうつ状態を呈した帯状疱疹後神経痛 (PHN) 10例に対し電気けいれん療法 (ECT) を施行し, その長期観察を行なった. 全例で持続性疼痛, 発作性疼痛, allodynia がみられ, 意欲低下, 食思不振など日常生活に支障をきたし, 抑うつ症状がみられた. 第1クールでこれらは改善したが, 7例に2~26カ月で疼痛, allodynia の再発がみられた. Allodynia の再発は, 知覚障害のある一定部位にみられ, 徐々に拡大した. しかし, 抑うつ症状の増悪はなかった. ECT第2クールは, 第1クール後5~26カ月後に施行し, より少ない回数で同様の効果を得ることができたことから, ECTの鎮痛効果に耐性を生じにくいことが示唆された. 以上より, ECT鎮痛効果は永続的ではないが, 1クール後数週間に1回施行する維持療法的ECT (continuation ECT: ECT-Cまたは maintenance ECT: ECT-M) を施行することで, 緩解維持できる可能性が示された. 対象に認めた抑うつ症状は疼痛の遷延化による2次的なものであり, 抑うつ症状の改善もECTの鎮痛効果による2次的産物であることが示唆された.<br>ECTは「痛み知覚」と「苦悩」の階層に働きかけるものであり,「侵害受容」,「痛み行動」には直接効果を示さないことから, その適応には痛みの多面的病態把握, すなわち生物-心理-社会的側面からの病態評価が必要となる.
著者
中村 満紀男 米田 宏樹
出版者
筑波大学教育研究科カウンセリング専攻リハビリテーションコース
雑誌
筑波大学リハビリテーション研究 (ISSN:09178058)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.37-47, 1999

精神薄弱者のコミュニテイ・ケアは、19世紀末の施設隔離期以降の一時期を除けば、元来むしろ常態であった現象である。20世紀初頭、隔離形態の最盛期に、コミュニティ内のコロニーが、仮退所制度と結合してニューヨーク州ローム施設長のC.バーンスタインにより ...
著者
中村 遊香 中村 満洲雄 加納 塁 渡辺 晋一 高橋 久 長谷川 篤彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医皮膚科臨床 (ISSN:13418017)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.47-51, 1997-12-20 (Released:2008-05-16)
参考文献数
2

食物性アレルギー, 接触性皮膚炎, 動物寄生性皮膚炎, 細菌性皮膚炎など原因が特定される疾患が除外されるそう痒を伴う皮膚炎の犬3例に対して, 十味敗毒湯エキス (ツムラ十味敗毒湯エキス顆粒 (医療用)®) を経口投与した。その結果, 3症例すべてで十味敗毒湯エキス投与2週間後にそう痒は概ね認められなくなり, 皮疹も改善傾向を示した。また, 3症例とも投与4週間後にはそう痒, 皮疹は消失したので, 投与を終了した。試験期間中に実施した身体一般検査, 血液学的検査及び血液化学検査において副作用と思われる所見は認められなかった。以上のことから, 十味敗毒湯エキス (ツムラ十味敗毒湯エキス顆粒(医療用)®) が有効な, そう痒を伴う皮膚炎の犬の症例があることが判明した。
著者
中津 望 石崎 裕 中村 満明 石川 貞裕 建部 清美
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.37-42, 2006

近年,システム開発に対する要件は,高機能化,期間の短縮化の傾向にある.このような背景において,プロジェクトを成功させるためには,進捗管理の強化が必須である.納期を守るには,早期に問題部位を特定し,早期に対策することが重要となる.問題部位の早期発見には,進捗の管理サイクルを短縮化し,鮮度の高い情報を取得できる必要がある.しかし,従来のように報告に基づく進捗管理では,進捗情報の収集に時間がかかるという問題がある.さらに,報告に基づいた進捗は,実態と乖離する危険性がある.この傾向は,プロジェクトの規模が大きく,開発拠点が分散されている場合,顕著になる.そこで,開発拠点が分散されているプロジェクトを対象に,WBSを採用したプロジェクト支援ツール"プロナビ"を用いた解決策を検討した.本論文では,成果物の実態に基づいて,進捗情報をタイムリーに把握するための施策について述べる.
著者
中村 満喜男
出版者
愛知工業大学
雑誌
愛知工業大学研究報告. B, 専門関係論文集 (ISSN:03870812)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.335-343, 1978-03-31

常時微動を測定・解析することは地盤・構造物等の動特性を明らかにし,強震時における災害の可能性を把握する上で非常に有効である。本論文では測定された常時微動の波動の性質を振巾に関する確率密度分布,周期に関するフーリエ振巾スペクトルとゼロクロッシング法による周期一頻度スペクトルとの比較検討を行い波動解析に関する若干の考察を行ったものである。測定はナゴヤ球場で行われたものである。
著者
中村 満紀男
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-17, 1998-03 (Released:2013-12-18)

世紀転換期に、婚姻制限よりも有効な要保護者の発生防止策として登場するのが、去勢と断種(精管切除術)である。まず去勢が、性犯罪・累犯に対する懲罰と抑止、精神薄弱者等の生殖防止と性的抑制を目的として全国的に医師により提起され、少数ながら実施される。しかし、提唱者以外賛成はなかった。H.シャープは、精管切除術を生殖防止を目的として初めて非行者に実施した。去勢論者と類似したその目的は、コミュニティの保護および社会改良、性行動の抑制等の心身の改善、コミュニティでの結婚と家庭の維持であった。精管切除術は、第二次性徴の喪失がなく、簡便で安全であるゆえに、支持層は医師や矯正事業中心から社会事業へ、男性のみから男女両性へ、全国的に拡大し、施行もされる。その拡大は、精管切除術の対象を精神薄弱者とし、精神薄弱者の種族と国家に対する脅威説の支持に対応していた。20世紀初頭のアメリカでは精管切除術に対しては、法手続き論と感情論以外に強い反対論はなかった。
著者
中村 満紀男
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.49-65, 2001-03

障害者の教育と生活は、諸科学の知見により規定される側面がある。歴史上、諸科学によりその生活と教育が最も翻弄されたのは精神薄弱の範疇に位置づけられた人々であった。本研究では、1910年代のアメリカ合衆国における優生学運動を発展させた諸科学のうち、自然科学的知見に依拠した新興諸科学であり、精神薄弱者の生活の在り方に関係した領域である社会学・社会事業、心理学、精神医学が提起した社会的不適論およびその典型としての精神薄弱の範疇化と優生学との関係について、その理由と動機、精神薄弱と対極にあった理想的人間像、社会的認識を中心に検討した。1910年代のアメリカの精神薄弱学説は基本的には家系説と社会的脅威論から構成されたが、生活実態としてはそれに反する事実が明示され始める時期であった。新興諸科学は、20世紀初頭には精神薄弱問題の社会的重要性を高めることに貢献したが、同時に、相互には共存・拮抗関係をもちつつ、科学としての自律性の確立と社会的認知を緊要な課題としてもいた。それゆえ、新しい技術を開発し、それを実地化して、各領域の社会的存在意義をアピールした。また、諸科学は、アメリカの国家としての国際的競争という社会的現実を意識して、それに勝利するためのアメリカ民主制社会の理想的市民像とそれを阻害する対極として精神薄弱を設定したのである。かくして精神薄弱は発生を防止されるべき存在となった。この時期に展開しはじめた新しい人間観や専門技術は普遍化されず、社会的効用の違いによって二元的に利用され、精神薄弱はその適用から除外されることになった。
著者
青木 昭子 瀬沼 昭子 中村 満行 泉二 恭輔 服部 英行 長岡 章平
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.128-131, 1998-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

経口抗アレルギー薬オキサトミドを内服中に肝障害を発症した57歳男性を報告する. 内服35日目に嘔気と黄疸が出現し, 入院となった. 血液生化学で胆汁うっ滞型肝障害を認めた(総ビリルビン7.44mg/dl, 直接ビリルビン6.71mg/dl, GOT163, GPT232, ALP1502). 腹部エコー, CTにて肝腫大を認めるも肝内胆管の拡張は認められなかった. 各種肝炎ウイルスマーカー(HB抗体, HCV抗体, IgM-HA抗体, HB抗原)は陰性であった. 白血球増多, 好酸球増多がみとめられたことから, オキサトミドによる薬物性肝障害を疑った. オキサトミドはケミカルメディエーターの放出と効果を抑制し, 抗ヒスタミン作用を有する抗アレルギー薬で, 各種アレルギー疾患において安全性と効果が証明されている.しかしその投与期間中には肝障害の可能性を考慮する必要があると考え報告した.
著者
中村 満紀男
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-14, 2004-03

本論文は、アメリカ合衆国におけるインクルージョンの成立と展開を支えた社会的文脈を解明する研究の一環として、M.C.ウィル(Will,Madeleine C.1945-現在)の特殊教育に関する評価とその鍵となる概念を究明することを目的とする。ウィルは、1983年、アメリカ合衆国教育省特殊教育・リハビリテーション局(OSERS)担当の長官補佐に就任し、後に通常教育主導(REI)の主導者と評価されるようになる。ウィルの構想では、権利擁護や差別解消からの発想・立論と、教育改革に対する政策当事者としての現実的必要性がモザイク的に構成されていた。彼女のREI提唱は、前者の実現という目標と後者の実効的な方法とを両立させるものとして構想された。しかし彼女が直面した現実的課題は、学習困難問題にせよ、古典的かつ喫緊性ある移行問題にせよ、社会的・経済的な複合性をもっていた。また、これらの問題発生の源泉も単純ではなかった。