著者
前杢 英明 越後 智雄 宍倉 正展 宍倉 正展 行谷 佑一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,海溝型巨大地震の発生モデルに関して,陸上の地形・地質学的データから新たな検討を加えることを目的としたものである。紀伊半島南部を中心に、隆起地形や津波漂礫の分布調査を行い、津波のモデリングや^<14>C年代測定などの分析を通して、南海トラフ・メガスラストの各セグメント間の連動型地震ではなく、海溝陸側斜面に発達する海底活断層と海溝型巨大地震との連動型が発生した可能性を指摘することができた。
著者
前杢 英明
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.231-240, 1988-10-28 (Released:2017-04-20)

Around Cape Ashizuri, evidences for former sea levels are recognized as notch, wave cut bench and calcareous remains of organisms living in tidal zone. This paper aims to clalify coseismic crustal movement during Holocene based on geomorphological and biological sea-level indicators around Cape Ashizuri. Based on vertical distribution of former sea level indicators, four former sea levels are distinguished at Cape Ashizuri, i.e. I:4.7m, II:3.5m, III:2.0m, IV:unknown in height. These former sea levels are aged as I:around 4800 y.B.P., II:at least 2730 to 2430 y.B.P., III:around 1770 y.B.P., IV:unknown by means of radiocarbon dating. The earthquakes having caused these abrupt drops of former sea levels are named event 1 to event 4 in counter chronological order. Event 2 to event 4 occurred at 1770 to O y.B.P. , 2430 to 1770 y.B.P., 4800 to 2730 y.B.P. respectively. Judging from radiocarbon ages and distribution of amount of uplift, earthquakes (event 4 and event 3) in Ashizuri region could be correlated to earthquakes (event 6 and event 4) in Muroto region (Maemoku, 1988) respectively. These earthquakes are assumed not to be interplate, but to be intraplate ones.
著者
前杢 英明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.Supplement, pp.S17-S26, 2006 (Released:2007-06-06)
参考文献数
45
被引用文献数
2 4

高知から室戸岬にかけての土佐湾北東部の海岸に沿って,標高数百m以下に海成段丘がよく発達している.特に室戸岬に近い半島南部では,段丘面の幅が広くなり,発達高度がより高いことから,切り立った海食崖と平坦な段丘面のコントラストが印象的であり,海成段丘地形の模式地として地理や地学の教科書等に頻繁に取り上げられてきた.本コースの見どころは,室戸沖で発生する地震性地殻変動と海成段丘形成史とのかかわりについて,これまでの研究成果をふまえて,傾動隆起などを実際に観察できることにある.さらに,ここ数千年間の地震隆起様式について,地形・地質学的証拠と測地・地球物理学的な見解に相違点があることを,現地を見ながら確認できる.
著者
大津 忠彦 古瀬 清秀 山内 和也 岡野 智彦 前杢 英明 千代延 恵正 千代延 惠正
出版者
(財)中近東文化センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1999〜2000年度:イランにおける外国調査隊の考古学調査活動に関する対外情報の不明朗さから、当初計画したイラン西北部ギーラーン州との共同調査は、イラン文化遺産庁(Iranian Cultural Heritage Organization,以下ICHO)より不可とされた(1999年)。2000年度末にやっと、共同調査実施のためにはその前提として、ICHOと中近東文化センターとの間にイラン遺跡調査に関する「協定書(合意書)」の締結がなされなければならない旨が判明。この間、遺跡への調査目的での立ち入りは禁止となったので、周辺域概観踏査と博物館収蔵品調査に重点を置いた結果、デイラマーン地域に見られるイラン青銅器〜鉄器時代の指標的土器が東方はるかのゴルガーンやダームガーンにおいても認められること、ギーラーン州域ではその存在が疑問視されてきた遺丘がキャルーラズ渓谷内に一基(ジャラリイェ・テペ)あること、ターレシュ地域の石灰岩地帯には200余基の洞窟が存在し、石器、人骨資料採集伝聞があること等々を確認。2001年度:6月の「協定書(合意書)」締結をうけて発足した「日本・イラン合同調査団」は、セフィードルード川西岸域における踏査によって26遺跡をデータ化。それらの帰属年代はイラン鉄器時代からイスラーム時代とみられるが、採集資料はすべて表採品であるので時期の細分は比較資料皆無の現状では困難。この意味でも先年確認したジャラリイェ・テペの発掘が有用と判断できる。地勢学的観察によれば、遺跡は概して水の得易い、地滑りによって形成された山の緩斜面や侵食平坦面の縁に分布し、遺跡数の大半を占める古代およびイスラーム期の墓域は、基本的に同じ場所に営まれたらしい。これら墓域に近接の平坦面あるいは緩斜面が、当該地において未確認の古代における生活空間と想定できる。
著者
山根 雅子 横山 祐典 三浦 英樹 前杢 英明 岩崎 正吾 松崎 浩之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.329, 2008

近年開発された表面照射年代測定法は、二次宇宙線の作用により岩石の石英中に生成される宇宙線照射生成核種 (TCN) の濃度から、地表面が宇宙線に被爆した期間を直接求める手法である。この手法によって、これまで不確定性が高かった、南極氷床の最終退氷の時期が明らかになりつつある。発表者の研究グループは、東南極リュツォ・ホルム湾の露岩域から採取された岩石試料の石英に含まれる<SUP>10</SUP>Beと<SUP>26</SUP>Alの定量を行ない、この地域における氷床変動の研究を進めている。東南極のマック・ロバートソンランド、西南極のマリー・バードランド、南極半島においても、この手法を用いた最終退氷の時期に関する研究が行われている。TCNを用いたこれらの研究結果から、(1) 南極のどの地域も最終退氷の時期は完新世であること、(2) 東南極氷床は西南極氷床や南極半島氷床より気温の変化など、氷期の終焉によりもたらされた環境変化に対して、相対的に安定していたことが示唆された。
著者
前杢 英明
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.747-769, 1988
被引用文献数
5

プレート境界に沿って発生する巨大地震に伴う隆起地域として知られる室戸半島において,石灰質遺骸,海成段丘,離水波食地形を指標として,完新世における海水準の復元を試みた.これらの旧海水準指標は,垂直的に数10cm~数mの間隔を持った間欠的な分布を示し,I~VIの6つの旧海水準(レベル)が識別された.各レベルに対応する旧海水準指標は,<sup>14</sup>C年代から,それぞれ1:6,000~5,000y.B.P,,II:4,000~2,700y.B.P., III:2,600~2,200y. B. P., IV:2,000~1,100y.B.P.,V:1,000~800y.B.P., IV:700~200yB.P.に形成されたことが判った.認められた海水準の不連続的変化から,間欠的な地震隆起 (event 6~event 1)の存在を推定し,各eventについて隆起量の分布を復元したところ,内陸活断層の変位と重合した複雑なパターンを示す場合があることが明らかになった.本地域では,室戸岬における1回の地震による残留隆起量が0.2~0.3m程度の南海道地震(1946年,M=8.1)タイプの地震隆起が累積するような地殻変動が推定されてきたが,完新世においてはそのような地震隆起の累積はみられず,地震1回の残留隆起量がより大きな(最大数m)地震変位の累積が認められた.
著者
小川 光明 岡村 真 島崎 邦彦 中田 高 千田 昇 中村 俊夫 宮武 隆 前杢 英明 堤 浩之
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.75-97, 1992-12-15
被引用文献数
5

愛媛県伊予郡双海町沖において, 高分解能ソノプローブを用いた詳細な音波探査を実施し, 中央構造線活断層系の正確な分布と形態を記載した。さらに, 断層を挟んだ地点からピストンコア試料を採取し, それらを対比することにより, 断層活動の時期を解読した。この海域に分布する中央構造線は, 左雁行に配列する計4本の断層から構成されており, そのうちの1本には完新世における明瞭な右ずれ運動が認められる。また, この断層は近接する他の断層と同時に活動することにより, 細長い地溝を形成する。その活動時期は, 石灰質化石の^<14>C年代測定から, 約6200年前と約4000年前であると推定された。4000年前以降にも活動があったと思われるが, 残念ながら堆積速度の急減のため, 断層活動が保存されていなかった。本地域での活動性に, 陸上のトレンチ調査から解読された活動性を加味すると, 四国における中央構造線は, 少なくとも3つ以上の領域に分かれ, それぞれが約2000年の間隔で活動を繰り返していると考えられる。
著者
岡村 真 島崎 邦彦 中田 高 千田 昇 宮武 隆 前杢 英明 堤 浩之 中村 俊夫 山口 智香 小川 光明
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.65-74, 1992-12-15
被引用文献数
6

別府湾北西部の海底には3 kmから5 kmの長さを持つ5本の正断層が分布する。この分布の様子は, 別府-島原地溝にみられる陸上の活断層分布と類似しているが, 連続する部分は認められない。今回, 長さ2 km以上の断層セグメントを命名した。活動度はいずれもB級 (1-0.1 mm/y) である。地溝状の, 相対する南落ちと北落ちの正断層とは, 東北東-西南西の線により二分される。伊予灘の中央構造線断層系においても地溝状の形態が認められ, 別府湾まで連続するかどうか興味ある問題である。断層の活動度は, 年代が解っている反射層の変位量から求めることができる。しかし, 個々の地震の発生時や変位量を求めるためには, 断層両側のコア試料の対比が必要となる。我々は当初, 豊岡沖断層の両側で海底ポーリングを行い, 海底下20 mまでの試料をえた。しかし, ポーリングによる海底堆積物採取は, 時間と費用がかさみ, 多くの断層に対して, また継続的に行うことがむずかしい。このため以後は, ピストンコアリングにより堆積物の採取を行っている。現在, 海底下20 m以上の連続試料を一日で数本得ることができるようになった。亀川沖西断層では, 過去6000年間に3回の地震発生が認められ, その変位量と時間間隔との間には規則性がある。断層変位の分布は対称で, 断層の両端の近傍で最大となる。
著者
前杢 英明 井龍 康文
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は,沿岸の岩礁に付着する完新世石灰岩の形成過程を使って,当該期間にプレート境界で発生してきた地震履歴を切れ目なく解明することを目的としたものであった.13年度は,室戸岬周辺の45地点で採取した石灰岩より,94枚の岩石薄片を作製した.薄片観察の結果,石灰岩の枠組み(フレーム)の形成者として最も多くみられるのはヤッコカンザシとサンゴモで,以下,被覆性底生有孔虫,造礁サンゴ,フジツボ,イワノカワ科の藻類(石灰藻),カキがこの順で続くことが確認された.14年度は,14C年代がほぼ同時代を示す,もしくは同時代と推定される隆起石灰岩ごとに,それらを構成している付着生物の量をポイントカウンティングで決定し,その結果を従来の現生生物の帯状分布データと比較した.その結果,石灰岩を6つの岩型に区分した.それらは,サンゴとサンゴモが卓越する石灰岩(タイプ1),サンゴモが卓越する石灰岩(タイプII),サンゴモとカンザシゴカイとフジツボが卓越する石灰岩(タイプIII),サンゴモとカンザシゴカイが卓越する石灰岩(タイプIV),被覆性コケムシと被覆性底生有孔虫が卓越する石灰岩(タイプV),軟体動物(カキ)が卓越する石灰岩(タイプVI)である.また,エボシ岩付近の岩型の垂直方向の分布は,下から順に,タイプIの石灰岩,タイプIIの石灰岩,タイプIII,もしくはタイプIVの石灰岩の順で分布していることが明らかになった.15年度は石灰岩の内部構造に上記の帯状分布(6つの岩型)を適用し,相対的海水準変動を復元する作業を行った.その結果,コアを形成する石灰岩の中には6つの岩型のうち,タイプIとタイプIIを交互に繰り返すもの,またタイプIとタイプIIIまたはタイプIVを交互に繰り返すものなどがあることがわかった.