著者
山本 琢俟 河村 茂雄 上淵 寿
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.52-63, 2021-03-30 (Released:2021-05-01)
参考文献数
42
被引用文献数
7 6

本研究では,学級の社会的目標構造と子どもの自律的な向社会的行動や自律的ではない向社会的行動との関連について,小学生と中学生の学校段階差を検討した。なお,向社会的行動の対象をクラスメイトに限定し,検討を行った。多母集団同時分析の結果,小中学生共に,学級での思いやりや互恵性の強調された目標を認知することと,自律的な向社会的行動との関連が確認された。一方で,学級での規律や秩序の強調された目標を認知することは自律的ではない向社会的行動と関連していることが確認された。このことから,向社会的行動の生起には学級での思いやりを強調することと規律を強調することが共に有効であろうが,特に学級での思いやりを強調する指導によって子どもの自律的な向社会的行動を予測し得ることが示唆された。また,横断的検討ではあるものの,学級の向社会的目標構造と子どもの自律的な向社会的行動との関連に学校段階差が確認されたことから,学級での向社会的目標を強調する教師の指導が自律性支援としての性質を持つ可能性を指摘した。最後に,本研究の限界と今後の課題についてまとめた。
著者
山本 琢俟 上淵 寿
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.86-96, 2021-09-15 (Released:2021-09-15)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究の目的は,関係性アプローチに則り対象ごとの向社会的行動と関連する向社会的動機づけの差異を多面的に検討することである。動機づけは,自己決定理論の観点から自律的な向社会的動機づけと統制的な向社会的動機づけを扱った。インターネットを通じて小学5年生から中学3年生の子ども1,998名に自記式調査を実施した。変数中心的なアプローチと人間志向的なアプローチによって,対象別の向社会的行動と向社会的動機づけとの関連が検討された。その結果,向社会的行動はその対象によらず自律的な向社会的動機づけと関連していること,見知らぬ人に対する向社会的行動については自律的な向社会的動機づけと統制的な向社会的動機づけが共に関連していることが示された。本研究の結果は,向社会的行動の対象ごとにその動機づけが異なることを実証的に示したものであり,向社会的行動の対象による生起頻度の違いが向社会的動機づけに起因することを示唆するものである。
著者
小堀 友子 上淵 寿
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.359-370, 2001-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究では, 情動のモニタリング操作による学習への影響を明らかにすることを目的とした。情動制御過程から「情動制御のスムーズさ」と「情動制御レパートリー」の2つの側面をとりあげ, 学習に集中できない子どもを対象に介入を行った。その結果, モニタリング操作を導入することで, 情動制御のスムーズさおよび情動制御レパートリー数に変化が見られた。また, 操作導入後の方が喚起された情動に伴う学習行動の予測やそれに対する評価が正確になった。最後に, 残された課題について考察を行った。
著者
山本 琢俟 上淵 寿
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.12-22, 2021-04-09 (Released:2021-04-09)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本研究では,向社会的行動の動機づけ(向社会的動機づけ)について中学生を対象とした尺度の開発を目的としている。従来,向社会的行動はその実行によりポジティブな結果をもたらすものとして注目されているが,その功名は動機づけによって支えられている部分が大きいと推察される。自己決定理論に依拠し,向社会的動機づけを自律性の観点から捉えるべく,計1,017名の中学生に自記式調査を実施した。先行研究を参考に作成した項目群について,因子分析を行った結果,日本の中学生が認知する向社会的動機づけとして「同一化的調整」と「統制的調整」の2因子が抽出された。このことから,中学生の向社会的動機づけにおいては外的調整と取り入れ的調整が未分化であり,統制的動機づけという1つのまとまりとして認知されていることが示唆された。その後,尺度の信頼性と妥当性を確認すると共に,向社会的動機づけの性差について検討した。
著者
上淵 寿 松村 大希 敦澤 彩香
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Suppl., pp.29-32, 2017-01-15 (Released:2017-03-06)
参考文献数
11

本研究では, 友人との学習を「意図的な協同学習」,「他者意識」,「雑談」に分類した質問紙を作成し, 動機づけ調整及び学習のパフォーマンスとの因果関係を共分散構造分析によって検討した. その結果, 意図的な協同学習は自律的調整方略を介して学習の持続性に正の影響を与え, 自律的調整方略を介さない場合は学習の持続性に負の影響を与えることが示された. また, 雑談と他者意識は成績重視方略を介して学習の持続性に負の影響を与えることが示された. ゆえに,友人との学習を行った後も動機づけを高めるための方略を使用することが学習の持続性につながり,動機づけを高めるための友人との学習は,必ずしも学習の持続性には直接はつながらないことが示された.
著者
上淵 寿 松村 大希 敦澤 彩香
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.29-32, 2017

<p> 本研究では, 友人との学習を「意図的な協同学習」,「他者意識」,「雑談」に分類した質問紙を作成し, 動機づけ調整及び学習のパフォーマンスとの因果関係を共分散構造分析によって検討した. その結果, 意図的な協同学習は自律的調整方略を介して学習の持続性に正の影響を与え, 自律的調整方略を介さない場合は学習の持続性に負の影響を与えることが示された. また, 雑談と他者意識は成績重視方略を介して学習の持続性に負の影響を与えることが示された. ゆえに,友人との学習を行った後も動機づけを高めるための方略を使用することが学習の持続性につながり,動機づけを高めるための友人との学習は,必ずしも学習の持続性には直接はつながらないことが示された. </p>
著者
藤井 勉 上淵 寿 山田 琴乃 斎藤 将大 伊藤 恵里子 利根川 明子 上淵 真理江
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.132-141, 2015
被引用文献数
1

The purposes of the present study were (a) to use both a relational-anxiety Go/No-Go Association Task (GNAT) and an avoidance-of-intimacy GNAT in order to assess an implicit Internal Working Model (IWM) of attachment; (b) to verify the effects of both measured implicit relational anxiety and implicit avoidance of intimacy on information processing. The implicit IWM measured by GNAT differed from the explicit IWM measured by questionnaires in terms of the effects on information processing. In particular, in subliminal priming tasks involving with others, implicit avoidance of intimacy predicted accelerated response times with negative stimulus words about attachment. Moreover, after subliminally priming stimulus words about self, implicit relational anxiety predicted delayed response times with negative stimulus words about attachment.
著者
藤井 勉 上淵 寿
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.263-274, 2010-09
被引用文献数
1 10

本研究は,達成目標理論における暗黙の知能観研究において,顕在的測度(質問紙)と,潜在的測度(Implicit Association Test:IAT)を使用し,顕在・潜在の両側面から,参加者の暗黙の知能観を査定し,課題遂行場面で生じる感情や行動パターンとの関連を検証した。実験1では,IATの再検査信頼性を確認した。同時に,IATは顕在的な測度とは関連がみられないことを示した。実験2では,自己報告の他に,課題遂行中の参加者の表情を他者評定し査定した状態不安と,質問紙およびIATで査定した顕在・潜在的な知能観との関連を検討した。結果は,先行研究からの仮説どおり,顕在的測度と潜在的測度は,関連する対象が異なった。顕在的知能観は,自己評定式の尺度の回答に関連していた一方,潜在的知能観は,他者評定による自発的行動に関連していた。従来の研究で扱われてきた,顕在的測度で査定される意識的な領域のみならず,潜在的測度で査定される無意識的な領域への,更なる研究が必要であることと,潜在的な知能観を意識化するアプローチを用いた介入方法も検討する価値があることを示唆した。