著者
下原 美保
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学編 = Bulletin of the Faculty of Education, Kagoshima University. Cultural and social science (ISSN:03896684)
巻号頁・発行日
no.70, pp.13-40, 2019-03-11

本稿は『新増書目』(松浦史料博物館蔵)における住吉派や板谷派の絵画鑑定及び模写に関する記事を活字化したものである。本書は平戸藩第九代藩主松浦静山が創設した楽歳堂所蔵の文献目録であるが、絵画に関しても項目が立てられ、その伝来や画題の内容、制作年代や筆者、画風についてのコメントが静山自身の言葉によって語られている。その際、静山が助言を求め、手控え用の模写を依頼したのが幕府の御用絵師である住吉派や板谷派である。また、本書から松平定信を中心とする知的ネットワークや考証学的学問態度の広がりを知ることができる。本書を活字化し、公刊することで、近世御用絵師における絵画鑑定や模写、考証学的学問態度の研究に寄与することができると考えられる。
著者
丹羽 謙治 下原 美保 金井 静香 亀井 森 佐藤 宏之 深瀬 浩三 高津 孝 日隈 正守 橋口 晋作
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の主要な課題である「自然災害等に備えた、鹿児島県の資料防災ネットワークの立ち上げ」に向けての基礎づくりを行った。鹿児島県、宮崎県の一部自治体の資料保存状況を把握するとともに、鹿児島市の入来院家資料、大武文庫、谷口家資料、姶良市の森山家資料などのデジタルカメラによる資料保存・目録整備、資料防災に関する研究会・講演会の開催、ホームページの立ち上げによる広報活動を実施した。
著者
下原 美保
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学編 (ISSN:03896684)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.25-37, 2006

本論では、江戸時代初期における王朝文化復興と住吉派興隆との関係について、後水尾院(一五九六~一六八〇)と住吉如慶(一五九九~一六七〇)を中心に考察を加えたものである。王朝文化復興の気運が盛り上がったこの時代に、如慶は後水尾院の勅命を受けて 「年中行事絵巻」 の模写を手掛けている。これは院が目指した公儀の復興の一環と考えられる。また、如慶は院の勅命によって 「聖徳太子絵伝」や 「多武峰縁起絵巻」 を制作し、東福門院の個人的な画事も手掛けている。これらの功が認められ、如慶は住吉派を設立することとなる。中世における絵の名士住吉慶恩の後継者として院が発案したものである。さらに、如慶・具慶父子は、天台座主の尭然法親王及び尭恕法親王に剃髪され、法橋の位を受けているが、二人の座主も院の弟であり皇子であった。以上のことを考慮すると、住吉派興隆には当時の王朝文化復興の気運と後水尾院周辺の皇族たちが大きく関わっていたということができる。
著者
下原 美保 長友 希巳 シモハラ ミホ ナガトモ キミ SHIMOHARA Miho NAGATOMO Kimi
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学編 (ISSN:03896684)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.65-76, 2014

科学的手法を用いた絵巻における画像のパターン分析は、一部の研究を除き、従来ほとんど着手されてこなかった。本研究は、ハフ変換を用いることで、絵巻に描かれた建築物の斜角を検出し、その傾向をパターン分析したものである。対象とした作品は、制作年代が巻によって異なる「石山寺縁起絵巻」、鎌倉時代に同一工房で制作された「春日権現験記絵巻」、江戸時代初期に制作された「元三大師縁起絵巻」等である。「石山寺縁起絵巻」では、時代の違いと建築物における斜角の傾向がほぼ一致していること、「春日権現験記絵巻」では、前半の斜角はほぼ同じであるが、後半は差異が見られること、「元三大師縁起絵巻」では全巻を通して斜角にばらつきが見られることを指摘した。これらは時代や工房の違い、分業の在り方、絵巻における古典編集を反映していると推測される。今後は、従来の文献や様式研究等と照合することで、その有用性を検証していきたい。
著者
下原 美保 髙岸 輝 江村 知子 佐藤 公則 山崎 剛
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、科学的手法によって住吉派作品における古典編集の在り方を解明することである。その第一ステップとして、ハフ変換による画像のパターン分析方法を確立し、絵巻に登場する建築物の斜角を検出した。対象とした作品は「石山寺縁起絵巻」(鎌倉時代・室町時代・江戸時代)、「春日権現験記絵」(高階隆兼 鎌倉時代)、「元三大師縁起絵巻」(住吉具慶 江戸時代)等である。三者を比較した結果、「元三大師縁起絵巻」は、前二者より斜角に大きな差が見られた。同絵巻が古典作品の様々な場面を引用し、編集して制作されたことに起因すると考えられる。
著者
茂木 一司 宮田 義郎 苅宿 俊文 上田 信行 福本 謹一 阿部 寿文 熊谷 保宏 大泉 義一 稲庭 佐和子 郡司 明子 下原 美保 刑部 育子
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、日本伝統文化, 身体とメディアなどを活用したアートワークショップ(型学習)が現代の多元的共生社会に実現に有効なことが実証できた。美術、音楽、ダンス、演劇など(広義の)アートワークショップ(型学習)で起こるコミュニケーションやコラボレーションは単なる方法(手法)ではなく、自己表現と他者理解を促し、ヒトの学び(学習)を根源的に能動的に変化させ、創造的思考力(Creative thinking)を育てる。
著者
茂木 一司 福本 謹一 上田 信行 阿部 寿文 下原 美保 宮田 義郎 苅宿 俊文
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

異文化理解・総合・マルチメディアパッケージ教材の開発・実践・評価に関する2年間の研究は、以下のように整理できる。1.「子どもによる子どものための芸術・文化発信プロジェクト」の教材開発として、「お茶箱プロジェクト」(インドネシア共和国・バリ・ウブド小学5年生対象、イタリア共和国・フィレンツェ市小学1年生対象、越後妻有アートトリエンナーレ)と「なりきりえまきプロジェクト」(同・フィレンツェ大学語学センター学生対象、同トリエンナーレ)の2つの異文化理解ワークショップを開発し、各地で実践し、ワークショップという共同的/協働的な学びの有効性を実証し、確認できた。2.「お茶箱プロジェクト」では、日本の茶道の仕組み(しつらい)を使って、ものの来歴を「語る」ということを通して、ことば(語り合う・表現し合う)と学習環境のデザインの関係を明らかにした。「なりきりえまきプロジェクト」では、日本美術独特の絵巻を題材にして、絵画における時間表現(現代のアニメに通じる)を登場人物に変身する(なりきる)という身体化と重ねて行うワークショップを開発した。これらは、異文化理解教育の方法に有効であった。3.研究成果の社会還元の方法として、展覧会に注目し、上記の内容を「越後妻有アートトリエンナーレ2006」(新潟県十日町市)で「学びの繭」展として発表した。会場での空間及び映像展示は非常に美しく心地よいという参観者の評価を得た。同時に、会場当番にあたった制作スタッフ・学生スタッフと来場者との多様なコミュニケーションによって、研究の経過の公開と共有の場のみならず、さらなる共同の学びの場となるという「(学びの)入れ子構造」がつくられることがわかった。
著者
茂木 一司 福本 謹一 上田 信行 苅宿 俊文 刑部 育子 阿部 寿文 下原 美保 佐藤 優香 宮田 義郎 熊倉 敬聡
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

異文化理解・多文化共生の可能性を探る身体・メディア活用型プロジェクトの主要な成果は、(1)日本文化(美術)、身体を基礎にしたアート(学習)、障害児(者)のアート(学習)、プログラミング(cricket, scratch)による創造学習、などのワークショップの開発・実践・評価、(2)カフェ的な空間=オールナタティブスペースの創出と学びの検討、(3)ワークショップにおけるファシリテータ養成プログラムの開発とNPOの教育力の活用、の3点である。(1)では、異文化や多文化を単なる外国文化との交流だけでなく、障害のあるなしも含めた広い概念で捉え直し、日本文化(美術)を基盤にした(ワークショップ型学習には不可欠な)身体性を中心に据えたワークショップ(型学習)の開発・実践・評価を行い、それが表現性や協同性という特色によって、学びを創造的にし、(学校教育を含めた)現代の閉塞的な教育状況において非常に有効であることが実証できた。(2)(3)では、新しい学びの空間(学習環境のデザイン)をカフェという「ゆるやかにつどい語らう場」での学びがやはり現代教育にとって有効であることやワークショップという学びを支えるファシリテータに必要な資質の検討や育成のプログラムを作成した。