- 著者
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両角 良子
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.4, pp.101-115, 2009-03-12
子育て世帯が,政府による子育て支援を目的とした所得保障を受ける場合には,いったん,他の非労働所得とプールした上で非労働所得の配分を考える。そのため,子育て世帯が所得保障で得た非労働所得を子ども向けの財の消費に使うことは,標準的なミクロ経済学の需要理論では必ずしもいえない。日本政府は1999年に子育て世帯に対して,居住地域にある小売店で買い物をすることができる地域振興券を交付した。地域振興券の交付の目的の一つは,若い親の層の子育てを金銭的に支援することであった。そこで本研究では,地域振興券政策に着目し,子育て支援が目的である旨を政策にラベル付けすることで,政府による所得保障が子ども向けの財の消費に結びつくか,すなわち、ラベリング効果(labeling effect)が存在するかを検証した。その際,子ども向けの財として,子どもの被服消費に焦点を当て,『家計調査』(総務省)の個票データを使って検証した。分析の結果,地域振興券の利用が認められている期間に,世帯の被服消費額に占める子どもの被服消費額の割合が一時的に上昇していることがわかった。この結果は、ラベリング効果があったことを示している。