著者
福島 智
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.9-17, 1994-06-30 (Released:2017-07-28)

盲ろう児の言語発達における基本的諸問題について、先行研究の整理を通して検討した。盲ろう児の発達遅滞は、第1にあらゆる外部情報の不足、第2に言語的経験の不足、第3に知的・情緒的発達の遅滞という三つの層からなる構造を持っていると思われる。そして、これら三つの層の遅滞を克服するためには、とりわけ、第2の層に関わる困難に取り組むことが重要だと考える。また、触覚を用いた探索行動と、「身振り語」の使用は、初期の言語発達を促進する上で、本質的な要因だと考える。次に、盲ろう児の言語発達における「読み」の教育の意義と困難さについて述べたが、これまでのこの分野の研究はほとんど行われていない。盲ろう児に対する「読み」の教育は想像力の発達と密接な関連を持っている。そして、「読み」の教育は、次の諸点を考慮しつつ構想されるべきだと考える。それらは、1.「読み」の理解を助けるための手段、2.「読み」の素材、3.素材と盲ろう児の経験との関係、4.盲ろう児の経験の質、についてである。
著者
松井 彰彦 金子 能宏 川越 敏司 関口 洋平 田中 恵美子 西倉 実季 福島 智 森 壮也 両角 良子 山下 麻衣 澤田 康幸 遠山 真世 井伊 雅子 石川 竜一郎 岡崎 哲二 澤田 康幸 清水 崇 遠山 真世 長江 亮 星加 良司 山下 麻衣 臼井 久実子 加納 和子 川島 聡 河村 真千子 倉本 智明 栗原 房江 坂原 樹麗 佐藤 崇 瀬山 紀子 長瀬 修 山森 哲雄
出版者
東京大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2007

いわゆる「障害者」のみならず、長期疾病者や顔にあざのあるユニークフェイス等、制度と制度の狭間に落ち込んでいる人々にも焦点を当て、彼らが直面する社会的障害の共通項を探った。ゲーム理論や障害学を用いた理論研究に加え、障害者団体や地方自治体を通じた障害当事者およびその家族への調査、企業を対象とした調査、長期疾病者を対象とした調査、ネパールやフィリピンでの海外調査を展開し、報告書にまとめた。
著者
福島 智 坊農 真弓
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.550-554, 2015-05-15

東京大学教授福島智氏は9歳で失明し,18歳で失聴,全盲ろうとなった.その後ご尊母が両手6本の指を用いる新しいコミュニケーション手段「指点字」を考案し,福島氏のコミュニケーションは復活と再生を果たす(福島智『盲ろう者として生きて』,2011年刊行より).本記事では当事者の視点から情報学に対する要望が語られ,盲ろう者がみる世界が彼自身の視点から描かれる.本記事は指点字通訳者を介して,坊農が福島氏にインタビューするという形で綴られる.
著者
羽根 拓也 福島 智
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.7, no.26, pp.112-117, 2008-12-02

9歳で視覚を、18歳で聴覚を失い、隣にいる家族とさえ意思を伝え合うことができなくなった。絶望の淵に沈んだが、母親が「指点字」という、指を点字タイプライターのキーに見立ててコミュニケーションを取る方法を考案したことが転機となった。 再び意思疎通が可能になり、強く生きようと決めた。盲ろう者として初めて大学に進み、障害者教育を学んだ。大学院を経て研究者の道へ。
著者
福島 智子
出版者
学校法人松商学園松本大学
雑誌
松本大学研究紀要 = The Journal of Matsumoto University (ISSN:13480618)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.81-89, 2020-03-10

本稿では、社会学的視点から、家庭で毎日の献立を考える人びと(多くは女性)の選択に影響を与える「家庭料理」規範を分析する。諸外国における「家庭料理」研究を参照しながら、現代日本におけるジェンダー化されたフードワーク(献立の作成や食材の調達、調理など)のあり方を明らかにする。
著者
福島 智子
出版者
学校法人松商学園松本大学
雑誌
松本大学研究紀要 = The journal of Matsumoto University (ISSN:13480618)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.81-89, 2020-03

本稿では、社会学的視点から、家庭で毎日の献立を考える人びと(多くは女性)の選択に影響を与える「家庭料理」規範を分析する。諸外国における「家庭料理」研究を参照しながら、現代日本におけるジェンダー化されたフードワーク(献立の作成や食材の調達、調理など)のあり方を明らかにする。
著者
福島 智子
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.13-30, 2003-10-05 (Released:2018-02-01)

The purpose of. this paper is to reconsider the ethics of truth-telling through analyzing the theory of Catholic bioethics and its practice in the in-home palliative care provided by the Association Romanini in Rome. Catholic bioethical theory obliges doctors to tell the truth only to the extent that their patients demonstrate the willingness and ability to accept it. Following Catholic ethics, medical staff of the Association Romanini first tell the truth to their patients' families, and then in discussion with these families decide whether or not it is preferable to tell the patients. In practice, however, they tend to refrain from telling the truth to their patients. This is primarily because they wish to avoid negative effects, such as the patient's 'loss of hope', and secondarily because establishing a relationship of trust between the medical staff, family, and patient is considered more important than the act of truth-telling itself. Family participation in decision-making is common in Japan as well. It has sometimes been criticized as a result of Japan's socio-cultural tendencies to emphasize group decision-making. Indeed, family decision-making may infringe paternalistically on the patient's autonomy. However, the case of the Association Romanini illustrates the importance of human relationships of trust - not only between the medical staff and their patients but also including their families - that cannot be reduced simply to contractual, clinical or 'provider-consumer' relationships.
著者
福島 智
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.870-871, 2018-09-15
著者
福島 智恵 山岡 建夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.999-1006, 2006-06-01
被引用文献数
10

地上を捜索するレーダにおいて,背景クラッタに埋もれた目標や小型目標をより高精度に探知するためには目標と背景クラッタの分離が必要であり,距離分解能や方位分解能を向上することが求められている.一般に距離分解能を向上する手段としては,送信パルスの狭パルス化や広帯域FMパルス化などが挙げられるが,これらの手段では広帯域の受信機が必要となり,ハードウェア構成が複雑でコスト増大を招く.これに対して,周波数ステップさせた複数の狭帯域パルスを周波数領域で合成して逆フーリエ変換(IFFT)を施すことで,時間領域での狭パルス化,すなわち距離分解能の向上を図る手法が提案されている.本論文では,この手法をもとに周波数ステップさせたパルスを高速に発生する高速広帯域エキサイタを用いて合成帯域レーダ(Synthetic Bandwidth Radar:SBR)を構成し,実環境下における実験的評価を行うことで,その有効性を確認した.
著者
家田 章子 福島 智子
出版者
桜美林大学
雑誌
桜美林言語教育論叢 (ISSN:18800610)
巻号頁・発行日
no.7, pp.163-174, 2011

高校における外国につながる生徒たちへの学習支援は、小中学校に比べて十分な対策がされているとは言いがたい。このような状況を改善するため、首都圏のある公立高等学校における学習支援の一つとしてeラーニングの積極的な活用を試みた。具体的なコンテンツはMoodle の小テストの機能を使ったもので、日本語支援としては、これまで行ってきた漢字に加え自動詞・他動詞を、教科支援は現代史の用語を扱った。日本語支援については、自学自習型の教材ではなく、一度授業等で学んだものを練習を通して確認するという位置づけである。対面授業を補う教材として導入したもので、いわゆるブレンディッドラーニングと言われる(宮地2009)学習スタイルである。事前にeラーニングのレディネス調査、学習の効果を確認するための調査として自他動詞の理解度と現代史の用語知識の確認を行い、教材を試用した。授業時間外での学習機会の提供や各自のレベルにあった学習が可能になるなど、 ブレンディッドラーニングによる支援の可能性を実感できた一方で、コンテンツの充実、高校教員との連携など多くの課題が残された。
著者
伊福部 達 中邑 賢龍 福島 智 田中 敏明 畑一 一貴
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本課題の目的は、筋・神経系障害(筋萎縮や失語症・発話失行)により発話が困難になった障害者のために、テキスト情報に加えて、リズム、抑揚、笑い、怒りなどのノンバーバル情報を表出できるような実用的な発話支援機器を開発するところにある。平成22年度は、21年度に提案した実施項目に従って遂行し、以下のような成果が得られた。実施項目:昨年度はウェアラブルPCとポインティング・デバイス(P.D)を用いて、音声を生成するパラメータを直接的に指やペンの動きで制御できる「構音障害者の音声生成器」を試作した。本年度は、これを利用して家庭内やリハビリ現場を想定し、生成された連続音声や感情音がどこまで正確に認識され得るのかを評価し、誰もが利用できるようにios上でプログラムをダウンロードできるようにした。評価結果:(a)昨年度の評価結果から、摩擦音(サ行)が出だしにあるような連続音声の認識率が低かったことから、P.D上に摩擦音を出せる領域を設け、音声の認識率と操作性の複雑さの観点からその有用性を評価した。その結果、操作性はそれほど負担にならないこと、全ての連続音声を認識させえることなどを確認した。(b)イントネーションやアクセントも付加できるように、表面圧センサの付いたRDを用いて、筆圧や指の押圧により非言語音を生成できるようにした。その評価から、「急ぎ」、「笑い」、「怒り」などを表わす抑揚を30分程度の訓練で単語に付加できるようになった。以上から、使用頻度の高い音声ほど何かを緊急にリアルタイムで伝えたいときに有用であることを確認した。(c)本インタフェースを同時に、多くのユーザに利用してもらうために、歌を生成できるような「音声楽器」へ拡張するとともに、本プログラムをウェブ上でダウンロードすることによって、スマートフォンにより誰もが利用できるようにできるようにした。
著者
村田 拓司 福島 智 中野 泰志 伊福部 達 大西 隆 苅田 知則
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.選挙のアクセシビリティの研究平成16年度:電子投票と選挙に関する新見での選管担当者と障害有権者への聞取調査の結果、有権者は同システムの有用性に満足するもそのアクセシビリティ配慮がより広範には活用できていないこと等が明らかになった。17年度:新見調査を踏まえ、都市部の四日市での同様の調査の結果、(1)高齢者の筆記の不安解消、点字の書けない全盲者や知的障害者が独自に投票できたが、(2)両市とも電子投票導入時や機種選定時の障害者の参加機会がなく、引きこもりがちな障害者向け啓発が困難で、配慮とニーズの齟齬があり、(3)電子投票の信頼性への要求が高く、(4)投票機も改良の余地があり、(5)第三者認証、最低限アクセシビリティの法文化も必要なこと等が明らかになった。2.総合支援システムの研究16年度:(1)模擬電子投票後アンケートの分析やバリアフリー専門家討論会による電子投票のアクセシビリティ調査、(2)上記の新見調査の結果、電子投票機の最低限アクセシビリティの確認と、より多様な障害者向けユーザビリティに残る課題、アクセシビリティ等の客観的評価手法やその配慮保障のための法制整備の必要性等が明らかになった。17年度:四日市調査等の結果、(1)点訳選挙公報等の情報入手が困難で、(2)知的障害者も支援次第で参加可能なこと等、選挙参加促進の総合支援策の必要性が明らかになった。3.選挙とまちづくりの研究16年度:バリアフリーのまちづくりのための当事者参加型ワークショップの分析の結果、投票環境整備にはまちの日々のあり方が重要で、障害者のバリアを、彼らを交えたワークショップを通して体験的に理解する必要性が明らかになった。17年度:四日市調査の結果、公共施設の投票所のバリアフリー化が進むも最寄りの小規模集会所等を投票所にするのに難があること等が明らかになった。
著者
山口 三重子 島津 望 下妻 晃二郎 矢部 正浩 福島 智子 加藤 恒夫
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉大学誌人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.77-85, 2005-03

本研究の目的は,自宅で最期を迎えたいと希望するがん患者の在宅緩和ケアを行うために作られた,プライマリケアチーム(開業医・訪問看護師・開業薬剤師など)と緩和ケア専門チーム(緩和を専門とする医師・看護師・MSWなど)の連携がスムーズに行われるための課題を明らかにすることである。分析対象は,在宅緩和ケアに参加した医療職者の事例検討会(学習会)において録音したテープ,診療録,看護記録である。テープは逐語録にし,分析にはワトソンの理論を参考に内容分析法で行った。その結果,在宅緩和ケアにおける連携をスムーズにするために必要な因子として,連携前の準備,緩和ケアに特有のケアや薬剤の理解,両チームの役割分担,の3つの要因が抽出された。今後の検討課題として,連携のアウトカム評価,コーディネーター(リーダー)の役割と職種,より多職種を含めた組織化などが挙げられた。
著者
立岩 真也 天田 城介 小泉 義之 福島 智 星加 良司 上農 正剛
出版者
立命館大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2008

報告書『視覚障害学生支援技法 増補改訂版』を関係者・機関に配布。大学附属図書館と書籍のディジタル・データ化、そのデータの提供の仕組みについて協議。7月に開始されたその運用のあり方について提言すべく検証作業を行った。文字データのディジタル・データ化を巡る議論や実践の歴史を検証する研究を進めるとともに、電子書籍を巡る最近の動向を把握する作業を開始。電子書籍のアクセシビリティについて、その基本的な方向と社会的仕組みを検討し提言することを目的とする「電子書籍普及に伴う読書バリアフリー化の総合的研究」が2011年度から5年間の立命館大学グローバル・イノベーション研究機構研究プログラムに採択される(年間1000万円)。京都市内のALS等コミュニケーションの困難な人を支援する活動を継続的に行い、その記録および種々の技術に関わる情報をHPに掲載。大学院生が日本難病看護学会等で報告。2011年2月には「重度障害者コミュニケーション支援講座--難病者・重度障害者ITコミュニケーション支援技法を学ぶ」を開催。利用者・支援者が参加。全国手話通訳問題研究会、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全日本ろうあ連盟、全国要約筆記問題研究会から参加を得た2010年3月のシンポジウム「聴覚障害者の情報保障を考える」の記録に新たな文章を加えた報告書を作成。2011年5月に刊行予定。以上の他、障害者のコミュニケーションに関わる技術・制度の歴史、関連文献、著作権に関する報道等をまとめ、ウェブサイトhttp://www.arsvi.com(→「異なる身体のもとでの更新」)に掲載、随時更新して提供している。