著者
イェユンウェン 中小路久美代
雑誌
デジタルプラクティス
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.117-124, 2011-04-15

組織やグループで現在開発中の,あるいは既に開発したシステムやオープンソースといった大量のソースコードを,その組織の知財として活用が望まれてている。そのようなソースコードに特化して検索するのが,エンタープライズ検索エンジンCodeDepotである.CodeDepotは,ソースコードを構造化された自然言語の文書とみなし,プログラムの構造情報と意味情報を同時に考慮しながら,正規化処理と重複インデキシングを行なう.これにより,ウェブインタフェースを介して数億行以上の大規模ソースコードを瞬時に検索でき,現場での実用に耐えるシステムとなっている.検索クエリ文字列のバリエーションや複雑な条件検索,さらには文字列をトークンに置換することで,コードクローンと呼ばれる構造的に類似するプログラム断片を,インタラクティブに検索できる.現時点で数十のソフトウェア開発組織で,コーディング作法の学習や保守のような開発作業の様々な局面で利用されている.利用した開発者からは,システムの高速性と簡便性が高く評価されている.
著者
石田 亨 八槇 博史 溝口 理一郎 中小路 久美代 高田 司郎 中西 英之 荒井 幸代
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

セマンティックWebで提案されている基本技術は計算中心の技術であり,コンテンツを作成,利用するユーザ(人間側)への考察が欠けている.セマンティックWebの成功のためには,人間社会のWeb利用とセマンティックWebの計算中心のアプローチとのギャップを埋める人間中心の技術開発が必要である.このような問題意識に基づき,本研究では以下の三拠点に分かれて研究を展開した.京都大学では,厳密なオントロジーを人が記述することは容易でないとの立場から,人間が既に表現したコンテンツからオントロジーを抽出する研究を進めた.Web情報に関しては,既存データからのオントロジーの抽出に取り組み,カテゴリを特徴付けるキーワードの自動抽出や,表データからのオントロジーの抽出などを行った.また,既存オントロジーを整理して一覧とし,新しいオントロジーの設計を支援する研究を行った.大阪大学では,人間中心のセマンティックWebのためのオントロジー開発には小規模で分散したオントロジーを状況に応じてマージしたり,マッピングしたりする技術が不可欠であるとの考えから,オントロジー分散開発過程を包括的に支援する計算機環境を開発した.東京大学では,異なる「文化」に属するメンバ間の協調作業における,協調・交渉オントロジーの発現と発展に着目して研究が進められた.上記の研究と並行して,この分野を推進する活動も行った.人工知能学会にセマンティックWebとオントロジー研究会を継続的に発展させると共に,2004年にはセマンティックWeb国際会議(ISWC)をわが国で開催する中心的役割を果たした.また,2003年にElsevierから出版が始まったJournal of Web Semanticsの初代共同編集長を務めた.
著者
中小路 久美代 山本 恭裕
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.154-165, 2004 (Released:2004-01-27)
参考文献数
41
被引用文献数
3 3

This paper describes our approach for the development of application systems for creative knowledge work, particularly for early stages of information design tasks. Being a cognitive tool serving as a means of externalization, an application system affects how the user is engaged in the creative process through its visual interaction design. Knowledge interaction design described in this paper is a framework where a set of application systems for different information design domains are developed based on an interaction model, which is designed for a particular model of a thinking process. We have developed two sets of application systems using the knowledge interaction design framework: one includes systems for linear information design, such as writing, movie-editing, and video-analysis; the other includes systems for network information design, such as file-system navigation and hypertext authoring. Our experience shows that the resulting systems encourage users to follow a certain cognitive path through graceful user experience.
著者
中川 渉 蔵川 圭 中小路 久美代
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.16, pp.105-112, 2001-02-22
被引用文献数
1

本論では,作曲過程の支援を目的として,作曲過程における中間的産物の外在化の役割に着目した作曲過程のモデルと,それに基づき構築したインタラクティブシステムCAPADY (Composition Assistance by Producing Agogics and DYnamics)について論じる.作曲過程において生成される中間的産物を計算機を用いた演奏シミュレーションという形式で外在化することにより,作曲者の内省が進み作曲過程が進行する.CAPADYは,そのような作曲者の内省を支援するために,他パートの実演奏を基に演奏データを自動的に調整し演奏シミュレーションにおける演奏データの表情付けをおこなう.The goal of this research is to support the cognitive process of musical composition by focusing on the role of externalizations. We use computer systems as a means to externalize intermediate understanding of what the composition should be. CAPADY (Composition Assistance by Producing Agogics and DYnamics) automatically produces agogic and dynamic accents for a partially written musical notation for an instrument (e.g. drum) by extracting expressive features from actual music performance using another instrument (e.g. piano).
著者
神谷 年洋 中小路 久美代 高嶋 章雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.108, pp.63-70, 2001-11-15

日常業務における知的創造活動を支援する対話的アプリケーションシステムには,機能を充足する必要と共に,使い心地の良さ(デザイラビリティ)が求められる.本稿では,デザイラブルなシステムの構築に向けて,システムのインタラクションの分析やデザインを目的とした,インタラクション記述言語CHIOPAを提案する.提案した言語を用いて粒度の異なる2つのインタラクションを記述した例を用いて,アプローチの特徴を述べる.Interactive systems that support intellectual creative tasks require not only to be useful and usable by satisfying their targeted functionalities, but also to be desirable for individual users by providing appropriate interaction styles. This paper proposes a descriptive formal language, CHIOPA (Computer-Human Interaction on Objects, Properties, and Actions), with which developers can analyze and design interaction between human and interactive computer systems. We illustrate characteristics of the language by using two examples of interactions at two different levels of granularity.
著者
山本 恭裕 高田 眞吾 中小路 久美代
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.82-92, 1999-01-01
被引用文献数
17

The goal of this study is to design and build a computer system to support the basic cognitive activity of "writing" in a more natural and effective manner. The paper starts with a description of a writing process, followed by an overview of existing models on writing. Then, the notion of "Representational Talkback" is proposed as an important aspect in supporting collage-style writing. Representational Talkback is defined as "feedback from externally represented artifacts." The ART (Amplifying Representational Talkback) system is implemented based on this notion, focusing on the role of meta-comments in writing. The goal of the system is twofold : (1) to support collage-style writing of a document, and (2) to observe how people "write" using ART. The paper concludes with a discussion of the result of a study on how people "write" using ART with an eye towards extending the notion to other types of cognitive activities.
著者
中小路 久美代 山本 恭裕 大平 雅雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告.IM, [情報メディア]
巻号頁・発行日
vol.99, no.69, pp.31-36, 1999-08-20

本論では,Collective Creativity-他者が生成/外化した「表現」を利用することによって喚起される個人の創造性-を支援するための二つのシステムを紹介し,その理論的枠組みについて論じる.IAM-eMMaとEVIDIIはともに,他のデザイナが入力した知識(ルール)や関連づけを利用することによって,デザイナの創造性を喚起するようなグラフィックイメージ(画像)を検索するシステムである.前者は,画像の色とタスク要件を関連づけるルールを用い,後者は,人と画像,感性語という三つ組を可視化するインタフェースを提供する.これら二つのシステムのユーザ観察を通して,(1)システムが提供する知識や情報に十分なコンテキストが与えられていること,(2)その知識や情報がデザイナにとって信用できるものであること,そして,(3)人間とシステムとの間でタスクのバランスがよくとれ,デザイナがタスクに対して「appropriation(専有性)」を感じられるものであること,という3点が,Collective Creativityを支援するシステムにとって重要な要件であることがわかった.
著者
高嶋 章雄 蔵川 圭 山本 恭裕 中小路 久美代
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.3, pp.31-38, 2001-01-17
被引用文献数
1

情報を視覚化することにより人間はそれをより直感的に理解することができるため,グラフィックスを用いた様々な表現手法が提案されてきた.本稿では時間的変化を伴う事象をアニメーションを用いて表現し,情報を得る上で重要となるインタラクションについて論じる.ケーススタディとしてオブジェクト指向プログラミングによるクラスライブラリの進化を表すアニメーションを制作した.ユーザ観察を通して,(1)時間軸のコントロール,(2)差分の表現,(3)臨場感・没入感,(4)情報の絞りこみ,(5)時間軸のメタビュー,という5つの側面が,アニメーションを用いたインタラクションにおいて重要であることがわかった.Graphic representations, such as charts or diagrams, aid humans to grasp the meaning of information more easily. Computers have been used to visualize information, and a number of graphical representation methods have been explored. This paper describes a representation of complex data with temporal variations by using animation. By observing an expert interacting with the representation, we have identified five concepts that are important for using animation to visualize such complex data: (1) a control of the time scale, (2) differential representation, (3) a feeling of immersion, (4) filtering out information, and (5) a meta view for the time scale.
著者
白井 良成 中小路 久美代 山田 和明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.14, pp.17-24, 2004-02-06

本研究は,空間的,時間的なユビキタスコンピューティング社会において,多種多様,大量のオブジェクトが個々のインタラクションヒストリを累積した際に,それをどのようにユーザが利用すべきか,それに適した表現系と操作系とはどうあるべきかを考察し,そのためのインタラクションデザインの枠組みを構築しようとするものである.本論では,インタラクションヒストリの要約と閲覧というユーザの行為に着目し,インタラクションヒストリ閲覧目的のtaxonomyの構築をおこなう.そして,それぞれの側面に適した時間軸を利用する要約手法とそのための表現手法について考察する.最後に,インタラクションヒストリの可視化手法の一例として,我々が構築してきているOptical Stainシステムについて論じる.Optical Stainの利用経験の分析と発展させるべきシステムの側面を省察することにより,本研究の今後の課題と方向性について論じる.The goal of our research is to develop an interaction design framework for the use of interaction histories of objects. Ubiquitous computing enables each of a variety of objects (including humans) to keep track of its/his/her interactions with other objects over a very long period of time. Little research has been done in support of how to design representations and operations to use such interaction histories of a large number of heterogeneous objects. This paper focuses on summarization and browsing techniques for interaction histories. We present a taxonomy for interaction history browsing purposes, and discuss what temporal representations would be appropriate for different types of such browsing purposes. We introduce Optical Stain, a system that keeps track of posters on a physical bulletin board and gives visual feedback on the board as trajectories of past posters, to illustrate our point of view.