著者
石田 亨 八槇 博史 溝口 理一郎 中小路 久美代 高田 司郎 中西 英之 荒井 幸代
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

セマンティックWebで提案されている基本技術は計算中心の技術であり,コンテンツを作成,利用するユーザ(人間側)への考察が欠けている.セマンティックWebの成功のためには,人間社会のWeb利用とセマンティックWebの計算中心のアプローチとのギャップを埋める人間中心の技術開発が必要である.このような問題意識に基づき,本研究では以下の三拠点に分かれて研究を展開した.京都大学では,厳密なオントロジーを人が記述することは容易でないとの立場から,人間が既に表現したコンテンツからオントロジーを抽出する研究を進めた.Web情報に関しては,既存データからのオントロジーの抽出に取り組み,カテゴリを特徴付けるキーワードの自動抽出や,表データからのオントロジーの抽出などを行った.また,既存オントロジーを整理して一覧とし,新しいオントロジーの設計を支援する研究を行った.大阪大学では,人間中心のセマンティックWebのためのオントロジー開発には小規模で分散したオントロジーを状況に応じてマージしたり,マッピングしたりする技術が不可欠であるとの考えから,オントロジー分散開発過程を包括的に支援する計算機環境を開発した.東京大学では,異なる「文化」に属するメンバ間の協調作業における,協調・交渉オントロジーの発現と発展に着目して研究が進められた.上記の研究と並行して,この分野を推進する活動も行った.人工知能学会にセマンティックWebとオントロジー研究会を継続的に発展させると共に,2004年にはセマンティックWeb国際会議(ISWC)をわが国で開催する中心的役割を果たした.また,2003年にElsevierから出版が始まったJournal of Web Semanticsの初代共同編集長を務めた.
著者
西村 俊和 古村 隆明 八槇 博史 石田 亨
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1463-1471, 1998-05-15
参考文献数
12
被引用文献数
4

現在のモバイルコンピューティングの使われ方は電子メールやFAXの送信という1対1通信が中心である.本論文では,コミュニティ形成の状況を可視化し,コミュニティ全体で共有しうる情報を人々に適切にフィードバックすることを目的とする.コミュニティの構成員間の通信の状況を携帯端末上で可視化するCommunity Viewerを提案する.可視化の枠組みとして,(1)コミュニティの活動の場を仮想的に表すパーティルームメタファと,(2)プライバシーを守りながらも各人の活動を反映して表示するリフレクタアイコンを導入する.人々の静的な関係,あるいは動的な活動がこのパーティルーム上のリフレクタアイコンの動きとして表現される.初めての試みとして,実際にこのシステムを100台の携帯端末に搭載し,国際会議の会場で使用実用実験を行ったので,その結果について報告する.Mobile computing has been mainly utilized for point-to-point communication services,such as E-mail or FAX among people.To advance this field,the challenge is to encourage group communication by providing information that encourages community formation.As the first step towards this goal,we experimentally implemented the Community Viewer,which dynamically visualizes the communication interaction among people in the community.To design the Community Viewer,we introduced (1) the party room metaphor,which provides a virtual place for representing various community activities,and (2) the reflector icon,which reflects the activity of the corresponding individual while protecting his/her privacy.The static relationship among people and their dynamic activities are displayed in the spatial arrangement of reflector icons in the party room.We report our experiments on implementing and testing the community viewer in an international conference using 100 personal assistants.
著者
石田 亨 西村 俊和 八槇 博史 後藤 忠広 西部 喜康 和氣 弘明 森原 一郎 服部 文夫 西田 豊明 武田 英明 沢田 篤史 前田晴美
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.2855-2865, 1998-10-15

本論文では,国際会議におけるモバイルコンピューティング実験の報告を行い,その役割と効果について分析する.約100台の携帯電話付き携帯端末を用いて,実際の国際会議の参加者に通信/情報サービスを提供し,その際得られたログデータを解析した.ログデータのみでは十分知ることのできないユーザの使用感などは,事後アンケートにより調査した.以下の使用状況が観察されている.(a)ユーザは会議場ばかりではなく,会議後ホテルの部屋へ戻ってからも携帯端末を利用した.携帯端末は通常のデスクトップ型端末と比べて頻繁に使われ,かつ1回の使用時間は短かった.(b)情報サービスは,会議の進行を反映して利用にピークが現れるが,電子メールサービスは会議の進行にかかわらず定常的に利用された.
著者
林田 尚子 八槇 博史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.83, pp.277-284, 2001-09-06

モバイル環境において入手したい情報は,その時,その場所で得られてこそ意味のあるライブな情報であることが多い.しかしWeb上には,揮発性であるがゆえにライブな情報は蓄積されていかない.そこで,本研究では,モバイル環境に適した情報共有プラットフォームLiveInを提案してきた.これは,情報提供者,情報要求者がモバイル環境から手軽にサービスを利用でき,情報サービス設計者が簡易な手法でサービスを運用できるようなプラットフォームである.しかし一方で,そのようなプラットフォームの中では,人が情報提供を行うよう動機付けることが難しい.そこで,人が情報提供行動を起こす理由を明らかにしたいと考え,現在,いくつかの実験を計画している.本稿では,LiveInの特徴を概観し,LiveInに不足している情報提供のサポートについて議論し,現在計画中の情報提供行動に関する実験について説明する.Information needed by mobile users is often live, in that it is meaningful when it is given at the time and at the place. Since, live information is volatile in its nature, we cannot expect its accumulation of such information as seen in web. We have proposed LiveIn, an information-sharing platform, to deal with it, where the providers and the requesters of live information can handle it easily, and information site can be built at low cost. In such an environment, motivating information provider is crucial. We plan several experiments to clarify the factors that effect the motivation. In this paper, we first present LiveIn, and discuss features and needed in LiveIn. Then, the plan of experiments is explained.
著者
林田 尚子 八槇 博史 喜田 弘司 山口 智治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.575-582, 2003-08-01

本研究で想定する街中における情報共有環境では,情報そのものが断片的でかつ有効期限も短いため,その瞬間に欲しい情報が見つけにくい.生成した情報をグローバルネットワークからアクセス可能としておきさえすれば,いつかだれかが見てくれるという環境とは異なり,より積極的に情報を配信し,また発信を促すような,情報の流通を促進する枠組みを考える必要がある.この枠組みを実現するために,情報流通を支援するエージェントを考える.本研究では特に,情報提供の促進に視点をとらえた.情報保持者の不安が情報提供にマイナスの影響を与えるものと考え,これらの影響をリスク要因と呼び,街中からの情報提供行動に対するリスク要因の影響をフィールド実験を行い検証した.本実験により,金銭的報酬の導入や入力コストの削減などの手法とは別に,リスク要因を減じるサポートを与えることで情報提供行動を促進できることが明らかとなった.また,単独では有効なサポートであっても組み合わせたときには,むしろ,単独のサポートよりも情報提供を促進する効果が低い現象も見られた.本論文では,実験における被験者の行動・アンケート結果をもとに,情報提供促進のためのエージェントの機能を考察する.