- 著者
-
中山 雅茂
- 出版者
- 一般社団法人 日本理科教育学会
- 雑誌
- 理科教育学研究 (ISSN:13452614)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.3, pp.533-542, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
- 参考文献数
- 27
小学校理科第4学年で学習する「水の三態変化」では,水を加熱する実験を行い,水は温度によって水蒸気に変わることを捉える。実際に水を加熱しその温度変化を捉え記録する実験を通して,水の温度と状態の変化を関係付けることによって水の性質を理解する。水の沸点は気圧や不純物の混入によって変化するが,広く一般的に100°Cという値で捉えられている。一方,教科書で紹介される実験方法の中でも,水を入れる容器としてビーカーを使用した場合は,この温度が97~98°Cになることが示されている。これは,使用する棒温度計の仕様上の問題によるが,十分に小学校教員には理解されていない状況にある。そこで本研究では,このビーカーと棒温度計を使った実験について,棒温度計の仕様上の特性を踏まえ次の2点の改善を行い,実際に小学校における授業実践を通して児童実験で100±1°Cの測定結果が得られることを確認した。1)ビーカーをアルミニウム箔の蓋で覆う際,あらかじめ棒温度計の太さよりも大きな穴をアルミニウム箔にあける。2)測定範囲0~200°Cの棒温度計を使用する。また,授業実践の際に,実験によって温められた空気が実験室にある換気口から廊下に流れ出したことに起因すると考えられる実験室内の空気の流れによって,換気口近くの実験台で実施した実験が空調環境の影響を受けている可能性が示唆された。