著者
中島 早苗 分部 利紘 今井 久登
出版者
The Japanese Society for Cognitive Psychology
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.105-109, 2012

本研究では匂いの同定しやすさ(同定率),快・不快(感情価),日頃嗅ぐ頻度(接触頻度)が匂いからの無意図的想起の生起要因となるかを検討した.74名の参加者にさまざまな匂いを提示して,<i>SD</i>評定を求めた.その後,評定中に自伝的記憶を意図せずに想起したかを尋ねた.その結果,接触頻度の高い匂いほど無意図的想起が生じやすかった.しかし同定率や感情価は無意図的想起の有無と関連がなかった.この結果は,匂いからの無意図的想起では言語表象を介した活性化が生じないこと,無意図的想起は手がかりの種類によって想起過程が異なることを示唆する.
著者
長谷川 孝子 中島 早苗 沼沢 忠祐
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-6, 1989-04-01

パンの副材料の配合差が及ぼす影響を調製パン5種と市販食パン1種についてレオメーターによる弾性率,応力緩和率の物性値と水分量及び水分活性を測定し,パンにおける物性値と水分の関係を明らかにした.1)調製パンの水分量は45.8〜48.4%の範囲で,生地中の水分量の高いパンでは焙焼後のパンの水分量も高かった.2)パンの水分活性は市販食パン及び乳化剤添加のパンでは0.905〜0.920と低く,砂糖半分量のもの,バターの入っていない水分量の多いパンの水分活性が高かった.3)パンの応力緩和率は乳化剤,バターの入ったパン及び市販食パンは高く,脱脂粉乳,バターの入っていないパンは低かった.4)パンの弾性率は乳化剤,バターの入ったパンは高く,脱脂粉乳,バターの入っていないパンは低かった.5)パンの水分量と水分活性と物性の関係では水分量と応力緩和率と弾性値に有意の相関があり水分量の高いパンは応力緩和率が低く,ねばりのあるパンであり,さらに弾性率も低く柔らかいパンである.一方水分量の少ないパンはバサバサし砕けやすく,かたいパンであることがみとめられた.終わりに本研究はエリザベス・アーノルド富士財団の研究費助成によった.また本研究に対し,ご好意を賜わったフジパン株式会社ならびに同財団及びご指導頂いた諸先生に深く感謝の意を表します.
著者
廣井 直樹 宮崎 保匡 寺井 秀樹 中島 早苗 斉藤 早代子 金子 幸代 山室 渡 比嘉 眞理子
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.341-346, 2005-09-01
参考文献数
11

食欲不振・嘔吐・嘔気を主訴に入院した70歳の女性。心拍数は72回/分・整であり,動悸や手指振戦はみられなかった。入院後も自覚症状は改善せず,徐々に気力の減退が著明となり食事摂取不能・全身の疼痛も出現した。TSH 0.1μIU/ml以下,FT3 20.0pg/ml以上,FT4 12.0ng/dl以上,TRAb 5.6IU/Lでありバセドウ病による無欲性甲状腺機能亢進症と診断した。Thiamazol 30mg/dayにて内服治療を開始したが精神症状の改善はみられず,さらに抗精神病薬を開始するが内服すら不可能な状況となった。高Ca血症を認めたため血清Caの補正を行ったところ,血清Caの低下に伴いうつ症状は改善した。本症例では一般的な甲状腺機能亢進症患者にみられるようなイライラや不眠,振戦,動悸や頻脈などの活動性亢進に伴う種々の症状は認めなかった。高齢者の場合,食欲不振や嘔気・嘔吐,無動,抑うつ傾向など比較的衰弱した印象が前面に出ることがあり,このような病態を無欲性甲状腺機能亢進症と呼ぶ。バセドウ病における精神症状発症の原因はいまだ明らかではないが,高Ca血症が影響しているとの報告もある。今回われわれは高Ca血症がうつ症状の進展に関与したと思われる無欲性甲状腺機能亢進症の1例を経験したので報告する。