著者
山室 信一 小関 隆 岡田 暁生 伊藤 順二 王寺 賢太 久保 昭博 藤原 辰史 早瀬 晋三 河本 真理 小田川 大典 服部 伸 片山 杜秀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究においては、女性や子ども更には植民地における異民族までが熱狂をもって戦争に参与していった心理的メカニズムと行動様式を、各国との比較において明らかにすることを目的とした。そこでは活字や画像、音楽、博覧会などのメディアが複合的に構成され、しかも複製技術の使用によって反復される戦争宣伝の実態を明らかにすることができた。そして、このメディア・ミックスを活用する重要性が認識されたことによって、外務省情報部や陸軍省新聞班などが創設されることとなった。戦争ロマンの比較研究から出発した本研究は、戦争宣伝の手法が「行政広報」や「営利本位の商業主義」に適用されていく歴史過程を明らかにすることによって、総力戦という体験が現代の日常生活といかに直結しているのかを析出した点で重要な成果を生んだ。
著者
武田 将明 小野 正嗣 都甲 幸治 久保 昭博
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、世界文学、フィクション論、現場との交流という3つの角度から、現代における文学研究の可能性を広げることを試みた。世界文学に関する、ともすれば英語圏中心の考え方を批評し、また、現代の文化人類学・AI研究を文学研究に応用する可能性を模索し、最新のフィクション論から改めて文学の意味を捉え直し、国内外の文学者・研究者と幅広く交友することで、批評・研究が文学の現場に生かされる可能性を模索した。
著者
齋藤 渉 上村 敏郎 大崎 さやの 隠岐 さや香 久保 昭博 後藤 正英 菅 利恵 武田 将明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本共同研究の目的は、18世紀におけるフィクション使用の形態と機能を研究することであった。その成果は、a)理論的研究と、b)歴史的研究に分けることができる。a)理論的研究については、特に、1)フィクション理論における意図概念の検討(特に仮説的意図主義をめぐる研究)、2)対話ジャンルの概念に関する考察、3)フィクション概念と物語概念の接続の3点を挙げたい。b)歴史的研究の第一の成果は、18世紀における対話ジャンルの影響史的研究である。第二の成果として、『ベルリン月報』掲載のグロシンガー書簡に関する調査が挙げられる。
著者
高橋 幸平 日高 佳紀 大浦 康介 久保 昭博 河田 学
出版者
同志社女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度は以下の各項目の通り研究を進め、その進捗を隔月の研究会(偶数月、計6回開催)で報告した。1.西洋のフィクション論の整理・把握 フィクション論の基本文献として、ヘイドン・ホワイト『メタヒストリー 19世紀ヨーロッパにおける歴史的想像力』を取り上げ、その内容をフィクション論との関わりから検討した。また、竹内敏雄『アリストテレスの藝術理論』の分析を通じて竹内のアリストテレス解釈を現代のフィクション論の観点から再評価した。さらに西田谷洋『村上春樹のフィクション』について著者を交えてワークショップを行い、現代日本小説をフィクション論的に分析することの意義と困難さについて議論した。2.日本近現代における文学作品とそれをめぐる現象のフィクション論的分析 2017年度に行ったフィクション論の理論的研究と整理および1.での理論的な考察を経て、小島信夫・松浦理英子・小川洋子・筒井康隆・村上春樹について、各作家の作品や評論らをフィクション論的な視点から分析し再記述した。特に小川洋子「百科事典少女」は西田谷洋氏、松浦理英子『最愛の子ども』は飯田祐子氏による講演を研究会で行い、広く日本文学とフィクション論とに関する議論を行った。3.研究成果の海外での発表・意見交流 8月に開催されたタイ国日本研究国際シンポジウム2018(チュラーロンコーン大学)において、高橋・日高が「フィクション論と現代日本文学 -筒井康隆と村上春樹-」、久保・西川が「事実への欲望 -1920-30年代の『実話』ジャンルをめぐって-」と題してパネル発表を行った。5.研究成果の論集発刊 令和2年度の発刊に向けて、すでにフィクション論に関する編著がある大浦・久保・河田と高橋・日高とを中心に、論集の内容や構成、メンバーの執筆項目について検討し、論集の内容や執筆者をおよそ確定した。