著者
大北 碧 二瓶 正登 西山 慶太 澤 幸祐
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.392-410, 2018-12-01 (Released:2019-06-01)
参考文献数
37

Since horses (Equus caballus) domesticated 5500 years ago, humans and horses have built a closed relationship.“Jinba Ittai”expresses this relationship, and it means “a feeling as if hearts of a human and a horse are united”. What kind of a sense is a “Jinba Ittai”actually, when a human is in contact with a horse? What kind of processes occur the sense of “Jinba Ittai”? In present study, we examined “Jinba Ittai”which persons with experience of equestrian in training of horses for using interviews for them. In addition, we used M-GTA, which is the one of the qualitative analysis and focuses on the processes until a subjective sense occurs. The results showed that “Jinba Ittai”is a sense of operation agency (“It seems like the horse has become my limbs”) and a sense of smooth interaction (“We understand each other very well”). Additionally,we revealed that when a horse responds to instructions of a human immediately (i.e.,improved operation sense), the human feel “Jinba Ittai”. These results suggested that when the responses of other agent (such as horses) are produced immediately after the own responses, humans feel “Jinba Ittai”with the sense of smooth interaction.
著者
杣取 恵太 二瓶 正登 北條 大樹
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-028, (Released:2021-09-10)
参考文献数
21

近年、認知行動療法における多くの研究でベイジアンアプローチが用いられるようになった。このことは臨床研究者や実践家において研究や介入の質を向上するためにそれらの方法を理解する必要があることを示している。そのため、本論文では初学者のベイジアンアプローチに対する理解を促進することを目的とした。はじめにベイジアンアプローチの導入と従来の方法との比較を行い、その後介入効果を調べるためにベイジアンアプローチを使用した実際の研究例の紹介と解説を行った。最後に認知行動療法の研究にとってベイジアンアプローチがどのような示唆をもたらすかを議論した。
著者
二瓶 正登 田中 恒彦 澤 幸祐
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-23, 2019-11-30 (Released:2020-01-04)
参考文献数
38

古典的条件づけは不安と関連する障害の形成と維持に重要な役割を担っている。しかし学習心理学的知見と臨床心理実践との乖離は未だ大きい。そこで本論文ではヒトおよび動物を対象に行われた古典的条件づけおよび連合学習理論に関する実験の諸知見を臨床心理実践へ応用する方法について検討することを目的とした。初めに古典的条件づけ手続きに関する諸現象を「条件反応(conditioned response; CR)に影響を及ぼす条件づけ試行以外の要因」と「消去後に生じるCRの再発をもたらす要因」の2つの観点から述べ,それらの現象が臨床場面で生じる可能性を概説した。次にRescorla–WagnerモデルおよびBoutonのモデルという2つの連合学習理論の概説を行い,それらの理論が臨床心理実践へどのように活用できるかを論じた。最後に学習心理学で得られた知見を認知行動療法に活用する意義について論じた。
著者
二瓶 正登 北條 大樹
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.701-707, 2021 (Released:2021-12-01)
参考文献数
21

多様な領域においてベイズ的な統計手法を使った研究が増えている一方で,心身医学やその関連領域である精神医学や心理学において,そうした研究は多くない.この理由として,ベイズ統計を用いることによって,どのような知見を得ることが可能かを解説した文献が少ないことが考えられる.そこで本稿においては心身医学領域においてベイズ的手法が重要な知見を与えられることをネットワーク解析と統計モデリングという2つの観点から述べたうえで,先行研究の概説を行った.また,ベイズ統計を心身医学領域の研究者が行う際に留意すべきことについての議論も行った.
著者
二瓶 正登 荒井 穂菜美 前田 香 青木 俊太郎 土屋垣内 晶 岩野 卓 冨岡 奈津代 岡村 尚昌 三原 健吾 城月 健太郎 堀内 聡 坂野 雄二
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.54-63, 2018-10-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
16
被引用文献数
3

Fear of Negative Evaluation Scale日本語短縮版(SFNE)はFNEを測定する1因子構造の尺度である。しかし近年の研究においてSFNEが順向項目因子と逆転項目因子の2因子から構成される尺度である可能性が報告された。本研究ではWeb調査を通して参加した一般成人500名と大学生・専門学校生82名を対象に,SFNEの因子構造,信頼性および妥当性を検討した。探索的因子分析の結果,8項目からなる順向項目因子と4項目からなる逆転項目因子の2因子が抽出された。各因子の内的整合性と再検査信頼性は十分に高かった。逆転項目因子と比較して,順向項目因子の方が高い妥当性を有していた。本結果は逆転項目因子に比べ順向項目因子の方がFNEを正確に測定していることを示しており,FNEの測定においてはSFNEの順向項目因子を使用することが推奨される。本結果の意義と本研究の課題について検討した。
著者
杣取 恵太 二瓶 正登 北條 大樹
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.11-21, 2022-01-31 (Released:2022-04-01)
参考文献数
21

近年、認知行動療法における多くの研究でベイジアンアプローチが用いられるようになった。このことは臨床研究者や実践家において研究や介入の質を向上するためにそれらの方法を理解する必要があることを示している。そのため、本論文では初学者のベイジアンアプローチに対する理解を促進することを目的とした。はじめにベイジアンアプローチの導入と従来の方法との比較を行い、その後介入効果を調べるためにベイジアンアプローチを使用した実際の研究例の紹介と解説を行った。最後に認知行動療法の研究にとってベイジアンアプローチがどのような示唆をもたらすかを議論した。
著者
二瓶 正登 澤 幸祐
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.45-53, 2017-03-15 (Released:2017-05-29)

臨床心理学の実践場面において認知行動療法が盛んに実施されており,また多くの研究が行われている。認知行動療法は行動療法に起源を持つものの,近年では認知が感情や行動の原因であり,クライエントや患者が有する不適応的な認知を変容させることで心理学的な問題は改善されるという認知療法的な枠組みに基づいた症状の理解や介入が主流となった。認知療法の隆盛により,従来の行動療法が重視してきた学習心理学の枠組みに基づいた症状の理解や介入はあまり実施されなくなった。このような現状に至った背景として,行動療法あるいは学習心理学ではヒトが有する認知や言語といった個体の内面で生じる過程を適切に扱うことができないとする批判がある。しかし現代の学習心理学で用いられる諸理論においては学習が生じる際の認知過程が重要視されており,このような批判は適当ではない。そこで本論文では,現在の学習理論の観点から臨床心理学的問題をどのように理解することが可能か,そしてどのように実践上の問題を解消させることが可能かを展望する。さらに認知行動療法に学習理論を取り入れる利点や,近年行われるようになった認知行動療法で用いられてきた概念と学習心理学との融合に関する試みについても述べる。