著者
新妻 宏文 石井 元康 小島 敏明 菊池 公美子 鈴木 千晶 小林 智夫 五十嵐 勇彦 真野 浩 上野 義之 小林 光樹 豊田 隆謙
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.423-426, 1999-04-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

慢性B型肝炎患者を配偶者にもつ女性が,初診時すでに妊娠していたためにワクチンを施行せず妊娠を継続したところ,妊娠中にHBVに感染した.本例はHBV感染前からウイルス学的に経過を観察され,急性B型肝炎の発症前後の臨床データの経過が明らかになった.さらに,妊婦に対するワクチン使用の問題や周産期の急性肝炎の取り扱いの問題をかかえており,Gianotti-Crosti症候群を合併した点など示唆に富む症例であった.
著者
梶 幹男 澤田 晴雄 五十嵐 勇治 仁多見 俊夫
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.106, pp.1-16, 2001-12
被引用文献数
4

秩父山地のイヌブナ-ブナ林における17年間の堅果落下状況の推移から,イヌブナ,ブナともに2年に1回程度結実(総堅果落下量≧20個/m2)することが明らかになった。最大総堅果落下量はブナで992.4個/m2(1993年),イヌブナで943.9個/m2(1988年)であった。ブナおよびイヌブナの豊作年(総堅果落下量≧100個/m2)には明瞭な周期性は認められなかった。両種の豊作年が重なるのは2.3~3回に1回程度であると推定された。ブナとイヌブナの豊作年における平均健全堅果率(健全堅果量/総堅果落下量)は,イヌブナの方がブナよりも有意に高かった。同じく豊作年における両種の平均虫害堅果率(虫害堅果量/堅果落下量)はイヌブナよりもブナが有意に高かった。豊作年における総堅果落下量に占める潜在健全堅果量(健全堅果量+虫害堅果量+鳥獣害堅果量)の割合は7割程度で,平均値は両種間で有意な差がなかった。また,潜在健全堅果量に占める虫害堅果量の割合,すなわち虫害堅果率の平均値はブナがイヌブナよりも有意に高かった。これらのことから,ブナの健全堅果率が低い原因は同種の虫害堅果率が高いことによるものといえる。両種の豊作が同調した1993年と2000年の虫害堅果の落下時期はブナの方が早い傾向にあった。その原因として,ブナ堅果がイヌブナ堅果に比べて,早く成熟時の堅果サイズに達することによるものと推察された。ブナの虫害堅果落下時期は6月初旬~8月初旬および10月中旬~10月下旬に二つのピークが認められた。ブナの虫害堅果落下時期が二山型を示す現象は,東北地方と栃木県高原山においても観察されており,少なくとも東北地方から関東地方に広くみられる現象である可能性が示唆された。ブナ,イヌブナ堅果に共通する主要食害者としてブナヒメシンクイが重要であることが示唆された。日本海側に比べて太平洋側のブナの虫害堅果率が高い原因として,後者は冬期寡雪であることおよびイヌブナとブナが混生しており,両種の豊作年が必ずしも重ならないことが重要であると推論された。In order to investigate the long-term fluctuation of the seed production of beech species, the amounts of fallen nuts of Japanese beech (Fagus japonica Maxim.) and Siebold's beech (F. crenata Blume) were surveyed in sample plots of a natural beech forest in the Chichibu Mountains, Central Japan, for 17 years (1984-2000). Both of the beech species bore fruit (nuts≧20/m2) about half of the years. The maximum total fallen nuts were 992.4 nuts/m2 in Siebold'beech (1993) and 943.9 nuts/m2 in Japanese beech (1988), respectively. The mast year (nuts≧100/m2) interval was irregular. The probability when mast year of both beech species synchronize was estimated about once in 2.3-3 times of the mast year. The average ratio of sound nuts (SN) to total fallen nuts (TFN) of Japanese beech in the mast year was significantly higher than that of Siebold's beech. The average ratio of insect-damaged nuts (IDN) to TFN of Japanese beech in the mast year was significantly smaller than that of Siebold's beech. There was no significant difference between the species in the average ratio of potential sound nuts (PSN=SN+IDN+Animal-damaged nuts) to TFN. The average ratio of IDN to PSN of Siebold's beech was significantly higher than that of Japanese beech. The low average ratio of SN in Siebold's beech was mainly caused by high average ratio of IDN. The falling time of IDN of Siebold's beech nuts tended to be earlier than that of Japanese beech, as the growth of the Siebold's beech nuts is about two month faster than that of Japanese beech. As to the falling time of IDN in the synchronized mast year of both species in 1993 and 2000, Siebold's beech showed two modes at early June-early Aug. and mid Oct.-late Oct. The bimodal pattern for the falling time of IDN in Siebold's beech was also observed at Kunimi, Obonai (northern Honshu) and Mt. Takahara (central Honshu). This fact suggests that the phenomenon of bimodal insect damage on Siebold's beech nuts might be common in Tohoku and Kanto district. Pseudopammene fagivora Komai is one of the most important nut predators, for both Siebold's and Japanese beech. Larger insect damage in Siebold's beech nuts in the Pacific Ocean side in comparison to the Sea of Japan side, might be caused by the two factors that there are much smaller snow in winter and that mast year of two beech species is not always synchronize each other.
著者
大村 和也 澤田 晴雄 千嶋 武 五十嵐 勇治 斉藤 俊浩 井上 敬浩
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第115回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.P3032, 2004 (Released:2004-03-17)

渓畔林再生実験におけるシカ食害対策○大村和也・澤田晴雄・五十嵐勇治・齋藤俊浩・千嶋武(東大秩父演)、井上敬浩(東工コーセン(株)) _I_.はじめに 東京大学秩父演習林では人工構造物等の布設により失われた渓畔林を再生する実験を行っており2001年に自生種の植栽を試みた。しかし、ニホンジカ(以下、シカという。)の著しい食害を受け植栽木の大部分が枯損する結果となった。そこで、2002年にシカ対策を施したうえで再度植栽を行い、その後の成長経過を調査してきた。本報では2002年から2003年にかけての調査結果にについて報告する。なお、本研究は東工コーセン株式会社(以下、東工コーセンという。)との共同研究として行われた。 _II_.資料および方法埼玉県大滝村に位置する東京大学秩父演習林内の豆焼沢砂防堰堤右岸の土砂堆積地に4区画の植栽地を設けた。この場所に渓畔林の高木層を構成するシオジ、カツラ、ケヤキの植栽と、亜高木層および低木層を構成するバッコヤナギの挿木、フサザクラ、フジウツギの播種を行った。今回行ったシカ対策は植栽木を1本毎に囲うタイプのもので、東工コーセンのネット式のラクトロン幼齢木ネット(以下、ラクトロンという。)、樹皮ガード式のデュポン・ザバーン樹皮ガード(以下、ザバーンという。)とA社チューブ式の3種類を用いた。各区画内とも3種類のシカ対策を行った樹木(シカ対策木)と行わない樹木(対象木)をランダムに配置した。_III_.結果と考察被害レベルの分布によるシカ対策の違いを図-1、2に示す。被害レベルとは、シカが植栽木に与えた食害の状態を示すものであり、以下の4段階に分けた。レベル0は植栽木の芯、枝葉ともに食害無し、レベル1は一部の枝葉に食害を受けている、レベル2は芯食害や折れは無いが全体の枝葉に食害を受けている、レベル3は芯食害ならびに全体の枝葉が著しく食害されている、と定義した。2002年4月の植栽時、シカ対策は標準的な高さの130cm_から_150cm程度のものを用いたが、直後にネット等から露出している部位を食害され、すべてのシカ対策木にレベル1_から_3の被害が発生した。食害された部位の高さを測定したところ平均で143cmであった。そこで2002年6月に樹皮ガード式、A社チューブ式、は180cm程度になるように付け足し、ネット式は200cmのものに交換した。その結果、2002年6月以降シカの食害が減少した。2002年と2003年のシカ対策別の年間平均成長量を表-1に示す。2002年はラクトロン-2.2cm、ザバーン-15.7cm 、A社チューブ式-2.7cmと減少しており当初の食害の影響を受けたものと考えられる。一方、対象木は-52.8cmと大きく食害を受けている。2003年はラクトロン22.7cm、ザバーン-2.4cm 、A社チューブ式3.6cmで成長の回復がみられ、対象木はほとんどが枯死して残った3個体の平均成長量は4.3cmであった。ラクトロンとA社チューブ式は植栽木の梢端まで囲う場合が多いので食害が抑えられる割合が高くなっている。しかし、ラクトロンでは伸長枝がネットの中で丸まったり、A社チューブ式ではチューブ内の梢端枯れが発生した。ザバーンは本来樹皮をガードするものなので、今回のような広葉樹幼齢木のすべて枝葉を囲うのは困難かつ成長に与える影響が懸念されるため、ラクトンやA社チューブ式と比較すると食害が多く発生すると考えられる。_IV_.まとめ無防備な対象木は食害の割合が高くほとんどが枯死した。それに対してラクトロン、ザバーン、A社チューブ式はともに枯死木はなく概ね順調に成長をしている。これらのことからシカ対策は有効であったと言える。謝辞本実験の植栽は森林ボランティア団体「瀬音の森」(せおとのもり)の協力を得た。ここに記して、謝意を表する。
著者
新妻 宏文 石井 元康 小島 敏明 菊池 公美子 鈴木 千晶 小林 智夫 五十嵐 勇彦 真野 浩 上野 義之 小林 光樹 下瀬川 徹 豊田 隆謙
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.346-349, 1999-06-25
被引用文献数
8 6

献血時 (32歳時) にHBVキャリアではないと確認されている症例 (33歳) がHBVの急性感染後にキャリア化した. この症例のウイルスをシークエンスし分子系統樹解析したところgenotype Aであった. 最近, 成人感染後にキャリア化した本邦の1例の検討でgenotypeがAであったと報告された. さらに当科外来で唯一の夫婦ともHBVキャリアの症例では, 夫婦ともにgenotype Aが検出された. 当科外来患者 (宮城県が中心, n=222) のgenotypeの検討ではgenotype Aは3.6%しか存在しなかった. 以上より, genotype Aが急性感染すると成人でもキャリア化することがあると考えられた. 欧米では成人感染後のキャリア化が多く, 本邦では成人感染後のキャリア化は少ないとされている. Genotype Aが欧米で多く本邦で少ないことが, その原因であると考えられた.
著者
堀江 秀樹 伊藤 秀和 一法師 克成 東 敬子 五十嵐 勇
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.425-428, 2004 (Released:2008-03-15)
参考文献数
11
被引用文献数
7 13 3

キュウリの嗜好評価の上で,食感の評価が重要である.そこで,キュウリ果実の果肉部の肉質を評価する方法を提案した.本法では,キュウリ果肉部にプランジャーを貫入させ,プランジャーの先端が果肉中を移動する間の力の変化を記録した.プランジャー貫入中の力の変化を指標化し,CI(crispness index)とした.CIはプランジャーが果肉中を貫入する間にかかる力を2次微分し,その絶対値の和として計算した.CIはコリコリした食感のキュウリ果肉において高い値を示した.多くの果実の食感評価の指標として「硬さ(組織破断時の力)」が広く用いられてきたが,CIは「硬さ」とは異なる特性を表すものと考えられる.従来法による「硬さ」の測定ができれば,新たな装置を準備しなくともCIの測定が可能で,「硬さ」とCIを用いることにより,より精度の高いキュウリ果実の食感評価が可能になるものと期待される.