著者
内田 和宏 今村 裕行 宮本 徳子 城田 知子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.129-134, 1999-06-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
24

本研究では, 各被験者の月経周期の時期を統一し, 運動強度が女性のEPOCの量と持続時間に及ぼす影響について検討した。飲酒・喫煙習慣を有さない女性7名を対象とし, 2周期にわたりVO2maxの40%, 50%, 70%の強度で各30分間の運動と, 運動を行わない非運動実験の計4回の実験を行った。VO2, RER, HRは運動後4時間にわたって測定した。EPOCは運動後17.7±11.1分 (40% VO2max), 23.7±8.1分 (50% VO2max), 41.3±22.6分 (70% VO2max) にみられ, それぞれ1,336±838mL (40% VO2max), 2,011±646mL (50% VO2max), 3,564±1,627mL (70% VO2max) で, 運動強度が高くなるにつれてEPOCの量・持続時間およびEPOCに由来する消費エネルギー量は有意に増加した。また70% VO2maxでは運動後30分までRERの有意な低下がみられたことから, この強度での運動後の脂質代謝の亢進が示唆された。
著者
星野 達二 北村 幸子 大竹 紀子 須賀 真美 岡田 悠子 宮本 和尚 西村 淳一 高岡 亜妃 今村 裕子 山田 曜子 北 正人 今井 幸弘
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.241-247, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
18

最近,病理解剖で診断された先天性トキソプラズマ症胎児死亡の1例を経験したので,その臨床経過を報告する.患者は28歳の初妊婦である.妊娠15週で胎内死亡と診断された.超音波での胎児計測の結果から在胎期間は14週と推定した.胎内死亡の原因究明のため,剖検,胎盤染色体検査,抗リン脂質抗体検査などを行った.剖検の肉眼所見では,体重50g,体長12cmの女児で胎児,胎盤,臍帯に著変を認めなかった.胎盤染色体検査は46,XXで染色体異常は認められなかった.抗リン脂質抗体検査には著変が認められなかった.病理組織学的検査では,胎盤,心臓,副腎,脳にトキソプラズマ嚢子を認め,先天性トキソプラズマ症による胎内死亡と診断された.妊娠12週のトキソプラズマ抗体 IHA(基準値:160未満)は2560.死産後のトキソプラズマ抗体は10240以上.トキソプラズマIgG EIA(基準値:6未満)は5900.トキソプラズマIgM EIA(基準値:0.8未満)は2.3であった.妊娠時の初感染による胎内死亡と考えられた.感染原因としては,妊娠中に3回苺狩りに行ったことと,焼肉店に1回行ったことが可能性として考えられた.厚生労働省の人口動態統計と日本病理学会の剖検輯報から胎内死亡した先天性トキソプラズマ症児の頻度を計算した.1974年から2007年までの34年間の報告された先天性トキソプラズマ症児は5人である.この期間の死産数は1,982,839であり,剖検数は22,827であるので,年間のトキソプラズマ症の死産児数は,5×(この期間の死産数:1,982,839)÷(この期間の剖検数:22,827)÷34≒13人となる.死産児の剖検率は,22,827÷1,982,839≒0.0115(1.15%)となる.産科医としては,先天性トキソプラズマ症に十分な注意を払うことが必要である.〔産婦の進歩62(3):241-247,2010(平成22年8月)〕
著者
今井 智弘 今村 裕之 平 勝秀 浜下 彩
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101923, 2013

【はじめに、目的】 我々は日常の臨床の中で早期離床や廃用症候群予防等を目的にギャッジアップ座位を実施する機会が多い。ギャッジアップによる身体とマット間の圧・剪断力が褥瘡の発生原因となりやすいことは良く知られており、その予防法としてギャッジアップ後に背部をベッドから離し背部の圧・剪断力を開放する背抜きがよく行われる。 しかし、ギャッジアップ時の圧・剪断力に対する背抜きが呼吸機能に及ぼす影響についての報告は少ない。そこで、ギャッジアップ後の背抜きが呼吸機能に与える効果の有無について調査を行った。【方法】 被検者は呼吸器疾患を有さない健常男性10例(年齢26.5±5.1歳、身長174.0±6.8cm、体重67.8±11.1Kg、BMI22.3±3.2)とした。 方法は、まず測定に対する慣れの要因を除くため、あらかじめ練習として坐位にてスパイロメータ(日本光電製、MICROSPIRO HI-205)による呼吸機能検査を数回実施した。次にベッド上背臥位となり、ベッド屈曲基部が被検者の大転子と一致するように被検者のベッド上の位置を設定した。ベッドはアウラ21(パラマウントベッド製)、マットレスはPARACARE(パラマウントベッド製)を使用した。頚部中間位および下肢伸展位にてギャッジアップを60度まで実施し、直後に呼吸機能検査を実施した。その際、体幹をベッドに押し付けるなどの代償動作の有無を目視にて確認した。検査項目は肺活量(VC)、%肺活量(%VC)、1回換気量(TV)、予備呼気量(ERV)、予備吸気量(IRV)、努力性肺活量(FVC)、1秒量(FEV)、1秒率(FEV1.0%)、ピークフロー(PEF)とした。次に背抜きを行った後、呼吸機能検査を実施した。背抜きは下肢・骨盤帯の位置が変わらないように検者が固定した上で介助にて被検者の体幹屈曲を行った。検査間の休憩時間を1分とし、以上の検査を3回測定し平均値を算出した。 背抜き前後における呼吸機能検査の各項目の比較には対応のあるT検定を用いた。有意水準を5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 被検者には本研究の主旨・測定方法を説明し研究への同意を得た。【結果】 VC(ギャッジアップ直後3.93±0.39L、背抜き後4.13±0.46L、P<0.05)、%VC(ギャッジアップ直後91.38±7.29%、背抜き後96.00±8.35%、P<0.05)、PEF(ギャッジアップ直後8.38±1.58L/S、背抜き後9.01±1.66L/S、P<0.05)においてギャッジアップ後に背抜きを行う事により有意な改善を認めた。他の項目に関しては有意な差は認められなかった。【考察】 ギャッジアップ後に背抜きを行うことで、ギャッジアップ直後と比べ肺活量およびピークフローが改善することが示された。ギャッジアップによる呼吸機能低下の原因として、ベッドから上部胸郭背面に向けて圧が高まり上部胸郭背面が固定された上で骨盤帯が前方へずり下がることにより、上部胸郭背面に対して上方への機械的ストレスが加わった結果、吸気時の肋骨の後方回旋運動が制限され、胸郭の拡張が阻害されたこと。また、肩甲骨も同様に上方への機械的ストレスにより拳上位となることから、吸気補助筋である胸鎖乳突筋や僧帽筋、肩甲挙筋が短縮位となり収縮機能が低下したことが考えられる。しかし、ギャッジアップ後の背抜きの実施によりこれらの影響を取り除くことで呼吸機能が改善したと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 今回はギャッジアップ直後の呼吸機能を測定したが、背抜きを行なわない状態が長く続くと時間経過と共に剪断力の増加が予想され、さらに呼吸機能の低下が引き起こされることが推測される。特に胸郭可動性や咳嗽力が低下しやすい高齢者や呼吸器疾患患者においてはさらに影響を受けることが推測され、褥瘡予防という観点も含めてギャッジアップ後には必ず背抜きを行う必要性があると考える。加えて、理学療法士として看護師や家族といった患者のケアに関わる人々へこれらの点を踏まえてギャッジアップ後の背抜きを啓蒙していくべきであると考える。
著者
西川 正一郎 平 勝秀 松田 洋平 藤井 隆文 朽木 友佳子 西廼 健 南口 真 下代 真也 今村 裕之 池内 裕貴子 新立 勇一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】急性期の臨床現場におけるリスク管理は,卒後教育の中でも知識や経験と現場判断が問われるスキルである。我々は,第50回日本理学療法学術大会において,臨床現場における現場対応の教育について「当院理学療法訓練室における急変時対応のシミュレーション訓練の試行」を発表した。今回,続報として新たなシミュレーション教育の結果を得たので,考察を加えて報告する。【方法】当院理学療法課スタッフ57名に対して,昨年同様の緊急時対応に関するアンケート調査とシミュレーション練習(シナリオを3パターン用意し,患者役,セラピスト役に振り分け急変対応手順を行う)に加え,新たなシミュレーション練習を追加した。昨年は,急変対応を行う前提の状況下で訓練を行ったが,今回はスタッフへ事前連絡を行わず当課会議中に1人のスタッフが急変する設定(以下,突発的な状況下)で行った。評価は周辺スタッフに応援を呼ぶまでの時間,Drハート(救急対応応援要請の全館放送の隠語)要請までの時間,搬送用意までの時間を計測した。【結果】アンケート結果に昨年と大きな変化は見られず,シミュレーション練習や急変対応に関する知識向上の勉強会などを行っても,臨床現場では常に急変時に対する不安は強い結果であった。突発的な状況下におけるシミュレーション練習では,異常に気付くまでに22秒であったが,その後は応援要請まで1分20秒,搬送用意まで3分を要した。昨年と同様のシミュレーション練習では応援要請は3パターンとも2秒以内に行い,応援に駆け付けたスタッフがバイタルやストレッチャーの用意など的確に行うことが出来ていた。練習風景は動画にて撮影し,後日参加スタッフにフィートバックと対応行動に関する意見交換と室内における物品や施設設備のレイアウトを再考した。【結論】当院では昨年よりシミュレーション練習を行い,臨床の場における急変場面が実施から1年で3度遭遇したが,当該スタッフは異常に気付いた時点で周りに応援を呼ぶ行動が行え,スタッフ全体も協力する体制や配慮が行える環境であった。シミュレーション練習ではアクシデントに遭遇しなかったスタッフもいたが,教育心理においてはモデリングが有効であり類似した事象に対する,模倣,同一視,内在化,環境学習などが習得となる。今回の突発的な状況下の練習結果は,昨年行われた練習を観察学習した者と直接経験した者の両者とも,経験における選択的強化による学習成果が得られていると考えられる。平成27年10月より施行されている医療事故調査制度では,診療の記録や実施内容の調査報告が必要であり,急変時のバイタルや意識レベルなど医学的状況の把握の正確性が求められる。我々理学療法士のリスク管理に対する知識と経験は社会的責任であり,今回の研究,研修内容は今後の理学療法教育に必要な知識であると考えられる。
著者
村岡 康博 木原 俊之 安河内 春彦 陶山 三千也 高野 裕光 今村 裕行 志波 直人 田川 善彦
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.37-45, 2001-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
44

本研究は, 柔道の競技力に繋がる平衡機能に, 咬合状態がどの様に関与しているかを知るための基礎的資料を得ることを目的とし, 日本代表柔道選手を対象に, 重心動揺と咬合状態との関連性について検討した.1. 咬合状態咬合面積, 咬合力及び咬合バランスの値には, 個人差が大きかった.2. 咬合状態と重心動揺との相関1) 咬合面積と重心動揺主観的に強い噛み合わせでは, 総軌跡長, 単位軌跡長に相関が見られ, 安静状態での噛み合わせでは, 外周面積, 矩形面積及び実効値面積に相関が見られた.2) 咬合力・咬合バランスと重心動揺噛み合わせに関係なく外周面積, 矩形面積及び実効値面積に相関が見られた.3. 噛み合わせ条件の違いによる重心動揺の差の検定総軌跡長と外周面積では, 統計的に有意な差を示した.以上の結果により, 咬合状態と重心動揺には密接な関係が有ることが示唆された. また, 主観的に強いクレンチングは, 重心動揺の成績を向上させることが示された.