- 著者
-
伊東 秀之
- 出版者
- 岡山大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
高齢化社会の進行や医療費の増加などから,機能性食品などを利用したセルフメディケーションに取り組む人々が増えている.しかし,その機能性に反して,過剰摂取や医薬品との相互作用による副作用も出現している.本研究では,機能性成分の生体内挙動に関して,クランベリー成分およびエラジタンニンの尿中代謝物の検索,さらにクランベリーとワルファリンの食品-医薬品間相互作用の疑いが持たれていることから,その相互作用の解明の一環として,クランベリー成分の薬物代謝酵素に与える影響についても検討した.クランベリージュースをボランティアに飲用後,採取した尿を分析し,ジュース中には存在しない成分が代謝物として排泄されていることを確認し.中にはProanthocyanidin A-2のモノメチル化体など,新規代謝物の存在も明らかにした.またクランベリーの代謝物の中には,バイオフィルム形成抑制を示唆する低分子代謝物の存在も見出した.エラジタンニンをラットに経口投与後の尿中代謝物として,7種の新規代謝物を単離し,各種スペクトルデータの解析結果から,その化学構造を明らかにした.その代謝物の中には,抗酸化活性が顕著なエラジタンニンと同等の活性を有する代謝物も存在することを明らかにした.クランベリー成分の薬物代謝酵素(CYP2C9, CYP3A4)阻害活性をin vitro実験系にて評価した結果,高分子ポリフェノール画分が阻害活性を示し,また,in vivo系実験においてもワルファリンの体内からの消失を遅延させることを示唆するデータが得られ,クランベリー成分がワルファリンの主要代謝酵素を阻害する可能性が示された.本研究成果から,生体内代謝物が機能性本体として作用していることが十分考えられることから,機能性成分の評価には,生体内挙動の知見を考慮しながら遂行することが重要であることが示された.