著者
伊東 秀之
出版者
岡山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

抗発癌プロモーターのスクリーニング試験のうち、protein kinase C(PKC)の活性阻害試験において、緑茶の主ポリフェノール成分の(-)-epigallocatechin gallate(EGCG)が、顕著な阻害作用を示すことを当研究室と国立がんセンターとの共同研究により明らかにしている。一方、五倍子の主成分であるpentagalloylglucoseにもEGCGと同様に抗発癌プロモーター作用が認められており、その作用はPKC阻害作用によるものであることが予想されることから、PKC阻害活性を指標としてより有効な抗発癌プロモーター活性物質の探索を行った。まず、タンニンや関連ポリフェノールを含有する植物の多いトウダイグサ科、バラ科、ツバキ科の他、キク科、アヤメ科の諸植物のエキスについて、PKC阻害活性のスクリーニングを行った。その結果、アヤメ科植物のジャーマンアイリス(Iris germanica)の根のエキスに比較的強い阻害活性を認めたので、PKC阻害活性を指標としてその活性成分の単離、構造解明を行った。本植物の乾燥根をメタノールで冷浸した後、n-ヘキサン、酢酸エチル、n-ブタノールで順次抽出して、分画を行った。各エキスのPKC活性試験の結果、強い活性を認めた酢酸エチルエキスからphenol類、isoflavonoidおよびiridal型triterpenoidを単離した。単離した各化合物についてPKC活性試験を行った結果、isoflavonoidに阻害活性を認めるものがあり、逆にiridal型triterpenoidのなかには活性促進作用を認めるものもあった。このように同植物から、相反する作用を示す化合物を単離したことから、それら化合物の共存関係を調査するとともにさらに活性成分の単離、構造解明を進めている。
著者
野崎 阿季子 高橋 栄造 岡本 敬の介 伊東 秀之 波多野 力
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.130, no.6, pp.895-902, 2010 (Released:2010-06-01)
参考文献数
9
被引用文献数
3 5

Candidiasis is a common opportunistic fungal infection that responds well to amphotericin B (AMPH) treatment. However, AMPH often causes adverse effects such as kidney injury and hypokalemia. Because some essential oils have been reported to have antifungal effects, we investigated the antifungal activity of various essential oils and their major constituents against Candida spp. Most essential oils examined in this study showed antifungal activity, and several enhanced the antifungal effect of AMPH. Clove oil in particular, and its major constituent eugenol, had potent effects. These findings suggest that combining certain essential oils or their constituents with AMPH may be useful for suppressing the adverse effects of AMPH treatment.
著者
山田 直史 中桐 実奈美 山脇 香菜 新實 祐理 伊東 秀之 宗歳 日光里 山崎 勤 中西 徹 中村 宜督
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.11, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】ハーブとして料理やアロマオイルに利用されるローズマリーは,古くから薬草として含有成分の機能が利用されていた。有名な伝承として,手足のしびれを患っているハンガリーの王妃に,修道士らが治療薬としてローズマリーをアルコールに漬け込んだものを勧めたところ、王妃はみるみる回復されたうえ、みるみる若返り、70歳という年齢で20代のポーランド王に求婚されたというものがある。本研究では,ローズマリーの抽出物(溶媒:水またはエタノール)を用いて,抗酸化活性,メラニン生成阻害効果,抗糖化活性およびがん細胞増殖抑制効果について測定した。【方法】ローズマリー葉を水またはエタノールに20分漬け抽出液とした。抗酸化活性はDPPHラジカル捕捉活性法で,メラニン生成阻害効果はドーパとマッシュルーム由来チロシナーゼを用いて,抗糖化活性はグルコースとアルブミンの糖化反応によるAGEs生成量測定で,がん細胞はMCF-7(乳がん細胞株),MDA-231(乳がん細胞株),SW-982(滑膜肉腫株)を用いた。【結果】エタノール抽出物では,すべてで高い機能性が確認された。このような機能性の影響から,伝承のような若返りの言い伝えが残っているのではないかと憶測される。
著者
伊東 秀之
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

高齢化社会の進行や医療費の増加などから,機能性食品などを利用したセルフメディケーションに取り組む人々が増えている.しかし,その機能性に反して,過剰摂取や医薬品との相互作用による副作用も出現している.本研究では,機能性成分の生体内挙動に関して,クランベリー成分およびエラジタンニンの尿中代謝物の検索,さらにクランベリーとワルファリンの食品-医薬品間相互作用の疑いが持たれていることから,その相互作用の解明の一環として,クランベリー成分の薬物代謝酵素に与える影響についても検討した.クランベリージュースをボランティアに飲用後,採取した尿を分析し,ジュース中には存在しない成分が代謝物として排泄されていることを確認し.中にはProanthocyanidin A-2のモノメチル化体など,新規代謝物の存在も明らかにした.またクランベリーの代謝物の中には,バイオフィルム形成抑制を示唆する低分子代謝物の存在も見出した.エラジタンニンをラットに経口投与後の尿中代謝物として,7種の新規代謝物を単離し,各種スペクトルデータの解析結果から,その化学構造を明らかにした.その代謝物の中には,抗酸化活性が顕著なエラジタンニンと同等の活性を有する代謝物も存在することを明らかにした.クランベリー成分の薬物代謝酵素(CYP2C9, CYP3A4)阻害活性をin vitro実験系にて評価した結果,高分子ポリフェノール画分が阻害活性を示し,また,in vivo系実験においてもワルファリンの体内からの消失を遅延させることを示唆するデータが得られ,クランベリー成分がワルファリンの主要代謝酵素を阻害する可能性が示された.本研究成果から,生体内代謝物が機能性本体として作用していることが十分考えられることから,機能性成分の評価には,生体内挙動の知見を考慮しながら遂行することが重要であることが示された.
著者
伊東 秀之 三宅 陽子 吉田 隆志
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.1260-1262, 1995
被引用文献数
32

Three new piscicidal triterpenens named irisgermanicals A, B and C along with seven known iridal-type triterpenes including iripallidal and iriflorental were isolated from the bark of Iris germanica rhizome, upon bioassay-guided fractionation using the Medaka (killie-fish; Oryzias latipes), and their bicyclic structures were elucidated based on the spectral analyses. Irisgermanicals B and C were characterized as geometrical iriflorental and iripallidal isomers, respectively, concerning the α, β-unsaturated aldehyde moiety. The piscicidal activity was observed for bicyclic iridals, among which iriflorental exhibited most potent activity.
著者
吉田 隆志 波多野 力 伊東 秀之
出版者
社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.500-507, 2004-05-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
24
被引用文献数
5 14

Large-size secondary metabolites with dimeric-oligomeric and/or dendrine-type structure from higher plants are regarded as natural nanomolecules which are constructed in a bottom-up pathway from small molecules under biological condition. Among them are polyphenols classified as tannins which have large molecular weights ranging from 500 to 4000, and strong affinity to proteins, alkaloids and heavy metals to form complex molecules (precipitates). They constitute two major groups : one is condensed tannins (proantocyanidins), which are composed of flavan-3-ol units linked through C-C bond, and the other is hydrolyzable tannins, which are principally multiple esters of D-glucose with gallic acid and its oxidative metabolites. This paper reviews the diverse structural characteristics of both tannins, especially ellagitannin oligomers up to pentamers, and examples of their biological activities. Formation of insoluble and soluble complex between tannins and proteins are also described.
著者
天倉 吉章 近藤 一成 穐山 浩 伊東 秀之 波多野 力 吉田 隆志 米谷 民雄
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.178-181, 2006-08-25
被引用文献数
1 11

キシメジ科スギヒラタケの化学成分に関する研究の一環として,本キノコ中のUV検出成分についてHPLC分析を行った.UV検出による主要ピークの1つを単離したところ,各種分光法の結果に基づき,共役トリエン構造を有するα-エレオステアリン酸であると同定した.α-エレオステアリン酸は,試験した他の8種の食用キノコからは検出されなかったため,スギヒラタケ特有の脂肪酸であることが示唆された.またスギヒラタケおよび他の食用キノコ中の遊離長鎖脂肪酸について,2-ニトロフェニルヒドラジドへ変換後,HPLC分析した.スギヒラタケの主要脂肪酸としてオレイン酸が検出され,α-エレオステアリン酸のほか,リノール酸,パルミチン酸,ステアリン酸などの飽和長鎖脂肪酸が検出された.
著者
天倉 吉章 近藤 一成 穐山 浩 伊東 秀之 波多野 力 吉田 隆志 米谷 民雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.178-181, 2006-08-25 (Released:2008-08-04)
参考文献数
18
被引用文献数
10 11

キシメジ科スギヒラタケの化学成分に関する研究の一環として,本キノコ中のUV検出成分についてHPLC分析を行った.UV検出による主要ピークの1つを単離したところ,各種分光法の結果に基づき,共役トリエン構造を有するα-エレオステアリン酸であると同定した.α-エレオステアリン酸は,試験した他の8種の食用キノコからは検出されなかったため,スギヒラタケ特有の脂肪酸であることが示唆された.またスギヒラタケおよび他の食用キノコ中の遊離長鎖脂肪酸について,2-ニトロフェニルヒドラジドへ変換後,HPLC分析した.スギヒラタケの主要脂肪酸としてオレイン酸が検出され,α-エレオステアリン酸のほか,リノール酸,パルミチン酸,ステアリン酸などの飽和長鎖脂肪酸が検出された.