著者
市橋 則明 吉田 正樹 篠原 英記 伊藤 浩充
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.487-490, 1992-08-01
被引用文献数
10

健常女性8名を対象に, スクワット動作時の下肢筋(内側広筋, 大腿直筋, 大腿二頭筋, 腓腹筋)の筋活動を測定し, スクワットが各筋に与える影響を検討した。その結果, 30度での片脚スクワットで腓腹筋が36.0%と他の筋に比較して大きな% IEMGを示したが, 他の3筋は10〜20%とほぼ同じ値を示していた。60度での片脚スクワットでは, 4つの筋の有意な差はみられなかった。また, 最大下肢伸展動作時の% IEMGは, 内側広筋と大腿直筋が他の筋に比較し大きな値を示した。さらに, 30度における最大下肢伸展においては内側広筋が大腿直筋よりも有意に大きな値を示した。closed kineic chainでの訓練においては, 各筋の活動状態を知ることが重要である。
著者
井上 拓也 伊藤 浩充 池添 冬芽 小林 紗織 傍島 崇史 市橋 則明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.617-622, 2010-07-15

要旨:本研究の目的は,ブリッジ運動における足部の高さと頭部の位置が体幹・股関節伸展筋の筋活動に及ぼす影響について検討することである.対象は健常成人30名とした.脊柱起立筋胸椎部,脊柱起立筋腰椎部,大殿筋,大腿二頭筋の筋活動量,ならびにこれら主動筋間の筋活動比を算出した.ブリッジ運動は,頭部を挙上させない通常の場合と,頭部を挙上させて行う場合の2つの条件下で,足部の高さを床面から-20cm,0cm,20cmと変化させた.その結果,足部を高くすることで脊柱起立筋胸椎部・腰椎部の筋活動量は増加した.一方,足部を低くすることで大殿筋の筋活動量は増加し,脊柱起立筋腰椎部と大腿二頭筋に対する大殿筋の筋活動比はともに高まった.また,頭部を挙上させることで大殿筋の筋活動量は増加し,脊柱起立筋に対する大殿筋の筋活動比および脊柱起立筋胸椎部に対する腰椎部の筋活動比も高まった.本研究の結果から,ブリッジ運動において足部高を変化させ,あるいは頭部を挙上させることで,主動筋群内のより選択的なトレーニングが可能であることが示唆された.
著者
杉山 幸一 伊藤 浩充 木田 晃弘 大久保 吏司 瀧口 耕平 黒田 良祐 水野 清典 黒坂 昌弘
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1262, 2007 (Released:2007-05-09)

【はじめに】膝屈曲筋である大腿二頭筋は下腿の外旋、半膜様筋と半腱様筋は下腿の内旋作用を有している。これら3筋はそれぞれ2関節筋であるが、大腿二頭筋と半膜様筋は羽状筋であり、半腱様筋(以下ST)は紡錘筋であるように機能解剖学的に異なっている。本研究では、下腿回旋によって屈曲トルクとSTの収縮動態に影響を及ぼすのかどうかを明らかにすることを目的とした。【対象と方法】対象は膝周囲に外傷および障害の経験を有さない健常な成人8名(男性6名、女性2名、平均年齢21.3±0.89歳)16肢とした。膝関節等尺性屈曲トルクを腹臥位で測定した。膝屈曲角度は30度、60度、90度とし、下腿肢位を最大内旋位と最大外旋位で行った。収縮時間は20秒、間隔は40秒とし、最大トルク値を記録した。同時に超音波画像診断装置を使用して、ST腱画の最大水平移動量を測定した。測定値については、腱画移動量は大腿長で除して腱画移動率(以下SR)を求め、屈曲トルクを60度および90度の各トルクを30度の屈曲トルクで除してトルク率(以下TR)を求めた。統計処理にはJMP5.1Jを使用し、反復測定2元配置分散分析と対応のあるt検定を用いた。また、SRとTRとの関連についてはPearsonの相関係数を求めた。統計学的有意水準は5%未満とした。なお、ヘルシンキ宣言に基づき、被検者には書面ならびに口頭にて研究協力への同意を得た上で研究を実施した。【結果】ST腱の収縮動態からは、膝屈曲角度増加によるSRの有意な増加を認め、また30度と60度、30度と90度との間で有意差を認めた。さらに、SRは全ての角度において内旋位に比して外旋位で有意に低値を示した。一方、膝屈曲トルクは膝屈曲角度増加と共に有意な減少を示したが、下腿の内旋位と外旋位との比較では有意差はなかった。一方、TRについては、90度において内旋位と比較して外旋位で有意に高値を示した。SRとTRとの相関関係については、下腿内旋位では30度SRと90度TRとの間、外旋位では全SRと90度TRとの間に有意な負の相関関係が認められた。(r=-0.55~-0.67)【考察】膝角度の増加によりSRが増加したことと、SRとTRとの間に相関関係が認められ外旋位で顕著であったことより、STの静止張力の低下が深屈曲位でのトルク低下に影響していると考えられた。しかも、下腿内旋位と外旋位でのSR差はこの傾向が顕著に表れたものと考えられた。一方、SRのこのような動態の下腿回旋位の違いによる膝屈曲トルクへの影響は少なかったと考えられた。膝屈曲角度90度においてTRが下腿内旋位よりも外旋位の方が有意な高値を示したことは大腿二頭筋の活動優位性か、もしくは下腿外旋によるST張力増大を伴ったトルク増加が考えられるが、これらのことについては更なる検討が必要である。
著者
市橋 則明 伊藤 浩充 吉田 正樹 篠原 英記 武富 由雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.388-392, 1992-07-10 (Released:2018-10-25)

健常女性30名を対象に大腿四頭筋とハムストリングスの求心性収縮と遠心性収縮による筋力と角速度の変化の関係を検討した。その結果,求心性収縮においては,大腿四頭筋とハムストリングス共に角速度が増加するに従い有意にピークトルクは低下した。遠心性収縮においては,大腿四頭筋のピークトルクは角速度の変化の影響を受けなかったが,ハムストリングスのピークトルクは角速度が増加するとともに有意に増加した。また,H/Q比は求心性収縮においては,角速度が増加するに従い有意に大きくなったが,遠心性収縮においては,有意な変化を示さなかった。E/C比は角速度が増加するに従い両筋共に有意に大きくなった。
著者
伊藤 浩充 瀧口 耕平 小野 くみ子 松本 慶吾
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cd0833, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 足関節の捻挫は、スポーツ外傷の中で最も多い外傷の一つである。サッカー選手にとって足部・足関節の外傷は、スポーツ選手としての選手生命に大きく影響する。しかしながら、本外傷はスポーツ選手や指導者には比較的軽視される傾向にあり、また、本外傷の発生因子については未だ十分解明されていないため、予防に関しても十分な対策がとれていないのが現状である。そこで、本研究では、高校サッカー選手の足関節捻挫の発生要因を明らかにすることを目的とした。【対象と方法】 対象は、高校男子サッカー部員71名である。対象者の選択基準として評価時に四肢関節に痛みなどの急性症状および著しい筋力低下の無い者とした。方法は、平成23年3月12日から3月20日までの間にフィジカルチェックを実施した。調査項目は、問診にてボールをける時の利き足と外傷の既往歴を聴取した。次に、関節可動域と筋硬度を計測した。関節可動域は、股関節の外転・内旋・外旋・屈曲・伸展の可動域、膝関節屈曲・伸展の可動域、足関節背屈可動域、体幹の前屈・後屈・側屈の可動域を傾斜計(MITSUTOMO製)および紐付き分度器とメジャーを用いて測定した。筋硬度は、大腿筋膜張筋・中殿筋・長内転筋・下腿三頭筋を筋弾性計PEK-1(株式会社井元製作所)を用いて測定した。また、足部アーチをFeiss線により判定し、後足部の内外反肢位の判別も記録した。フィジカルチェック後3か月間の外傷発生調査を週2回の頻度で実施した。そして、足関節の内反捻挫、外反捻挫、底屈捻挫を受傷した者(A群)としなかった者(B群)とに分類し、フィジカルチェック時のデータを比較分析した。統計学的分析には、JMP ver 6.0を用い、マンホイットニーU検定、分散分析、カイ二乗検定を行った。有意水準は危険率5%未満として判定した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には、ヘルシンキ宣言に基づき、本研究の実施に際して、甲南女子大学研究倫理委員会の審査ならびに承認を得た後、対象者およびサッカー部所属の監督とコーチには、事前にフィジカルチェックの目的と内容、実施計画を文書及び口頭により説明し、同意を得た。【結果】 足関節の捻挫を受傷したA群は14名で、内反捻挫7名、外反捻挫4名、底屈捻挫3名、B群は57名であった。A群においてフィジカルチェック時の測定項目を受傷下肢と非受傷下肢との間で比較すると、股関節外旋可動域は受傷下肢の方が有意に小さく(A群40度:B群45度、p<0.046)、股関節内旋可動域は受傷下肢の方が有意に大きかった(A群40度:B群36度、p<0.038)。また、股関節内旋と外旋の可動域の差をみると、非受傷下肢よりも受傷下肢の方が負の値を示して有意に小さく(A群-1度:B群9度、p<0.016)、内旋可動性優位であった。さらに、股関節外旋可動域の左右差についてA群とB群を比較すると、A群のうち利き足を受傷した者は、股関節外旋可動域の左右差がB群に比べて有意に大きかった(A群14度:B群0度、p<0.0345)。つまり、受傷下肢が利き足の場合は外旋可動域が相対的に小さかった。【考察】 過去の我々の調査では、サッカーによる足関節の捻挫は、走行時の方向転換、ジャンプの着地、スライディング、相手とのボールの同時キック時などでよく発生していた。足関節の捻挫は、足部が地面に接地する時の身体重心による外力や相手から受ける外部外力が距骨下関節軸より離れているほど発生しやすい。つまり、股関節にかかる荷重ベクトルが距骨下関節軸から遠いか近いかによって発生率が左右されると考えられる。本研究では、股関節内旋可動性優位になりやすい者ほど足関節の捻挫を生じやすいことが明らかとなった。これは、股関節内旋位になった場合には身体重心が距骨下関節軸より外側偏倚傾向を示すことから内反捻挫を誘発しやすくなることが推測される。また、外旋可動域が相対的に狭いことから下腿外旋で代償し外反捻挫を受傷することが推測される。したがって、股関節の内外旋方向の可動性の左右差が大きすぎたり、股関節の内外旋差の絶対値が大きいと足関節の捻挫が生じやすくなると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 足関節捻挫の発生要因は様々であるが、足関節だけでなく股関節にも発生要因が存在することが明らかとなった。股関節の内外旋可動域の左右差と股関節内外旋差を少なくするようにコンディショニングをし、動作練習をすることにより運動時にかかる足関節への偏った負荷が軽減でき、足関節捻挫発症の予防につながると考えられる。そして、スポーツによる足関節捻挫の発生予防プログラムの効果検証にも役立てることができる。
著者
松本 慶吾 伊藤 浩充 瀧口 耕平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】サッカーは世界中で人気の高いスポーツの一つである。近年,日本でも人気の上昇と共に幼少期からの人口が増えてきている。そのため,幼少期における外傷も徐々に増加傾向である。さらに,近年の日本の若年層の運動能力低下も指摘されており,スポーツ活動に伴う更なる外傷発生率増加が危惧される。サッカーは下肢でボールを扱う球技であることから,発育期の運動発達が下肢に偏ってきていることが危惧される。従来より,サッカーでは下肢の外傷発生が多いと報告されているが,上肢に関する外傷の発生率については報告が少ない。我々は高校サッカー選手を対象にスポーツ外傷を予防するための教育の一貫として,毎年フィジカルチェックを実施すると共に,入学時の過去の外傷歴も調査してきている。そこで,本研究は高校入学時のサッカー選手が有する上肢外傷既往歴の調査から,青年前期(U-15)における上肢外傷の特徴を明らかにすることを目的とした。【対象と方法】対象は1998年~2013年の16年間に某高校サッカー部に入部した部員419名である。これらの対象者に対し,毎年入学時にフィジカルチェックを行い,その際,自己記入式質問紙による過去の外傷歴を調査した。そして,調査した外傷歴の内,上肢の外傷歴のある人数および上肢外傷歴が一回の者と複数回の者を集計し,また,上肢外傷の経年変化を調べた。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,フィジカルチェックの実施に際して,対象者およびサッカー部所属の監督とコーチには,事前にその目的と内容および実施計画を文書及び口頭で説明し,同意を得た。【結果】対象者のサッカー経験年数は平均8.4±1.6年(3年~12年)であった。全外傷数は1512件あり,一人当たりにして平均4件であった。部位別に見ると,下肢は1025件(68%),体幹は247件(16%),上肢は245件(16%)であった。上肢外傷既往歴をもつ者は170名41%で,そのうち,受傷歴が一回の者は118名(28%),複数回の者は52名(12%)であった。上肢外傷の内訳は,骨折が143名(34%)で206件と多く,捻挫が14名(3%)で16件,突き指が13名(3%)で16件であった。また,上肢外傷の内,骨折は225名(54%)で206件であり,その内上腕・前腕の骨折は71名(17%)で80件,手指の骨折は101名(24%)で126件であった。上肢外傷の経年変化を見てみると,1998年~2000年までは25~29%(平均27%),2001年~2005年までは30~56%(平均43%),2006年~2010年までは32~58%(平均44%),2011年~2013年までは38~56%(平均46%)であった。【考察】Robertらは,1998年から2003年の5年間におけるアメリカの2~18歳年齢のサッカーによる外傷を調査したところ,下肢は46%,体幹は23%,上肢は31%と報告している。特に5~14歳で上肢外傷は37.5%と最も多く,本調査結果においても41%と同様の結果となった。本調査の上肢外傷の内訳では骨折の割合が多かった。Gregoryらは,サッカーによる骨折は下肢よりも上肢の方が多いと報告している。そして,サッカー競技中の上肢骨折の受傷機転の大半が転倒であると報告している。また,Lawsonもスポーツによる上肢骨折の最も多い原因は,転倒であると述べている。我々の調査結果では,上肢外傷は全体の16%で,そのうちの約8割以上が骨折であった。さらに,本調査結果では経年的な動向として,上肢外傷率は増加傾向にあった。Gregoryらは,サッカーにおける上肢骨折は以前よりも頻繁に起こるようになったと報告している。幼少期の身体が未発達な状態でサッカーを継続するに際して,接触などの外乱ストレスやバランス不良などによる転倒の機会も増える為,上肢外傷のリスクの要因の同定と予防対策が必要である。そのためには,幼少期からのサッカー選手育成にはサッカー特有のスキルや身体能力を向上させるだけでなく,スポーツに伴う転倒に対する上肢骨折の予防にも着目して,運動能力の向上を図ることが重要であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】近年の日本における若年層の運動能力低下は,サッカー選手の育成年代にも潜在しており,転倒率の増加とそれに伴う上肢外傷が増加傾向にあることが明らかとなった。サッカーは今後も競技人口は増加していくと推測されるが,幼少期からの外傷予防対策を教育の一貫の中で多角的に考えていく必要がある。そのためにも転倒による上肢外傷の受傷機転と,その発生要因を身体的要素から分析し,予防につなげていく必要がある。