- 著者
-
伊賀 聖屋
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.14, pp.997-1009, 2004-12-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 22
本稿は,現在の日本における加工原料米の流通体系の実態を,米酢加工業を事例として,フードシステムの観点から分析する.一般に,新食糧法下の現在,大手の米加工企業を中心にミニマム・アクセス米(MA米)への依存度の高まりが指摘される.このような状況下で,米酢加工業ではどのような加工原料米の流通体系が構築されているのか.とりわけ,大手企業と比べた場合,地場企業の原料調達・加工・販売のシステムには,どのような特徴が認められるかという点に着目した.その結果,以下のことが明らかになった.(1)地場企業は,コスト削減を図る大手企業とは異なり,新食糧法の施行以後も従来の原料調達の方式を変更していない.加工原料米の集荷圏は狭小であるとともに,米酢の加工工場は原料調達地域に立地しており,農村内部に一つのサブシステムが構築されている.(2)地場企業は,大手企業と同様に製品の流通圏を全国に拡大しているが,米酢の伝統的生産設備・手法を維持し,自社の製品に原料産地訴求・安全訴求という特質を持たせることによりプレミアムフード市場への参入を図っている.