著者
入江 正洋
出版者
九州大学健康科学編集委員会
雑誌
健康科学 = Journal of health science (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.23-35, 2015

Occupational stress has increased in Japanese workers because of changes in working environments and systems, such as organizational restructuring, or decreased consideration for others in the workplace. Workplace bullying, mobbing and/or harassment have received considerable attention in Japan in recent years. Particularly, workplace harassment, including so-called "power harassment" in Japanese, is a serious occupational problem for workers, especially for those who are in a weak position. The concept of power harassment is extended in consideration of complicated and increased number of sufferers. In 2011, Japan Ministry of Health, Labor, and Welfare sponsored a round-table meeting to investigate the current state of power harassment at work and discuss how to cope with the situation. Although a growing body of literatures have demonstrated the impact of workplace bullying, mobbing and sexual harassment on workers' health and job outcomes, little has done regarding power harassment. It is required to develop effective techniques and tools for preventing and managing workplace power harassment. This review overviews Japanese power harassment in view of current state, several kinds of impairments, the Workers' Compensation Law for Job Induced Mental Disorders, and strategy for preventing power harassment.
著者
三島 徳雄 藤井 潤 入江 正洋 久保田 進也 永田 頌史
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-9, 1995-03-01
被引用文献数
1

「心とからだの健康づくり(THP)」における健康測定の項目にストレス度チェックの質問項目(THP-SC)が含まれているが,十分に活用されているとは言い難い。そこで,GHQとの比較により有用性を検討した。THP-SCと60項目版GHQを含む質問票を作成し,某製造業事務系従業員261名(全員男性,平均43.7歳)を対象に検討した。GHQはGoldberg法により判定し,THP-SCでは全21項目中ストレス傾向を示す回答数を求め,度数分布の75パーセント点および90パーセント点を含む幾つかの仮の判定基準を設定した。GHQでカットオフ点以上の回答者は60項目版では有効回答243名中48名,12項目版では256名中77名であった。THP-SCの回答数は平均5.67±3.19であった。GHQとの比較では,THP-SCのA項目に含まれる質問で有意の関連を示した項目が多かった。GHQとの比較の結果,THP-SCのA項目単独では4以上,全項目では7以上がストレス状態を示す指標になると考えられた。
著者
入江 正洋 山下 高範 久保 千春 木原 廣美 中野 博 川村 治子 十川 博 手嶋 秀毅 中川 哲也
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.930-934, 1992-05-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
21
被引用文献数
1

症例は19歳の女性. 気管支喘息として約1年10ヵ月, ステロイド剤を含む治療を受けたが, 改善しないため当科に入院した. 患者はアレルギー疾患の家族歴を有し, アストグラフでも気道過敏性があるように思われたものの, 喘鳴出現時に1秒量やPaO2の低下はなく, 気管支拡張剤の吸入でも呼吸機能に変化はみられず, 喘息は否定的であった. また, 患者の喘鳴は喉頭部で最も著明に聴取され, 多くは吸気性の呼吸困難を伴い, フローボリューム曲線は, 吸気時の流速が低下していた. さらに, Laryngos-copy では, 声帯の内転位固定と後方の僅かな間隙が認められ, 以上の所見より Vocal cord dysfunction と診断された. 本症例の喘鳴は, 不幸な生育歴を背景とする転換反応に起因するものと考えられ, 心身相関の理解やセルフコントロールの習得を中心とする心身医学的治療によって, 薬剤不要な状態にまで改善した.
著者
入江 正洋
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.385-396, 2011-05-01

近年,組織の再編や人員削減,職場での人間関係の希薄化などによって,労働者のメンタルヘルスが概して悪化している.厚生労働省の調査によれば,約6割の労働者が仕事でストレスを感じており,職場の人間関係の問題,仕事の質の問題,仕事の量の問題などが主な要因である.約8%の事業場で,メンタルヘルスに関する理由で連続1ヵ月以上休業あるいは退職した労働者がみられる.職業性ストレスは,メンタルヘルスだけでなく,身体や仕事のパフォーマンスなどにも悪影響を及ぼし,過労死などの脳・心臓疾患や精神障害の労働災害・民事訴訟の事例が増加している.なかでも,職場でのいじめや嫌がらせが注目される.このような問題は,心療内科医や精神科医にとって重要であり,健康障害などを未然に防ぐためには,心身両面から早期にストレスを把握することが望まれる.その一手段として,唾液アミラーゼ活性について検討しているが,個人差が大きく,個体差も少なくないことが問題である.