著者
鷲田 和夫 加藤 有希子 川又 純 高橋 良輔
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.147-149, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
7

症例は58歳,男性.パーキンソン病発症14年目に寡動が増悪したため,非麦角系ドーパミンアゴニストであるプラミペキソールの投与を開始したところ深刻な病的賭博症状が出現した.薬剤変更により病的賭博行為は可逆的かつ速やかに消失したが,社会経済的に不可逆的な損害が生じた.病的賭博の発症理由として大脳辺縁系に位置するドーパミンD3受容体へのドーパミンアゴニストによる特異的刺激が関与していると考えられている.
著者
石井 康子 梅原 薫 野毛 一郎 加藤 有希
出版者
静岡県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

吃逆の治療に使われる柿蔕(Kaki Calyx)のラット脳脊髄液中神経伝達物質に及ぼす影響を検討したところ、GABAの変動は観察されなかったが、アスパラギン酸やグリシン、更に、ドパミンの代謝物であるDOPACやHVA濃度に影響を及ぼすことが示唆された。今後、これらを指標として、日本産の柿の蔕から有効成分の探索を行う予定である。また、柿蔕液の治療効果を処方の異なる施設で後ろ向きに調査したところ、化学療法の施行により発症する吃逆の治療に、高濃度の柿蔕液の服用が適している可能性が示唆されたため、前向き調査によって確認する予定である。
著者
加藤 有希子
出版者
三田哲學會
雑誌
哲学 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.132, pp.281-307, 2014-03

Daily life interests, such as the desire for health and happiness, have been excluded from major avant-garde art since the 18th century. As Peter Bürger properly stated, if art is identified with daily life practices, the sanctity of art would be spoiled; however, if art completely avoids life's interests, art can be suffocating. After World War II, some movements in deconstructing art—the 1960s counterculture, Art Therapy beginning in the mid-1940s and actually flourishing from the 1990s onwards, and De-Art in the 2000s led by Kumakura Takaaki—have tried to fuse art and life, although their attempts have not always been successful. In a sense, such a synthesis of art and life is one of the main themes of post-War art history.As one pioneer in avant-gardes, Neo-Impressionists have tried to synthesize art and life. This article focuses on Neo-Impressionism in the late 19th century. Having detailed the fact that Neo-Impressionists practiced color therapy, homeopathy, and hydro therapy, the study clarifies that their hygienic practices were firmly related to their theory of painting. Themetizing the concept of "equilibrium"and the divergent character of color as a medium, I reveal how the Neo-Impressionists were exceptionally able to integrate art and life.特集 : 論集 美学・芸術学 : 美・芸術・感性をめぐる知のスパイラル(旋回)
著者
加藤 有希子
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

芸術と生活の融合に関する戦後史研究ということで、平成29年度は海外の芸術祭の調査を行った。具体的には夏にドイツのミュンスター彫刻プロジェクト、カッセルのドクメンタ14、イタリアのヴェネツィア・ビエンナーレへの現地調査をした。そしてその結果は、論文「芸術祭の時代――政治か経済か、変わる芸術の役割」にまとめた。これを慶應義塾大学美学美術史専攻の三田芸術学会の学会誌『芸術学』に平成29年10月に投稿した。翌3月に査読が通り、現在入稿済みで、出版を待っている段階である。この論文では、経済的なモチベーションを基軸にする日本の芸術祭と、政治的なモチベーションを基軸にするヨーロッパの芸術祭との比較を行った。日本の芸術祭は越後妻有や瀬戸内国際芸術祭のように地方創生型のものが最も個性を発揮しており、それゆえ開催地の経済活性化が最大の課題となる。一方、移民を多く受け入れているヨーロッパは、政治的アイデンティティが個人の在り方を決定づけるため、政治的関心を引く作品が多い。とりわけ今回のドクメンタはその最たる例であった。しかし経済、政治、いずれにしても、それはカント以来の近代的な芸術観を覆すものである。カントは「無関心性」の美学で名高いが、経済や政治に終始する昨今の芸術祭は、生活関心に直結し、さながら昨今の自己啓発ブームすら思わせる「勇気づけ」の行為にあふれている。例えば、一般人がアーティストの活動に参加したり、アーティストが一般人が自信をもてるようななぐさめの言葉を送ったりする。VUCAと呼ばれる先の見えない不安定な世の中で、昨今の芸術は生活関心に直結し、私たちの生きる道筋を照らすともしびとなっている。それはブルデューがディスタンクシオンとよぶ差異化や、ダントーがアートワールドと規定した分離も瓦解させる動きである。本論ではそのことを指摘した。