著者
千島 雄太 村上 達也
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-12, 2016 (Released:2016-04-11)
参考文献数
34
被引用文献数
4 4

本研究では, 現代青年に顕著なキャラを介した友人関係について, 中学生と大学生の比較から検討が行われた。本研究の目的は, キャラの有無による心理的適応の相違に加えて, キャラの受け止め方とキャラ行動が心理的適応に及ぼす影響を明らかにすることであった。中学生396名と大学生244名に質問紙調査を行った。分析の結果, 大学生は中学生よりもキャラがある者の割合が多く, キャラがない者よりも自己有用感が高いことが示された。因子分析の結果, キャラの受け止め方は, “積極的受容”, “拒否”, “無関心”, “消極的受容”の4つが得られた。得点とパス係数の比較を行った結果, 学校段階で違いが見られた。中学生では, 友人から付与されたキャラを受容しにくく, キャラに合わせて振る舞うことが, 心理的不適応と関連することが明らかになった。一方で, 大学生ではキャラ行動と適応には有意な関連が見られず, 付与されたキャラを消極的にでも受け容れることが, 居場所感の高さと関連していた。以上の結果から, 中学生におけるキャラを介した友人関係の危うさについて議論された。
著者
千島 雄太 水野 雅之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.228-241, 2015 (Released:2015-11-03)
参考文献数
36
被引用文献数
5 5

本研究の目的は, 大学入学前に持っていた複数の領域に渡る大学生活への期待と, 実際に経験した大学生活に関して探索的に把握し, 大学適応への影響について実証的に明らかにすることであった。文系学部の大学生84名を対象とした予備調査によって, 大学生活への期待と現実に関して探索的に検討し, それぞれ項目を作成した。続いて, 文系学部の新入生316名を対象とした本調査を行い, 探索的因子分析の結果, 大学生活への期待は, “時間的ゆとり”, “友人関係”, “行事”, “学業”の4つの領域が抽出された。対応のあるt検定の結果, 全ての領域において期待と現実のギャップが確認された。さらに, 大学環境への適応感とアパシー傾向を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。その結果, “時間的ゆとり”と“友人関係”において, 期待と現実の交互作用が認められ, いずれにおいても現実得点が高い場合に, 期待得点はアパシー傾向と負の関連が示された。特に, 期待したよりも時間的ゆとりのある大学生活を送っている場合に, アパシー傾向が高まることが明らかにされ, 大学における初年次教育の方向性に関して議論された。
著者
千島 雄太 村上 達也
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-12, 2016
被引用文献数
4

本研究では, 現代青年に顕著なキャラを介した友人関係について, 中学生と大学生の比較から検討が行われた。本研究の目的は, キャラの有無による心理的適応の相違に加えて, キャラの受け止め方とキャラ行動が心理的適応に及ぼす影響を明らかにすることであった。中学生396名と大学生244名に質問紙調査を行った。分析の結果, 大学生は中学生よりもキャラがある者の割合が多く, キャラがない者よりも自己有用感が高いことが示された。因子分析の結果, キャラの受け止め方は, "積極的受容", "拒否", "無関心", "消極的受容"の4つが得られた。得点とパス係数の比較を行った結果, 学校段階で違いが見られた。中学生では, 友人から付与されたキャラを受容しにくく, キャラに合わせて振る舞うことが, 心理的不適応と関連することが明らかになった。一方で, 大学生ではキャラ行動と適応には有意な関連が見られず, 付与されたキャラを消極的にでも受け容れることが, 居場所感の高さと関連していた。以上の結果から, 中学生におけるキャラを介した友人関係の危うさについて議論された。
著者
水野 雅之 菅原 大地 千島 雄太
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.112-118, 2017-05-15 (Released:2017-06-13)
参考文献数
28
被引用文献数
3 3

The purpose of this study was to examine how well-being is associated with self-compassion and self-esteem, mediated by coping styles. Two hundred and forty-seven undergraduate students (mean age=19.37 years, SD=1.12) completed questionnaires comprised of scales measuring self-compassion, self-esteem, coping styles, and subjective well-being. Covariance structure analysis showed that (a) self-compassion was positively related to positive interpretations, and resulted in good well-being; (b) self-compassion was associated with planning positively; (c) self-esteem was positively related to well-being directly; (d) self-esteem was associated with abandonment and avoidance of responsibility negatively and catharsis positively. Finally, we discussed the different relationships between self-compassion and self-esteem with well-being.
著者
千島 雄太 村上 達也
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.129-146, 2015-01-30 (Released:2017-05-24)
参考文献数
41
被引用文献数
5

Most Japanese contemporary adolescents communicate with their friends by using “Chara,” which is a shortened form of “Character”. However, few studies have examined Chara from a psychological perspective. Thus, the purpose of this study was to clarify a) percentage of using Chara, b) thoughts about Chara, c) differences in friendship based on types of Chara types, & d) satisfaction with friendship that use Chara. A preliminary survey with 57 participants showed that around fifty percent had Charas, and that Charas could be divided into two types. Results of the main survey of 236 participants revealed that those who have Charas tend to form friendship groups, and satisfy their friendships more than those who do not perceive Charas. Moreover, the process of decreasing friendship satisfaction among participants with Chara was also examined.
著者
千島 雄太 水野 雅之
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.228-241, 2015
被引用文献数
5

本研究の目的は, 大学入学前に持っていた複数の領域に渡る大学生活への期待と, 実際に経験した大学生活に関して探索的に把握し, 大学適応への影響について実証的に明らかにすることであった。文系学部の大学生84名を対象とした予備調査によって, 大学生活への期待と現実に関して探索的に検討し, それぞれ項目を作成した。続いて, 文系学部の新入生316名を対象とした本調査を行い, 探索的因子分析の結果, 大学生活への期待は, "時間的ゆとり", "友人関係", "行事", "学業"の4つの領域が抽出された。対応のある<i>t</i>検定の結果, 全ての領域において期待と現実のギャップが確認された。さらに, 大学環境への適応感とアパシー傾向を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。その結果, "時間的ゆとり"と"友人関係"において, 期待と現実の交互作用が認められ, いずれにおいても現実得点が高い場合に, 期待得点はアパシー傾向と負の関連が示された。特に, 期待したよりも時間的ゆとりのある大学生活を送っている場合に, アパシー傾向が高まることが明らかにされ, 大学における初年次教育の方向性に関して議論された。
著者
水野 雅之 千島 雄太
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.94-105, 2018-10-31 (Released:2020-01-05)
参考文献数
39

本研究の目的は,大学生活への期待と現実のギャップに対する否定的反応とその対処が大学適応に及ぼす影響を検討することであった。まず,ギャップへの否定的反応とその対処を測定する尺度の項目を自由記述調査によって収集した。その後,期待と現実のギャップを経験した大学生130名を対象に質問紙調査を行った。分析の結果,ギャップへの否定的反応尺度は単因子構造であり,ギャップへの対処尺度は「鼓舞」「転籍の検討」「消極的受容」「肯定的捉え直し」の4因子構造であることが見いだされた。階層的重回帰分析を実施したところ,否定的反応と肯定的捉え直しの交互作用が有意であり,否定的反応を強く経験しているとき,肯定的捉え直しと大学適応の間に正の関連がみられた。加えて,主効果については大学適応に否定的反応は負の影響を,鼓舞は正の影響をもっていた。
著者
千島 雄太
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.129-139, 2016-01-27 (Released:2017-05-26)
参考文献数
31
被引用文献数
3

Three educational stages were compared in order to clarify the development of self-change intentions during adolescence. Aspects of self-change intention are hypothesized, on the basis on previous studies, to develop in 3 possible ways: 1) from present-focused to past-focused and future-focused, 2) from fantastic to realistic, or 3) from dependent to independent. In this study, a questionnaire survey was conducted with adolescents in junior high school (n=353), high school (n=375), and college (n=400). They responded to items of intention for self-change. Confirmatory factor analysis showed that factor structure of self-change intention was consistent among three educational stages. An ANOVA showed the mean levels of some aspects were different from educational stages. Moreover, those aspects could be interpreted along 2 axes: 1) future-focused-past-focused and 2) fantastic-realistic. Results showed both future-focused and realistic aspects increase with educational stages. These findings support first 2 hypotheses mostly and suggest that the development of self-change intentions occurs with the expansion and differentiation of time perspective.
著者
千島 雄太 村上 達也
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 = The Japanese Journal of Educational Psychology (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-12, 2016
被引用文献数
4

本研究では, 現代青年に顕著なキャラを介した友人関係について, 中学生と大学生の比較から検討が行われた。本研究の目的は, キャラの有無による心理的適応の相違に加えて, キャラの受け止め方とキャラ行動が心理的適応に及ぼす影響を明らかにすることであった。中学生396名と大学生244名に質問紙調査を行った。分析の結果, 大学生は中学生よりもキャラがある者の割合が多く, キャラがない者よりも自己有用感が高いことが示された。因子分析の結果, キャラの受け止め方は, "積極的受容", "拒否", "無関心", "消極的受容"の4つが得られた。得点とパス係数の比較を行った結果, 学校段階で違いが見られた。中学生では, 友人から付与されたキャラを受容しにくく, キャラに合わせて振る舞うことが, 心理的不適応と関連することが明らかになった。一方で, 大学生ではキャラ行動と適応には有意な関連が見られず, 付与されたキャラを消極的にでも受け容れることが, 居場所感の高さと関連していた。以上の結果から, 中学生におけるキャラを介した友人関係の危うさについて議論された。
著者
千島 雄太
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.352-363, 2016
被引用文献数
2

本研究の目的は, 自己変容の想起がアイデンティティ形成にもたらす影響について明らかにすることであった。今のどのような自分を(現実自己), この先どのような自分に(理想自己)変えたいと思っているかを尋ねる項目に加えて, 志向性, 変容後のイメージ, 計画性を尋ねる項目が作成された。研究1では, 大学生393名を対象に質問紙調査が行われた。分析の結果, 自己変容を望まない者は, 自己変容を望む際に具体的な現実自己や理想自己を想起する者よりも, 反芻的なアイデンティティ探求が低いことが示された。研究2では, 大学生230名を対象に実験的操作を用いた2回の質問紙調査が行われた。分析の結果, 理想自己を伴って自己変容を想起した群は, 何も想起しなかった群と比べて, 反芻的探求が有意に減少した。また, 2つの研究を通して, アイデンティティ形成に影響を及ぼす要因は, 理想自己に変わった姿をイメージすることや理想自己への変容のための計画を持つことであることが明らかにされた。
著者
千島 雄太
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.155-164, 2016
被引用文献数
4

The purpose of the present study was to examine intention for self-change across the life span using measures of self-esteem, frequency of self-reflection, and concern about self-change. We hypothesized that: (a) Intention for self-change decreases with age because of increased self-esteem, decreased self-reflection and concern about self-change, and (b) Associations among self-esteem, frequency of self-reflection, and intention for self-change are mediated by concern about self-change. Participants (<i>N</i> = 997; age range, 15 to 69 yrs) completed an internet survey. ANOVA results suggested that intention for self-change, concern about self-change, and frequency of self-reflection decreased with age, and that self-esteem scores increased with age. Simultaneous analysis of multiple age groups showed that for all groups of low self-esteem and frequent self-reflection promoted intention for self-change and that there were significant mediating effects for concern about self-change. Therefore, these findings supported our research hypotheses.
著者
千島 雄太
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-12, 2015

本研究は,多くの青年が主体的に自己の変容を望んでいるにもかかわらず,変容が実現されにくい原因の一つとして,自己変容のメリット・デメリット予期に伴う葛藤を仮定し,葛藤の特徴について学校段階による比較から明らかにすることを目的とした。予備調査では,自己変容と現状維持に関するメリットとデメリットを自由記述形式で尋ね,記述を分類した。その分類結果から自己変容のメリット・デメリット予期項目を作成し,中学生,高校生,大学生・専門学校生1162名に本調査を行った。3つの学校段階と自己変容の予期得点を組み合わせた5群の連関を検討した結果,中学生では"予期低群"と"現状維持メリット予期群",高校生では"回避–回避葛藤群",大学生・専門学校生では"自己変容メリット予期群"と"接近–接近葛藤群"の割合が有意に多いことが明らかになった。さらに,学校段階と自己変容の予期5群を要因とした二要因分散分析を行った結果,葛藤は自尊感情や内省の発達に伴って変化することが示された。また,"自己変容メリット予期群"と"回避–回避葛藤群"で自己変容の実現得点が低く,内省を深め,現在の自分を肯定的に受け止めることが自己変容の契機になることが示唆された。