著者
西川 義文 室井 喜景 鈴木 穣 マフムド モタメド 猪原 史成 西村 麻紀 古岡 秀文 フェレイグ ラガブ 梅田 剛佑
出版者
帯広畜産大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

トキソプラズマは世界人口の3分の1のヒトに感染しており、様々な精神疾患や神経疾患の発症リスクになることが推測されている。しかし、本原虫感染が精神疾患の発症や行動異常に至るメカニズムは解明されていない。そこで本研究では、宿主中枢神経系を支配するトキソプラズマ由来ブレインマニピュレーターの解明を目的とした。脳機能に関与する宿主シグナルに影響を与える原虫分子として、TgGRAIを見出した。TgGRAIはNFkBのシグナルの活性化に関与し、TgGRAI欠損原虫株を用いたマウス行動測定の実験によりTgGRAIの恐怖記憶の固定への関与が示唆された。本研究により、脳機能を改変する原虫因子の存在が示唆された。
著者
古岡 秀文 長谷川 光 古林 与志安 松井 高峯
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.557-560, 1999-05-25
参考文献数
13
被引用文献数
1

北海道の十勝地方に繁養されていた14歳の雄のアラブ種を, 下位運動ニューロンの系統変性疾患である馬運動ニューロン病(EMND)と病理学的に診断した. 検索馬の脊髄腹角には, EMNDに特徴的な神経細胞の好酸性細胞質内封入体を伴う変性腫脹や軸索腫大が観察された. 末梢神経の検索では, ときに大食細胞の浸潤を伴う髄鞘崩壊からなるWallerian型の軸索変性が頻繁に観察された. また, 電子顕微鏡学的に神経細糸の蓄積からなる薄い髄鞘に被われた軸索腫大もしばしばみられた. 神経線維のときほぐし標本では, 髄球を伴う髄鞘崩壊, 分節性の脱髄や軸索腫大が観察された.
著者
上垣 華穂 李 奇子 佐々木 直樹 石井 三都夫 古岡 秀文 廣川 和郎 成澤 昭徳 山田 一孝
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.77-81, 2011

子牛の肺炎診断を目的に,11頭の子牛に対して立位で胸部側方向像のComputed Radiography(CR)撮影を行った。撮影条件の失宜による取り直しはなく,全例で肺後葉の観察が可能であった。今回の基礎的検討では,肺後葉の病変の摘発が可能であったが,前葉の病変は描出できなかった。この結果から,子牛の胸部におけるCR診断は肺炎のひろがり診断,重症度判定に有効と考えられた。
著者
品川 森一 金子 健二 古岡 秀文 石黒 直隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

伝達性海綿状脳症の病原体プリオンは従来の微生物不活化処理に高い抵抗性を示し、その不活化には132℃1時間、1-2Nの苛性ソーダ或いは数%の次亜塩素酸ソーダへの浸漬などの厳しい処理が要求される。しかし、精密医療機器のほとんどはそのような処理には耐えられえない。医療器機のプリオン汚染は、比較的低濃度或いは,洗浄により低濃度とすることが可能と考えられる。本研究は、このような低濃度の汚染プリオンを除くための、温和な処理によるプリオン不活化法の開発を目的とした。液化酸化エチレン(LEO)は2%程度で完全ではないが目的にあった程度にプリオンを不活化する。その作用機構は、プリオン蛋白のリジンを始め5種のアミノ酸と反応して比較的特異性を持って切断されるため,不活化がおきることが判った。しかし、処理に数十時間と長時間を要することと、沸点が10□と低く爆発性であり、取り扱いが難しい難点があった。LEOに代る化合物のスクリーニングを目的として、3種のエポキシ化合物、6-プロピオラクトン、プロピレンオキサイド及びグリシドール(GLD)のスクレイピープリオンに対する影響を抗体の反応性を指標に調べたところ、GLDが有望であった。GLDはやはりプリオン蛋白と結合して、LEOの場合より速やかに低分子に断片化することが判った。3及び5%GLDによりPBS中で室温処理のマウスを用いたバイオアッセイにより、プリオンの感染性が、千分の一以下に低下することが判ったが十分とは言えなかった。より有効に処理する条件を見いだすために、GLDの効果に及ぼすGLDの濃度、温度、塩、pHの影響を抗体との反応性により調べた。抗原としての反応性は短時間に減少するが、なお僅か残存し、残りは時間と共に徐々に消失した。調べた範囲のGLD5%、50℃、pH7.8まででは高い方がより効果的であった。マウスを用いたバイオアッセイに長時間を要するため、これらを合わせた条件で処理した試料の成績を本研究期間内で終えることはできなかった。
著者
品川 森一 久保 正法 山田 明夫 古岡 秀文 中川 迪夫 堀内 基広
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、従来から行われているウエスタンブロット(WB)法の試料調整法の改良を行った。その結果、マウスモデルでは、腹腔内接種1週目から脾臓にプリオン蛋白が検出できるようになった。多数検体を検査するためには、より簡便なプリオン検出法が必要であり、マウスモデルを用いてELISA法を開発した。検出感度はウエスタンブロット法のおよそ2倍であった。中枢神経系組織からの試料調整を簡便化し、実際に羊材料に応用可能なことを確かめた上で、この方法の有用性を北海道のと蓄場から分与を受けた羊材料を用いて検証した。また、さらに検出感度を高めるために、ELISAの検出系に光化学反応試薬を導入したところ、およそ20倍ほど検出感度が上昇した。まさらに、コラーゲン中のプリオン検出のための試料調整法も検討し、前処理法としてコラーゲンの粘性を低下させ、大容量から比較的選択的にプリオン蛋白を濃縮することが可能となり、プリオン汚染の検出法に目処がついた。一方、プリオン病は宿主のプリオン蛋白の遺伝子に多型があり、その型によって感受性が異なる。国内の羊プリオン遺伝子型の出現頻度とスクレイピ-との関連を検討した。またプリオンの蓄積は主として中枢神経系であり、少量であるが細網内皮系の組織にも起きる。診断に有用な組織採取部位を決定するためにも、詳細なプリオン蛋白発現の違いを明かにする必要があり、羊体内のプリオン蛋白発現を調べた。さらに伝達性海綿状脳症のプリオン以外の危険因子の検討を人海綿状脳症に倣い、アポ蛋白Eを標的として検討した。