- 著者
-
長谷川 光広
- 出版者
- 一般社団法人日本脳神経外科コングレス
- 雑誌
- 脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.6, pp.419-429, 2017 (Released:2017-06-25)
- 参考文献数
- 34
- 被引用文献数
-
9
5
眼窩内腫瘍はまれな疾患でありながら, 多種多様な病理学的特徴を含み, 病変の性質により治療方針は大きく異なる. 炎症性疾患やリンパ増殖性疾患 (特に最近注目されるIgG4関連疾患, MALTリンパ腫など) の鑑別と悪性度判定に生検は必須であり, その他の腫瘍性疾患には腫瘍摘出のみならず眼窩内容廓清術に至るまで多岐にわたる手術法がある. 経眼窩的, 経頭蓋的アプローチに加えて, 近年, 進歩の目覚ましい神経内視鏡下手術や頭蓋底手術を含めた各手術法の利点, 欠点を十分理解することが重要である. 全摘出を目指すべき疾患には, 病理学的には血管病変 (血管腫, 静脈瘤など), 良性 (髄膜腫, 神経鞘腫など) ならびに悪性腫瘍 (癌腫, 肉腫, 転移など) が挙げられる. また, 頭蓋内から眼窩に伸展するもの, 副鼻腔・鼻腔, 側頭窩, 下窩などから眼窩に伸展するものなど, 眼窩内外に主座を置く腫瘍では, 他科との協力が重要となる. 経頭蓋法では, 眼窩縁, 眼窩壁の骨形成的除去, 上眼窩裂, 視神経管の開放などの頭蓋底手術手技に加え, 機能的および美容的な手技も多々含まれる. 本稿では, 筆者の111例の眼窩ならびに眼窩伸展腫瘍性疾患の経験から代表的手術症例を提示し, 実際の眼窩内腫瘍の診断と摘出術における留意点を述べる.