- 著者
-
大木 裕子
古賀 広志
- 出版者
- 京都産業大学マネジメント研究会
- 雑誌
- 京都マネジメント・レビュー (ISSN:13475304)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.19-36, 2006-06
本稿の目的は,クレモナの弦楽器工房における知の転換メカニズムを探る上での予備的考察として,クレモナにおける弦楽器製作の現状と課題を整理することにある.公開資料よりクレモナの概況,世界のヴァイオリン製作の現状,クレモナのヴァイオリン製作学校,ヴァイオリン製作コンクールについてまとめ,現地調査により伝統工芸が抱える問題点について考察した.結論として,ヴァイオリン製作という伝統工芸が抱える問題点は,「楽器の個性を製作者がいかに表現していくのか」という点にある.「楽器と演奏家の相互依存関係ないしスパイラル関係」は神話化され,ヴァイオリンという楽器の価値を高めるのに役立っている.製作者が考える伝統と個性に加えて,音色に関わる神話が楽器の個性を彩っている.