著者
吉井 美奈子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、「選択的夫婦別姓制度」の導入による民法改正が実現した場合、別姓を選択した家族への影響を考察することを目的としている。特に、子どもが成長するうえでのアイデンティティ形成と氏の関係を質問紙調査、子どもの文字選好実験、親の離婚や再婚等で改姓を経験した子ども(18歳以上)へのインタビュー調査などを行い、検証した。その結果、幼い子どもたちの多くは、自分の氏名から文字に興味関心を持つ。また、離婚や再婚を経験し成長した子どもにとって、氏の変更は周囲へ説明する煩わしさを感じる一方で、実生活を優先に考える傾向が見られ、家族や個人の氏への執着は低く、実際の家族関係を優先するという傾向が見られた。
著者
吉井 美奈子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.152, 2011 (Released:2011-09-03)

【研究目的】 現在、「選択的夫婦別姓」の民法改正案はとん挫状態にあり、その理由の一つに「子どもの氏」が、どちらかの親と異なることへの懸念がある。 日本では、正式な場や日常生活でも、多くの場合「氏(姓)」で呼ぶことが一般的であり、「氏(姓)」がアイデンティティの中でも重要であることは否めない。選択的夫婦別姓が認められていない現在でも、近年、親の離婚や再婚等の増加で、子どもの氏(姓)が何度か変更されることが増えた。これが子どもたちのアイデンティティ形成にどのように影響するかを研究、検討する必要がある。 本研究では、子どもがどのように氏(姓)を習得するかについて考察するために、子どもが自分の氏(姓)をどのように習得していくか、またその文字の習得について検討することを目的としている。 【研究方法】 2010年12月に1歳~6歳児の子どもを持つ保護者に対して調査票を配布、回収した。調査対象者は、大阪府、京都府、奈良県に住む保育園、幼稚園に子どもを預けている保護者とし、保育園・幼稚園を通じて調査を行った。有効回収数は419票(きょうだい票を含む)で、回答者のほとんどが女性(母親)、平均年齢は35.3歳であった。 【結果および考察】 1.子どもたちの多くは、自分の名前をフルネームでいうことができた。 2. 自分の名前が書けるようになったのは、3~4歳頃が多い。 3.約半数の親が「子どもが最初に文字を書けるようになったのは、“自分の名前”であった」と回答していた。 4.婚姻時に改姓した女性の多くは「それが普通」だと認識しており、「本当は改姓したくなかった」という回答は1割ほどであった。
著者
吉井 美奈子 大本 久美子 岸本(重信) 妙子 田中 洋子 藤川 順子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

【目的】<br> 近年、消費者庁の設立などの機会によって、消費者教育の重要性が改めて認識されつつあるものの、今なお教育現場では消費者教育に関わる問題が山積している。消費者教育はこれまで必ずしも体系的に実施されてきたとは言えず、日本消費者教育学会も消費者基本計画に関する提言の中で、「系統的・計画的な消費者教育の欠如」を指摘している<sup>1)</sup>。消費者教育は、主に家庭科や社会科で行われているが、特に家庭科では衣食住などの各分野における体系立てた消費者教育が必要であると言える<sup>2)</sup>。これまで、本研究メンバーの一部で、食生活分野での教材を作成し、その効果を検証してきた<sup>3)4)</sup>。本研究では、体系立てた消費者教育を目指し、「安全」「契約・取引・家計」「生活情報」「環境・責任・倫理」の各領域の目標を設定し、その目標が達成できるような消費者を目指す消費者教育教材作りを衣生活分野において行う。<br>【方法】<br> 消費者教育を体系的に行うための領域別目標を掲げ、その各目標を達成できるような教材作りを「衣生活分野」において行った。具体的には、衣生活の流れに沿ったスゴロクを作成し、カードなどを使うことで購入、使用、管理、廃棄(環境への配慮)などが一連で学べるようにした。小・中・高全ての校種で活用できることを目的としているが、今回はまず中学・高校で活用できる教材作りを行い、改良を重ねながら小学校等でも活用できるようにしていく予定である。<br>【結果と考察】<br> スタートからゴールまでの間にあるイベントマスで「商品カード」「表示カード」「エコカード」を引きながら、自立した消費者を示す星マークを多く集めてゴールを目指す教材を作成した。スタート近くでは、衣服を購入するための金銭的なイベントマスを用意し、目標を立てて貯蓄することの大切さなどを感じられるようにした。「商品カード」では、様々な視点から商品を捉えられるように工夫した。「表示カード」では、商品についている表示をクイズ形式で答えるようにし、知識を確認できるようにした。「エコカード」では、環境に配慮した廃棄や再活用について考えられるようにした。また、全員がゴールした後、講師が「お知らせ」を発表することで、知的財産への配慮などの必要性を感じることができるようにした。 本教材の特長は、消費者教育を体系立てて学べるということの他に、ゲームを援用したことで、生徒が自ら学ぼうという意欲が高まるようにしたことである。加えて、ゲームを活用することで、単に「楽しかった」で終わらせず、知識を付けながらコマを進められるように工夫した。また、ゲーム終了後の振り返りを利用して、既にゲームを通して獲得したポイントの数を変動させて意外性を持たせることで、より強い印象を付けることができる。<br>&nbsp;1)日本消費者教育学会「消費者計画に関する提言」(2004年12月13日)内閣府へ提出した意見書<br>2)「消費者教育体系化シートの領域別目標の達成と課題-大学生の消費行動に関する意識調査を手がかりにして―」吉井美奈子、他(2010)消費者教育第30冊、日本消費者教育学会<br>3)「食生活における消費行動に関する領域別達成度と課題」岸本(重信)妙子、他(2011)消費者教育第31冊、日本消費者教育学会<br>4)「食生活分野における消費者教育教材の検討-教材開発の成果と課題-」吉井美奈子、他、日本消費者教育学会第31回全国大会、2011.10.23
著者
野田 奈津実 小川 宣子 久慈 るみ子 坂田 隆 山崎 泰央 大竹 美登利 佐々井 啓 中島 明子 宮野 道雄 浜島 京子 加藤 浩文 萬羽 郁子 吉井 美奈子 生田 英輔
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.288, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 東日本大震災では、多くの被災者が仮設住宅への転居を余儀なくされた。本研究は、仮設住宅への転居が住民の食生活に与えた影響を明らかにすることを目的とした。方法 震災後、石巻市市街地の仮設住宅に入居した60代女性(食生活改善推進員、震災前は同市雄勝地区)を対象に、震災前後の食生活(料理の種類、保存食、食事形態)について聞き取り調査を行う(2015年3、9、12月)とともに料理の画像記録を依頼した。結果 震災前に比べ、仮設住宅での料理の種類の減少や食事形態に変化が見られた。その原因として、1.地元で採(獲)れた大豆や米から味噌、柿やハモの乾物等の保存食を作り、これを利用して柿なますや雑煮等の郷土料理が作られていたが、食材の入手・保存場所の確保が困難になり、保存食を作ることが少なくなった。2.台所が狭くなり、保管・使用にスペースが必要な蒸し器やすり鉢を使う料理が減った。3.食卓が狭くなり、食器の種類や数も減ったため料理の盛り付けは銘々盛りから大皿盛りへと変化した。日常的に行われてきた食生活が震災を機に失われつつある。石巻の気候・風土を反映する多くの食材を活用した料理を記録として残し、継承していくことが求められている。本研究はJSHE生活研究プロジェクトの活動として実施し、科学研究費補助金(課題番号:24300243、25350040)、平成26年度(公財)浦上食品・食文化振興財団の助成を受けた。
著者
野田 奈津実 小川 宣子 久慈 るみ子 山崎 泰央 坂田 隆 大竹 美登利 佐々井 啓 中島 明子 宮野 道雄 浜島 京子 加藤 浩文 萬羽 郁子 吉井 美奈子 生田 英輔 奥山 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的</b> JSHE生活研究では、石巻市にて「郷土料理の伝承」「特産物を生かした料理の提案」を目的とした料理教室と料理コンテストを行ってきた。これらの活動による参加者の意識・意欲の変化を明らかにする。<b></b><br><b>方法 </b>郷土料理教室は3回(2012年3月~2013年12月)、わかめ料理コンテストは1回(2014年10月)実施し、それぞれ参加者へアンケート、聞き取りを行った。<br><b>結果 </b>郷土料理教室の1、2回目は仮設住宅入居者を対象として行ったが、以前から郷土料理を作り、食べている参加者が多かったため、3回目は仮設住宅入居者を講師とし、大学生を対象に行った。終了後、大学生からは「石巻の食文化を知ることができた」「家族や友人に教えたい」、仮設住宅入居者からは「若い人たちと話せて楽しかった」「やりがいを感じた」という感想が多く、「郷土料理の伝承」の新たな形としての可能性が感じられた。わかめ料理コンテストは地域住民34組から応募があり、最終審査は10組で行われた。参加者からは「わかめだけでなく、他の石巻の食材も調べた」「参加者同士で意見交換できた」との声も聞かれ、両活動とも郷土料理や特産物に対する関心や愛着、誰かに伝えたいという意欲を生み、さらに地域関係者も含めたコミュニケーションの場となった。<br>本研究は科学研究費補助金(課題番号:24300243、25350040)、平成25年度(公財)浦上食品・食文化振興財団の助成を受けた。