著者
鷲津 かの子 日下部 信幸
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.274, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 天然サポニンは医薬分野で使われているが、その界面活性や起泡性を利用して昔から世界各地で洗濯や身体の洗浄等に使用してきた。今日でも洗濯などに利用している国がある。わが国も石鹸が普及する明治時代以前は、むくろじやえごのきの果皮や、さいかちの鞘などに含まれるサポニンを使っていた。第二次大戦中の石鹸不足時も使われた。特に石鹸が使えない絹の洗濯にはサポニンのみで、綿や麻はわら灰の上澄み液を加えて使っていたと考えられる。本研究は天然サポニンの洗浄効果を石鹸や合成洗剤と比較して調べ、洗浄剤として利用できるか検討した。 方法 天然サポニンとしてえごのきとむくろじを用いて起泡性と人工汚染布の洗浄効果を調べた。アルカリは重曹とセスキ炭酸ナトリウムを使用した。2LPET容器に水500mlを入れ、天然サポニン0.5、1.0、2.0、3.0、5.0gを加えて1分間振り、5分後の泡高さを測り起泡性を調べた。その後、人工汚染布を入れて1分間振り、分光測色器で洗浄前後の反射率を測定し、洗浄効率を求めた。また、ラウンダオメータによる洗浄効率とも比較した。 結果 えごのきとむくろじの果皮は界面張力を低下させ、起泡性が大きい。また、水のみに対して天然サポニン液の洗浄効率は高く、重曹やセスキ炭酸ナトリウムを加えると石鹸や合成洗剤と同等かそれ以上の洗浄効率を示した。アルカリを加えたえごのきでは、0.5~1.0g使用した場合に最も高い洗浄効率を示すことが分かった。
著者
松本 美鈴
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.105, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 塩麹により牛肉が軟化し,うま味成分が増加することは,三橋等により既に報告されている.本研究では,塩麹を塗布した牛もも肉の保存条件および加熱条件などを変えて,塩麹による肉の軟化効果を検討した.方法 <10℃保存>牛もも肉に肉重量の10%塩麹(株式会社河野源一商店)または塩水(食塩濃度12%)を塗布し,それぞれ10℃で1,3および24時間保存し,沸騰水中で肉の中心温度が80℃に達するまで加熱後,冷却し試料とした.<25℃保存>牛もも肉に塩麹,塩水またはpH5に調整した塩麹を塗布し,25℃で1時間保存し,沸騰水中または低温(80℃水中で)加熱後,冷却し試料とした.<測定項目>加熱後の重量保持率,レオメーター(山電)を用いたテクスチャー試験によるかたさ,歪率,凝集性などを測定した.結果 <10℃保存>塩麹添加によりいずれの試料もかたさ変化率が無添加に比べて有意に小さく,やわらかくなった.また,保存時間が長いほど軟化しやすい傾向がみられた.一方,塩水添加試料では物性値に有意差がみられなかった.<25℃保存>沸騰水中加熱試料では,テクスチャー測定値に有意差がみられなかった.しかし,低温加熱試料においては,pH5調整塩麹試料は無添加および塩麹より凝集性が小さく,肉が崩れやすくなった.以上の結果より,塩麹による牛もも肉の軟化には,保存温度は25℃より10℃が好ましく,低温加熱が有効であることが分かった.
著者
海老塚 広子 藤本 智子 潮来 茉里 山本 真衣 三澤 香莉 塩谷 一紗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.166, 2016 (Released:2016-08-04)

【目的】 母乳は乳児に栄養を与える手段として、栄養学的意義はもちろん免疫学的・精神的に優良であるといえる。母親の食事形態により乳児の母乳への吸いつきが悪くなることが観察され、妊娠・授乳期の母親の食事が、乳児の離乳食の嗜好性に影響を与えていることも推察される。本研究では、母親の食事摂取状況や食習慣と、母乳の匂いに着目し、その関連性について明らかにすることを目的とした。個人による母乳の匂いの差異および食事内容による母乳の匂いへの影響について検討した。【方法】 授乳婦7名を対象とし、3日間の食事調査および食事後約2時間経過した母乳の採取を依頼した。母乳の分析には、におい識別装置(FF-2A:(株)島津製作所)を用いた。統計処理はSPSSを用いて多変量解析、Asmell2を用いて臭気指数相当値による類似度解析を行った。【結果および考察】 授乳婦の食事調査の結果、エネルギー・主要栄養素量に大きな差異は認められなかった。母乳の匂いには個人差があること、カレーを摂取することにより、におい成分のバランスに変化が現れることが判明した。また、鯛のあらが母乳の匂いに変化を与えている可能性が高いことが確認された。この結果を、授乳婦への栄養指導に役立てて、健康な乳児の発育に貢献することが期待される。
著者
宮澤 洋子 山田 直子 土田 満 林 恭子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.168, 2016 (Released:2016-08-04)

目的  平成26 年度全国下水道普及率は77.6%に対し、欧米諸国では80~90%であり日本は低い傾向にある。水質汚濁原因は約7割が生活排水で、その45%が調理操作によるものである。米の研ぎ汁は窒素、リンなどの有機成分が含まれ、年間7,000tのリンが放出され汚染源となっている。米の研ぎ回数の工夫により、研ぎ汁の汚濁負荷量と食味調査を行い、水環境及び食味も適した炊飯方法を検討することを目的とした。方法 愛知県産こしひかりを900gに調整し、白杉ら1)の方法で、水1,800ml(米の2倍重量)を加え、指先をボールの底に付けるように毎秒1回で10回混ぜ、ザルに移し水を切る操作を1回とする洗米を行った。その操作を1、2、3回行い、出た研ぎ汁を試料とした。研ぎ汁の分析内容は、COD、BOD、全窒素、全リンの測定を行った。食味調査は、見た目、香り、総合評価などの6項目で評価法による7段階で判定した。結果 各汚濁負荷量では、研ぎ回数1回に比べ3回で有意に高くなり、研ぎ回数2回と3回では有意差は認められなかった。食味調査では、見た目、香りなどで研ぎ回数1回に比べ3回で有意に高くなり、総合評価で研ぎ回数2回で高い点数となり、3回との差は認められなかった。環境負荷の影響をおさえ、食味調査の評価の良い調理の工夫として、研ぎ回数2回でも概ね妥当であることが考察された。[文献]1)白杉直子ら:調理及び食器洗浄方法の工夫による台所排水の環境負荷低減効果.日調科誌,36(2)130-138.
著者
三野 たまき
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.118, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 肥満は成人病などの様々な病気の原因とされ,健康的な生活を送るためには,普段から食生活に気を配るとともに運動習慣を身につけ,体脂肪を適量に保つ必要がある.誰でもが無理なく行える有酸素運動条件下で体脂肪が燃焼しやすい運動負荷強度について調べることを目的とした.方法 被験者は健康な若年成人女性18名であった.測定前夜7時間の睡眠を取った被験者は毎朝5時に起床し,6時に規程食を摂食した.綿100%の半袖Tシャツとポリエステル100%のハーフパンツに着替え,環境温度24.5±0.3℃,相対湿度50.3±2.5%,照度827±27lx,気流8.0±0.1cm/sに設定した人工気象室7時に入室した.椅座位安静を1時間保った後,呼吸代謝と心拍数を8時から40分間測定した.運動負荷は,最高心拍数から年齢を差し引いた値のHRMAXの30,40,50,60,30%の強度で6分間ずつ自転車エルゴメーターをこがせた.運動負荷の前後には5分間の無運動負荷のコントロールを測定した.結果 エネルギー・糖・脂質消費量と相対心拍数は,ともに前コントロールに比べ,各運動段階及び後コントロールよりも有意に増加した.エネルギー・糖消費量と相対心拍数は有意に1<2<3<4段階であったので,運動強度を増せば,エネルギー・糖消費量や相対心拍数が増した.一方脂質消費量は,どの運動段階の組み合わせでもい有意な差がなかった.このことから,有酸素運動下では運動強度を高めても脂質消費量は増さないので,敢えて運動負荷強度を大きくする必要がないことがわかった.
著者
渡部 美香 山岸 弘 内藤 厚志 安江 良司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.250, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 生活者が浴室内でカビを見つけたことがある箇所に,「壁」,「ドアや窓のゴムパッキン」と同様に,「洗面器やシャンプー等の小物」が挙げられており,生活者は浴室内小物のカビが気になっていることが判ってきた.本研究では,浴室内小物のカビ汚染及び掃除実態を明らかにし,簡便に効率よく行えるカビ対策法提案を目的とする.方法 掃除実態は,月に1回以上自分で家庭内の掃除をしている首都圏の30~59歳既婚女性450名を対象にWEB調査を実施した.カビ汚染実態は,首都圏の11家庭を対象に浴室内小物のカビ生菌数を測定した.結果 生活者の68%は1年間に浴室内小物にカビを見つけたことがあるが,その37%はカビを見つけても掃除をせず放置していることが判った.一方,浴室内小物にカビを見つけたことのある生活者の63%はカビ取り掃除をしているが,その49%は塩素系カビ取り剤を使用せず浴室用洗剤等で掃除をしていた.以上の結果から,浴室内小物はカビ汚染されている可能性が高いと仮説を立て,一般家庭の浴室内小物のカビ汚染実態を調査した.その結果,カビは11家庭中4家庭の洗面器から検出され,最大で数万CFU/cm2,イスにおいては7家庭から検出され,最大で数百万CFU/cm2存在しており,多くの家庭の浴室内小物がカビ汚染されていた.本報告では,さらに浴室内小物も含め浴室内隅々まで簡便に効率よくカビ除菌ができるカビ対策の提案について報告する.
著者
野田 奈津実 小川 宣子 久慈 るみ子 坂田 隆 山崎 泰央 大竹 美登利 佐々井 啓 中島 明子 宮野 道雄 浜島 京子 加藤 浩文 萬羽 郁子 吉井 美奈子 生田 英輔
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.288, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 東日本大震災では、多くの被災者が仮設住宅への転居を余儀なくされた。本研究は、仮設住宅への転居が住民の食生活に与えた影響を明らかにすることを目的とした。方法 震災後、石巻市市街地の仮設住宅に入居した60代女性(食生活改善推進員、震災前は同市雄勝地区)を対象に、震災前後の食生活(料理の種類、保存食、食事形態)について聞き取り調査を行う(2015年3、9、12月)とともに料理の画像記録を依頼した。結果 震災前に比べ、仮設住宅での料理の種類の減少や食事形態に変化が見られた。その原因として、1.地元で採(獲)れた大豆や米から味噌、柿やハモの乾物等の保存食を作り、これを利用して柿なますや雑煮等の郷土料理が作られていたが、食材の入手・保存場所の確保が困難になり、保存食を作ることが少なくなった。2.台所が狭くなり、保管・使用にスペースが必要な蒸し器やすり鉢を使う料理が減った。3.食卓が狭くなり、食器の種類や数も減ったため料理の盛り付けは銘々盛りから大皿盛りへと変化した。日常的に行われてきた食生活が震災を機に失われつつある。石巻の気候・風土を反映する多くの食材を活用した料理を記録として残し、継承していくことが求められている。本研究はJSHE生活研究プロジェクトの活動として実施し、科学研究費補助金(課題番号:24300243、25350040)、平成26年度(公財)浦上食品・食文化振興財団の助成を受けた。
著者
加藤 みゆき 加藤 芳伸 大森 正司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.67, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 茶の種類は,緑茶・紅茶・ウーロン茶・後発酵茶などが存在している.これらの茶は,カメリア属の茶葉から製造されている.茶の製造には主に中国変種とアッサム変種が多く用いられている.これまでミャンマーにおける茶の製造実態を調査してきた.ミャンマーでは,シャン州が主要な茶の栽培地になっている.しかし,シャン州以外にもミャンマー全土で多くの茶の製造が見られた.そこで今回,ミャンマーにおける茶の品種と製造方法について報告する.方法 ミャンマーのシャン州,カチン州,カレン州,チン州等多くの茶の栽培地域で茶の製造方法・利用方法等聞き取り調査を行った.一方,茶を製造している茶葉の遺伝子解析を行った.遺伝子の解析方法は,前報1)で報告している方法を用いた.つまり茶葉からDNAを抽出し,マーカーとしてribulose1,5-bisphosphate carboxylase large-subunit(rbcL)を用いて解析する方法を行った.結果 ①ミャンマーにおける茶の製造方法は,飲用としてのラペチャウ,紅茶,後発酵茶のラペソウなどがあった.②緑茶の製造方法は,蒸す・ゆでる方法より炒る方法を用いている場所が多かった.これはラペチャウおよびラペソウや竹筒茶においても同様の傾向であった.③茶葉は多くがアッサム変種であったが,カチン州の一部では,中国変種があった.チャの仲間に属するタリエンシス等で茶を製造している地域もあった.さらにアッサム変種の変異体の茶葉が茶の製造にも使われていた.1)Katoh et al. Food Science and Technology Research,21,381-389(2015)
著者
杉本 奈那 鈴木 結花 岩﨑 潤子 小林 泰子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.97, 2016 (Released:2016-08-04)

【目的】 藍染め布は、古くから衣服に使用され、消臭、細菌増殖抑制、虫除け等の効果もあるという。本研究では、衣服として必要な消費性能から、数種の物性と染色堅ろう性、消臭性、抗菌性を選び、検討を行った。【実験方法】 試料布は綿と麻ブロード、染料はインド藍液(田中直染料店)を用い、1回染めと5回染めにより、染色布を調製した。JIS法に基づき、物性は、引張り強度と引裂き強度試験、染色堅ろう度は、摩擦と耐光試験、その他機能性は、検知管法による消臭性とフードスタンプ法による抗菌性試験を行った。【結果と考察】 引裂き強度は、綿では1回染め布で20%、5回染め布で50%、麻では約2~3倍に増加した。摩擦堅ろう度は、5回染めにより乾燥試験のたて方向で4級から3級に減少した。湿潤試験では、1回染めと5回染めで変化はなく、3級だった。濃色化により色落ちが目立った。耐光試験では、濃色化により堅ろう性は増加した。アンモニアに対する消臭性は、藍染め布には認められなかったが、銅媒染により発現した。抗菌性は、未処理布に比較し、染色を重ねることによりコロニー数が減少した。これら結果より、物性、抗菌性では、十分な消費性能が得られ、消臭性も媒染を加えることにより期待できることがわかった。今後は、より染色堅ろう性の高い染色布の調製を行い、紫外線遮蔽性、数種の細菌を用いた抗菌性についても検討を行う。
著者
庄山 茂子 西之園 美咲 栃原 裕
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.242, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 急速な高齢化に伴い、介護サービスを利用する高齢者が増加している。自宅での介護を望む高齢者も多いことから、介護施設では自宅にいるような雰囲気が求められる。そこで、対人関係の内容やあり方についての情報を伝達する機能をもつ介護服に着目し、要介護者にとって望ましい介護服の色彩を検討した。方法 (1)試料:ポロシャツ7種(White、lt-Red、 lt-Blue、 lt-Yellow、lt-Blue Green、d-Blue、dk-Blue)、 (2)時期:2015年6月~7月、(3)対象者:施設利用者216名(平均年齢84.1歳、SD7.6歳)、(4)方法:面接による質問紙調査、(5)内容:施設利用頻度、介護服の好ましさ、介護服のイメージ、 (6)分析方法:単純集計、一元配置分散分析、因子分析結果 「好ましい」の回答が最も多いのはlt-Blue Greenで、lt-Blueは男性に好まれ、lt-Redは女性に好まれた。同色相で明度の異なる3種(lt-Blue、d-Blue、dk-Blue )を比較すると、高明度の評価が高かった。7種に対するイメージについての因子分析の結果、「思いやり・癒し、責任感・信頼、活動性、個性、派手さ」の5因子が抽出され、平均因子得点は全ての因子において7種間に有意差がみられた。「思いやり・癒し」の得点が最も高いのはlt-Red、低いのは、d-Blue、dk-Blueの低明度のサンプルであった。「責任感・信頼」が最も高いのは、高明度の寒色系であった。
著者
小泉 茉由 松島 悦子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.192, 2016 (Released:2016-08-04)

【目的】おいしさは、食物や食べる人、環境などの要因で形成される主観的なものである。食物からの情報は味覚や視覚、嗅覚などで知覚され、色はおいしさの評価を左右する重要な要因である。先行研究によると、青や紫など寒色の皿は食欲を減退させると指摘されているが、藍色の皿は古くから一般的に使われてきた。そこで本研究では青い皿に着目し、その色調の違いがおいしさの印象にどのように影響を与えるかを明らかにした。  【方法】A大学の女子学生と教職員62人を対象として、明度と彩度の異なる4種類の青い皿に煮魚やハンバーグ、サラダ、そうめんなど8種類の料理を盛り付けた画像を作成し、印象評価を行った。評価法は、SD法に基づき、おいしさにかかわる形容詞対7項目に対する5段階評価である。事前に質問紙調査を行って、画像に用いる皿の形や料理を選定した。 【結果】「おいしそう」という評価はサバの味噌煮などの茶系の料理で低く、同じ料理でも皿の明度・彩度の違いによって評価は異なった。これは、皿の色と料理の色との対比という視覚現象によるものと考える。また、温かい料理でも「冷たそう」と評価され、青い皿は料理を冷たく見せる効果が確認された。以上より、皿の青という色相のみならず、明度や彩度も料理のおいしさの印象に影響を与えることが明らかとなった。また、学生と教職員では、明るさや華やかさの項目で評価に有意差が認められ、好まれる明度・彩度は年齢により異なることが示唆された。
著者
飯島 陽子 長尾 望美 小池 理奈 岩本 嗣
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.82, 2016 (Released:2016-08-04)

【目的】ゴボウは、日本で食される代表的な根菜の一つであり、独特な香りが特徴である。また近年、各種野菜のスプラウトは栄養価が高く人気が高まっているが、ゴボウスプラウトはまだほとんど市場に出回っておらず、その風味特性については不明である。そこで本研究では、ゴボウおよびゴボウスプラウトの香気特性に着目し、香気成分の分析、組成比較を行った。 【方法】ゴボウはスーパーで購入し、ゴボウスプラウトは種子を2週間既定条件で栽培した。それぞれのサンプルを液体窒素で凍結粉砕し、これを分析サンプルとした。そのヘッドスペースガスにおける香気成分をSPME法で捕集し、GC-MS分析を行った。また、GC-MSで検出された各成分についてはGC-においかぎを行い、香気特性を調べた。 【結果及び考察】ゴボウの香気成分のうち、2-methoxy-3-(1-methylpropyl)-pyrazineおよび2-methoxy-3-(2-methylpropyl)-pyrazineが最もゴボウ様香気に寄与していた。主成分分析によってゴボウとスプラウトの香気組成を比較したところ、スプラウトでは、pyrazine類のほかにc-s-3-hexenalなどの青葉の香りに関与する成分も検出され、スプラウトのフレッシュ香に関与するものと考えられた。
著者
片山 佳子 外山 剛之
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.172, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 落花生は、様々な用途に使用され消費されているが、その加工工程において、薄皮は多量の産業廃棄物となる。しかし、落花生薄皮にはポリフェノールであるレスベラトロールが多く含まれていることから、高い抗酸化作用を持つと考えられる。そこで本研究では、この多量に廃棄されてしまう薄皮をお茶のような飲料として利用できないかと考え、ポリフェノール量および抗酸化活性を測定するとともに、官能評価による嗜好性を分析することを目的とした。方法 落花生薄皮1gに抽出温度(80,85,90,95,100℃)を変えた水200mLで20秒間抽出したものを試料液とした。ポリフェノール量の測定は、Folin-Denis法にて行った。抗酸化活性はラジカル消去能をDPPH法で測定し、Trolox相当量として算出した。嗜好型官能評価は、外観、香り、味、苦味、総合評価の5項目を5点評点法により評価し、分散分析法により検定を行った。結果 ポリフェノール量と抗酸化活性は、抽出温度が高くなるにつれて高い値を示し、抽出温度100℃が最も高い結果となった。これは水溶性の抗酸化物質であるポリフェノーが多く溶出されたためと考えられた。また、ポリフェノール量が多いほど高い抗酸化活性を示したことから両者には高い相関性があり、落花生薄皮茶の抗酸化活性の主体はポリフェノールであることが考えられた。官能評価は、当初、高温抽出では薄皮の渋味が懸念されたが高温の100℃抽出が総合的に好まれた。このことから落花生の薄皮茶は高い抗酸化活性をもつ飲料として利用できることが示唆された。
著者
佐藤 真実
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.89, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 日本の食生活が洋風化し、食料自給率、食品群別摂取量、家計支出は年々変化している。本研究では、消費に関わる食品や料理の嗜好度について性別、年齢、世帯構成別に違いを明らかにする。また1975年からの食嗜好の変遷について明らかにする。  方法 平成26年7月より県内の10歳代から80歳代までの男女1650名を対象にアンケート調査を行った(有効回答率89.1%)。調査項目は、119食品の料理や食品の嗜好度と摂取頻度、属性(性別、年齢、世帯構成)などについてである。嗜好度は9段階(1:もっとも嫌い~9:もっとも好き)の尺度を用いた。  結果 全体では、ごはん(7.47)、焼肉(7.27)、味噌汁(7.25)、みかん(7.23)などの嗜好度が高く、これらの料理や食品は性別、年齢別、世帯構成別で有意差が認められなかった。性別では、男性がラーメン(7.31)、刺身(7.31)、そば(7.07)、焼き魚(7.03)などの麺類、肉・魚料理で嗜好度が高かった。年齢別では、若年層の嗜好度が全体的に高く、とくにアイスクリーム(7.47)、鶏のから揚げ(7.44)などで嗜好度が高かった。年齢が高くなるほど焼き魚、野菜煮物、コーヒーなどの嗜好度が高くなった。世帯構成別では、一人暮らしの嗜好度が全体的に低かった(いずれも有意水準5%以下)。1975年と比較して、肉料理や魚料理の嗜好度はやや上昇、果物、嗜好飲料の嗜好度は減少傾向であった。平均嗜好度はどれも「少し好き」な状況であり、かつてのような料理や食品ごとの嗜好度の差は小さかった。
著者
荒木 裕子 山本 直子 石垣 貴志 関川 歩美 丸井 正樹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.170, 2016 (Released:2016-08-04)

【目的】ネームとはタイの発酵ソーセージである。ネームは乳酸発酵により、微生物の繁殖を抑制しており、生で食べることが出来るのが大きな特徴である。我が国でのネームに関する研究は少なく、ネームの安全性についての研究もなされていない。本研究ではより安全で品質の安定したネームを調製することを目的として、条件の異なるネームを調製し調製条件の違いによる安全性および品質を検討した。【方法】試験試料として4種類のネームを調製した。基本的な材料である豚肉、豚耳、ニンニク、トウガラシ、米飯を調製する自然発酵区、また基本材料に発酵を促進する助剤であるヨーグルト、グルコン酸、肉用乳酸菌を添加したネームを調製した。35℃で4日間発酵させ、一般生菌数、大腸菌群、乳酸菌数およびpHを経時的に測定し、調製条件の違いによる安全性および品質を比較検討した。【結果】自然発酵区ではpHの低下は見られたが、大腸菌群が十分に抑制されなかった。ヨーグルト添加区、乳酸菌添加区では乳酸菌が生成する乳酸によってpHが低下し、大腸菌群が抑制された。グルコン酸添加区では4%添加のものは即時にpHが低下し、大腸菌群は強く抑制されたが、酸によるタンパク質変性が見られた。上述の通り、自然発酵区では十分に抑制されなかった大腸菌群がヨーグルト添加区、グルコン酸添加区、乳酸菌添加区において抑制されていることから、ネームの安全性を高めることを目的としたヨーグルト、グルコン酸、乳酸菌の添加は有効な手段であると示唆された。
著者
高澤 まき子 矢島 由佳
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.180, 2016 (Released:2016-08-04)

目的   食生活が著しく多様化している今日では、若い世代層の味覚感度が低下していることが指摘されている。前報では、味覚感度と食生活状況との関連について調査を行った。その結果、食事形態との関連において、中食・外食中心群は内食中心群に比較し、うま味の認知閾値が高かった。味覚感度は日常の食事形態のみならず、生理的、社会心理的な影響により変化をもたらすことが知られている。そこで今回は季節によって味覚感度にどのような変化をもたらすかについて調査を行い比較検討した。方法   管理栄養士養成課程の1年生(18-19歳)81名を対象とし、2015年8月初旬(夏季)と2016年1月下旬(冬季)の2回にわたって無味を加えた五味の識別検査および閾値検査を行った。結果   五味の識別検査での全て正答した人は夏季で69.1%、冬季で30.9%であり冬季の方が低かった。誤答した人の中で誤答率の最も高かった味は、両季ともうま味であり、冬季の方がうま味を酸味、無味に、また無味を酸味、うま味に誤答している人が多かった。五味の刺激閾値では、塩味、酸味、甘味で夏季より冬季の方が高い傾向にあった。認知閾値では夏季において塩味が冬季より低くなり(p<0.01)、酸味、甘味でも夏季の方が低くなる傾向にあった。以上のことから冬季の方が味覚感度は低くなる傾向にあった。
著者
武藤 祐子 小出 治都子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.22, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 髪型が人物の印象に与える影響は少なくない。このことは、マンガの世界においても例外ではなく、登場人物の髪の長さや色が、キャラクターの個性を表すものとして重要な意味を持つことがある。本研究では、特徴的な髪型をしたマンガキャラクターの例として「美少女戦士 セーラームーン」に着目し、美容の技巧・文化的な視点から髪型とキャラクター設定との関係性を考察した。方法 1992年に連載が始まったマンガ『美少女戦士 セーラームーン』の文献資料を基に、主人公セーラームーン(=月野うさぎ)の頭部を5セクション(フロント、サイド、トップ、バック、ネープ)に分類し、各セクションのスタイル構成の分析を行った。結果 髪型の構成を分析した結果、各セクションに、戦士を連想させるアクティブ要素やプリンセスを連想させるエレガント要素などの、キャラクター設定と共通する印象を与える要素がスタイルとして採用されていることが分かった。また、セーラームーンのベースの髪型である「ツインテール」は、主人公の「少女」表象に附与し、更に、このベースの髪型の長さ、色、形状の変容により、物語の中の時代、その時々のキャラクターの役割、心情を表現していることが分かった。これらのことから、キャラクター設定時の髪型がその後の物語の展開に影響する可能性が示唆された。