著者
上野 卓教 吉澤 利弘 町野 毅 庄司 進一 阿武 泉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.2382-2384, 2005-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

特発性低髄液圧(Spontaneous intracranial hypotesion: SIH)症候群とは誘因なく髄液圧の低下をきたすことにより起立性頭痛・悪心・嘔吐・めまいなどを呈する症候群である.症例は24歳女性.突然,座位・立位時の嘔気・頭痛が出現した.髄液検査にて圧が0mm水柱であり,ガドリニウム造影脳MRIでは硬膜の肥厚と著明なガドリニウム増強効果,さらに両大脳半球の下垂を認めたため,特発性低髄圧症候群と診断した. MRミエログラフィーにて上部胸椎レベルに髄液と同等の液体貯留を認め,同部位近傍からの髄液漏出が推定された.
著者
辻 浩史 望月 昭英 保坂 愛 吉澤 利弘 玉岡 晃
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.328-332, 2008
被引用文献数
3

症例は62歳女性で意識障害のため入院した.入院後,意識はすみやかに改善したが,血液検査で炎症所見,髄液蛋白高値をみとめた.頭部MRI上,拡散強調画像,T<sub>2</sub>強調画像にて脳梗塞様高信号域が散在していた.抗生剤,抗ウィルス薬を投与したが炎症反応は改善せず退院した.退院後,亜急性に異常行動が出現し,しだいに活動性が低下したため,再入院した.炎症反応の増悪と,頭部MRIにて脳梗塞様高信号域の増大をみとめた.脳生検にて,intravascular lymphomatosis(IVL)と診断し,rituximab併用多剤化学療法にて寛解しえた.RituximabはIVL治療において重要な追加薬剤となる可能性がある.<br>
著者
永野 敬子 勝谷 友宏 紙野 晃人 吉岩 あおい 池田 学 田辺 敬貴 武田 雅俊 西村 健 吉澤 利弘 田中 一 辻 省次 柳沢 勝彦 成瀬 聡 宮武 正 榊 佳之 中嶋 照夫 米田 博 堺 俊明 今川 正樹 浦上 克哉 伊井 邦雄 松村 裕 三好 功峰 三木 哲郎 荻原 俊男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.111-122, 1995-02-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

近年の疾病構造の欧米型への移行が指摘される中, 日本人における痴呆疾患の割合はアルツハイマー病の比率が脳血管性痴呆を越えたともいわれている. 本邦におけるアルツハイマー病の疫学的調査は, アルツハイマー病の原因究明に於ける前提条件であり, 特に遺伝的背景を持つ家族性アルツハイマー病 (FAD) の全国調査は発症原因の究明においても極めて重要であると考える.私たちは, FAD家系の連鎖分析により原因遺伝子座位を決定し, 分子遺伝学的手法に基づき原因遺伝子そのものを単離同定することを目標としている. 本研究では日本人のFAD家系について全国調査を実施すると共に, これまでの文献報告例と併せて疫学的検討を行った. また, 日本人のFAD家系に頻度の高いβ/A4アミロイド前駆体蛋白 (APP) の717番目のアミノ酸変異 (717Va→Ile) をもった家系の分子遺伝学的考察も行った.その結果, FADの総家系数は69家系でその内, 平均発症年齢が65歳未満の早期発症型FADは57家系, 総患者数202人, 平均発症年齢43.4±8.6歳 (n=94), 平均死亡年齢51.1±10.5歳 (n=85), 平均罹患期間6.9±4.1年 (n=89) であった. APP717の点突然変異の解析の結果, 31家系中6家系 (19%) に変異を認めた. また各家系間で発症年齢に明らかな有意差を認めた. 1991年に実施した全国調査では確認されなかった晩期発症型FAD (平均発症年齢65歳以上) 家系が今回の調査では12家系にのぼった.FADの原因遺伝子座位は, 現在のところ第14染色体長腕 (14q24.3; AD3座位), APP遺伝子 (AD1座位) そのもの, 第19染色体長腕 (19q13.2; AD2座位), 座位不明に分類され, 異なった染色体の4箇所以上に分布していることとなる. 日本人のFAD座位は, APPの点突然変異のあった6家系はAD1座位であるが, 他の大部分の家系ではAD3座位にあると考えられている. 今回の解析結果より, 各家系間の発症年齢に差異があることからも遺伝的異質性の存在を示唆する結果を得たが, FAD遺伝子座位が単一であるかどうかを同定する上でも, 詳細な臨床経過の把握も重要と考えられた.
著者
辻 浩史 望月 昭英 保坂 愛 吉澤 利弘 玉岡 晃
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.328-332, 2008 (Released:2008-05-25)
参考文献数
12
被引用文献数
2 3

症例は62歳女性で意識障害のため入院した.入院後,意識はすみやかに改善したが,血液検査で炎症所見,髄液蛋白高値をみとめた.頭部MRI上,拡散強調画像,T2強調画像にて脳梗塞様高信号域が散在していた.抗生剤,抗ウィルス薬を投与したが炎症反応は改善せず退院した.退院後,亜急性に異常行動が出現し,しだいに活動性が低下したため,再入院した.炎症反応の増悪と,頭部MRIにて脳梗塞様高信号域の増大をみとめた.脳生検にて,intravascular lymphomatosis(IVL)と診断し,rituximab併用多剤化学療法にて寛解しえた.RituximabはIVL治療において重要な追加薬剤となる可能性がある.
著者
吉澤 利弘
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.407-420, 2016-04-01

「治せる認知症」の原因としてビタミン欠乏は頻度は稀ながら重要な課題である。とりわけ高齢者の認知症診療ではビタミンB12欠乏が原因と考えられる症例に遭遇する頻度が高い。一方,葉酸はビタミンB12と代謝経路上密接な関係を有し,その欠乏とビタミンB12欠乏の間には共通点も多い。したがって本論では,ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏に焦点を絞り,これらの欠乏による認知症を診療するうえで必要な情報を概説する。
著者
吉澤 利弘
巻号頁・発行日
1990

神経系には種々の内因性生理活性物質が存在し、神経伝達や神経栄養などにかかわっている。これらの生理活性物質の中で比較的少数のアミノ酸から構成されている一群は一般に「神経ペプチド」と呼ばれており、神経系の機能を維持 ...