著者
福士 元春 名郷 直樹
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.209-215, 2012 (Released:2012-10-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1

要 旨目的 : 後期研修医から相談された事例を分析することで, 研修医が直面する臨床上の問題を分析・構造化し, ポートフォリオを用いた指導・評価のための方法論を模索する. 方法 : ポートフォリオ作成支援のための個別面談でのやりとりを音声記録したものをデータとし, Steps for Coding and Theorization (SCAT) を一部改変した方法にて質的分析を行った. 結果 : 研修医は<医療行使主義>と<医療虚無主義>の両極端の間に立たされ迷う場面に遭遇する. その両極端に悩みながら, <説得の儀式>や<希望つぶし>といった, どちらかの極端に誘導するための方法を用いる傾向がみられる. 結論 : ポートフォリオを介した研修医との面談から, 臨床現場で起きている問題構造の一端を明らかにできた可能性がある. 臨床上の決断の傾向を構造化することで, 臨床現場での指導に役立つ可能性が示唆された.
著者
福士 元春 名郷 直樹
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.65-73, 2011-04-25 (Released:2013-03-25)
参考文献数
14
被引用文献数
4 7

われわれは指導医講習会での経験を通じて,指導医が現場でどのような問題に直面しているかについて十分に把握できていなかったことに気づいた.そこで,指導医講習会のニーズ調査の一環として,質的研究を計画した.1)指導医が初期臨床研修プログラムについて困っていることを探索的に調査することで,これまで明確になっていなかった根底にある問題を分析・構造化することを目的とした.2)指導医講習会に参加した医師214名に対して質問紙調査を行い,自由記述で得られた回答を質的分析した.3)「受け入れることから始めたい」を端緒に,臨床研修制度が受け入れられずに批判し,自身の無知には無自覚となっている指導医の現状【批判にすりかえられた無知】が浮き彫りとなった.4)新医師臨床研修制度導入により,組織に帰属して研修するシステムとしての関係構築フレームが機能しなくなり,現場に大きな混乱をもたらしている.
著者
名郷 直樹 浅井 泰博 三瀬 順一 高木 史江 佐々木 將人 奥野 正孝 五十嵐 正紘
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.215-220, 1998-08-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
14

目的: evidence-based medicineによるレジデント教育の効果を知識, 行動面の変化から評価する.研究デザイン: 自己および外部コントロールによる対照試験セッティング: 大学附属病院対象: 平成6年度自治医大地域医療学で研修中のレジデント15名介入法: 4回の講義と週1回の輪番制のevidence-based medicineに基づく抄録会結果の測定: 1.記述試験による試験点数の変化.2: MEDLINEによる文献検索回数の前年度までの地域医療学レジデント, 内科レジデントとの比較.結果: 4か月後の筆記試験の結果, 平均42点 (100点満点) の点数の上昇が認められ, 全レジデントにおいて点数が上昇した.内科レジデント, 前年度地域医療学レジデントに比し有意な文献検索回数の増加が認められた.結論: evidence-based medicineによる短期間のレジデント教育において, 知識, 行動の両面で好ましい教育効果が認められた.
著者
名郷 直樹
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.9-13, 1997 (Released:2014-07-03)
参考文献数
21

Evidence-Based Medicine (EBM) はより質の高い根拠に基づいて医療を行っていこうという問題解決の一手法であるが、その大きな特徴は患者の問題から始め、患者の問題の解決に終わるという視点、行動科学に基づいたプロセスの組立にある。そして、そのプロセスは以下の四つのステップで示される。1. 患者についての疑問の定式化、2. 疑問についての情報収集、3. 収集した情報の批判的吟味、4. 情報の患者への適用。注目すべきは、それぞれのプロセスが思考様式でなく行動様式として提示されている点である。患者の問題解決のための勉強を医師の行動という面からとらえ、よりよい患者管理を実現する、そこにEBMの特徴と目的が集約されていると考えている。
著者
名郷 直樹
出版者
日赤図書室協議会
雑誌
日赤図書館雑誌 = The Journal of the Japanese Red Cross Hospital Libraries (ISSN:1346762X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-8, 2010-03-01

情報検索に当たっては、まず疑問を整理することが重要である。背景疑問と前景疑問を区別し、背景疑問を、PECO(Patient、Exposure、Comparison、Outcome)で定式化することから情報検索が始まる。検索に使用する情報源については様々なものがあるが、教科書は最新のエビデンスについていけないという欠点があり、原著論文でいちいち勉強するというのは手間がかかりすぎて現実的でない。そこで、エビデンスに基づいて作成された二次資料から始めて、原著論文へと向かう検索戦略を推奨している。また、臨床上の疑問の種類により、それに適したデータベースを選んで検索するというのも重要である。