著者
伊藤 錬磨 金子 佳史 中西 宏佳 辻 国広 吉田 尚弘 冨永 桂 辻 重継 竹村 健一 山田 真也 土山 寿志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1457-1463, 2012 (Released:2012-05-28)
参考文献数
14

症例は60歳男性.ニガクリタケを摂取した30分後に嘔吐,腹痛が出現し来院.第2病日に症状は一旦軽快したが,第3病日に嘔吐,腹痛,黒色便を認めた.第4病日の上部消化管内視鏡検査にて上十二指腸角から十二指腸下行部にかけ連続性,全周性に発赤,浮腫,びらん,出血を認めた.保存的加療にて症状は経時的に軽快した.第9病日の内視鏡検査では十二指腸下行部に出血はみられず,顆粒状粘膜や線状潰瘍を認めた.第18病日に症状軽快し退院.退院後の内視鏡検査では線状潰瘍瘢痕を残すのみであった.キノコ中毒における消化管病変の報告は少なく,またその経時的変化を内視鏡的に追えた自験例は貴重であると考えられた.
著者
吉田 尚弘 土山 寿志 中西 宏佳 辻 国広 冨永 桂 松永 和大 辻 重継 竹村 健一 山田 真也 津山 翔 片柳 和義 車谷 宏
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.2449-2457, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
20

背景:白色球状外観(white globe appearance;WGA)は,狭帯域光観察併用拡大内視鏡検査(magnifying endoscopy with narrow-band imaging;M-NBI)で認識されることのある小さな白色球状物のことである.WGAは胃癌と低異型度腺腫を鑑別することのできる新しい内視鏡的マーカーであることが報告されている.しかし,胃癌と胃炎を含む非癌病変との鑑別にWGAが有用であるかどうかは不明である.方法:胃癌と非癌病変におけるWGAの頻度を比較するために,内視鏡検査を受ける予定の患者994人を対象とした前向き研究を計画した.すべての患者に対して白色光観察で胃癌が疑われる標的病変の有無を評価し,標的病変を認めた場合にはさらにWGAの有無をM-NBIで評価した.すべての標的病変に対して生検または切除を行い,病理学的に評価した.主要評価項目は胃癌と非癌病変におけるWGAの頻度,副次評価項目はWGAの胃癌診断における診断能とした.結果:標的病変として188病変(156人)が最終的に解析され,70病変が胃癌で118病変が非癌病変であった.WGAの頻度は,胃癌で21.4%(15/70),非癌病変で2.5%(3/118)であり,有意に胃癌で高かった(P<0.001).WGAの胃癌診断における正診割合は69.1%,感度は21.4%,特異度は97.5%であった.結論:胃癌におけるWGAの頻度は非癌病変のものに比べて有意に高かった.胃癌診断におけるWGAの特異度は高く,WGAの存在は胃癌診断に有用である.
著者
辻 重継 中西 宏佳 津山 翔 片柳 和義 湊 宏 八尾 隆史 八尾 建史 土山 寿志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1121-1130, 2019-07-25

要旨●目的:表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)に関しては,内視鏡診断のみならず,病理組織学的診断についても明確な診断基準がない.今回は,低異型度高分化型上皮性腫瘍の細胞形質発現に基づく新たな病理組織学的診断アルゴリズムをgold standardとしてNBI併用拡大内視鏡(M-NBI)の診断能について検討した.方法:2008年10月〜2017年11月までに,生検未施行でM-NBIが実施され,内視鏡的切除が施行された34病変を対象とし,VSCSを用いたM-NBI診断能を後方視的に検討した.病理診断は低異型度高分化型上皮性腫瘍の細胞形質発現に基づく診断アルゴリズムに基づき,revised Vienna classificationでCategory 3(C3),Category 4(C4)に分類した.成績:C3 12病変vs C4 22病変であり,C4に対するM-NBIの診断能は,感度95.5%,特異度58.3%,正診率82.4%であった.しかし,M-NBIにてC3を癌と診断した限界病変が存在し,特に有茎性のC3 2病変においてはいずれもM-NBIにて癌と誤診した.有茎性病変を除いたM-NBIの診断能は,感度95.5%,特異度70.0%,正診率87.5%であった.結論:VSCSを用いたM-NBIは,SNADETの質的診断におけるoptical biopsyとして有用である可能性がある.しかし,内視鏡診断と病理組織学的診断の乖離例が存在し,今後より多数の症例を集積したうえでのさらなる検討が必要である.
著者
高山 哲治 五十嵐 正広 大住 省三 岡 志郎 角田 文彦 久保 宜明 熊谷 秀規 佐々木 美香 菅井 有 菅野 康吉 武田 祐子 土山 寿志 阪埜 浩司 深堀 優 古川 洋一 堀松 高博 六車 直樹 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.93-114, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
62

Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群は,PTEN遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とする常染色体優性遺伝性の希少疾患である.消化管,皮膚,粘膜,乳房,甲状腺,子宮内膜,脳などに過誤腫性病変の多発を特徴とする.巨頭症および20歳代後半までに多発性皮膚粘膜病変を発症することが多い.ときに小児期に多発する消化管病変,自閉スペクトラム症,知的障害が診断の契機となる.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある.乳癌,甲状腺癌,子宮内膜癌,大腸癌,腎細胞癌などの悪性腫瘍を合併するリスクが高く,適切なサーベイランスが必要である. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう,基本的事項を解説し,4個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
吉光 雅志 林 宣明 金子 佳史 土山 寿志
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.74-79, 2011 (Released:2011-01-05)
参考文献数
20

症例は28歳,女性.腹痛,粘血便にて入院.O157感染による腸管出血性大腸炎に引き続き,血小板減少,腎不全を発症し,溶血性尿毒症症候群(HUS)と診断した.一時,血小板数の増加・尿量の回復を認めたが全身痙攣と一過性片麻痺にて脳症を発症した.ステロイドパルス療法や血漿交換などの治療により後遺症なく回復した.成人での脳症発症の報告は少なく,今後の治療法確立のため文献的考察を含めて報告する.
著者
齊藤 奈津子 土山 寿志 大森 俊明 山田 真也 島崎 英樹
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.268-273, 2004-05-25
被引用文献数
5 7

従来本邦では, E型肝炎の発生は稀であると考えられてきたが, 近年海外渡航歴のない国内発症例が報告されている. 今回, 北陸では初の報告となるE型急性肝炎の国内感染, 発症例を経験した. 症例は50歳男性. 海外渡航歴, 輸血歴, 動物の飼育歴, 薬剤服用歴及び, 不特定な人との性的接触はなかった. 2002年3月下旬より全身倦怠感, 褐色尿が出現し4月4日当科受診. 血液検査, 画像所見より急性肝炎と診断され入院となった. 対症療法にてトランスアミナーゼは速やかに改善したが, 黄疸は遷延化した. ビリルビン吸着療法計7回の後, 黄疸も改善傾向を示し, 第56病日目に退院となった. 入院時血清よりIgM型抗HEV抗体, HEV-RNA陽性が判明し, 本症例はE型急性肝炎と診断された. HEVは genotype IIIで, その塩基配列は既報のJRA 1株と最も高い一致率 (94.9%) を示した. HEVは日本国内に広く定着していると考えられた.