著者
佐藤 正人 藤田 学 坪井 潤一
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.49-55, 2023-01-15 (Released:2023-02-07)
参考文献数
41

種苗放流されるヤマメ養殖魚との交雑が野生サクラマスの生活史形質に及ぼす影響を評価するため,米代川産サクラマスの雌と関東地方由来のヤマメ養殖魚の雄を交雑させた。作出した交雑魚のスモルト化の盛期は3月であり,養殖ヤマメ(12月)と米代川産サクラマス(4月)の中間であった。1歳における交雑魚の雌の成熟率は43.1%であり,ヤマメ養殖魚(75.7%)と米代川産サクラマス(6.8%)の中間であった。得られた結果から,ヤマメ養殖魚との交雑によってサクラマス地域個体群の生活史特性が変化する可能性が示唆された。
著者
坪井 潤一 片野 修 水本 寛基 荒木 仁志
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2224, (Released:2023-09-08)
参考文献数
38

オオクチバスMicropterus nigricansは水圏生態系に大きな影響を与えることからIUCNの世界の侵略的外来種ワースト100に指定されている。オオクチバスの駆除は多くの湖沼や河川で行われているが、小規模な水域における池干しを除くと、完全駆除に成功した事例は少ない。そこで本研究では、長野県の金原ダム湖において2007年からオオクチバス根絶のため、シュノーケリングによる産卵床の除去、仔稚魚のすくい取り、未成魚と成魚のカゴ網、投網、刺し網、手づかみ、釣り、水中銃による捕獲を行い、シュノーケルを用いた潜水調査や環境DNAの解析により個体群のモニタリングを行った。幼魚の捕獲にはアイカゴが、大型魚を除く未成魚、成魚については岸の水深変化に対応した「かけ上がり用刺し網」が、大型魚については水中銃が効果的であった。年間捕獲個体数は2010年に1,472個体に達した。産卵床数は2012年に131箇所に達したが、その後急速に減少した。2014年には産卵床の見逃しにより約5,000個体の稚魚が生じた。しかし、陸上および水中から、たも網を用いて捕獲を行い、その大部分が捕獲された。興味深いことに、オオクチバス駆除にともなって、トウヨシノボリRhinogobius kurodaiが増加し、オオクチバスの卵を捕食するところが確認された。2016年以降産卵床は形成されず、成魚についても、2018年に1個体が捕獲されてから観察されなくなった。以上の結果から、金原ダム湖のオオクチバスは完全に駆除されたか、わずかに生息していたとしても残存個体が高齢化するなどして新たに繁殖することができず、機能的に根絶したものと考えられる。一方、オオクチバスの種特異プライマーを用いた環境DNA解析は2018年から2022年にかけての計4回全てで微量ながら陽性となっており、少なくともダム湖周辺にはオオクチバス生息の可能性が示唆された。このことから、ダム湖のオオクチバス根絶後も再導入リスクは依然残されており、今後も継続的・定期的なモニタリングが重要と考えられる。
著者
芳山 拓 坪井 潤一
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.176-178, 2019-03-15 (Released:2019-04-02)
参考文献数
20

降海型アメマスとサクラマスを狙ったルアー釣り遊漁において,鈎の形状および装着方法による掛かりやすさの違いについて検討した。本研究では一般的に用いられるトリプルフックと,フッキングダメージが小さいとされるシングルフック,一か所に2本のシングルフックを装着する方法の3種類について,掛かった魚のうち釣獲に成功した割合を比較検討した。その結果,シングルフックを2本装着する方法が,掛かりやすさと鈎による損傷軽減を最もよく両立し,キャッチアンドリリースを前提とした場合に有効であると考えられた。
著者
坪井 潤一 森田 健太郎 松石 隆
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.180-185, 2002-03-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
28
被引用文献数
14 15 9

北海道南部の4河川において,天然のイワナSalvelinus leucomaenisを用いて,キャッチアンドリリース後の成長,生残,釣られやすさを調べた。釣獲直後の死亡率は6.7%であり,過去の研究結果に近い値であった。一方,キャッチアンドリリースが行われた個体において,成長率や生残率の低下は認められなかった。また,釣られやすさは釣獲経験のある個体と無い個体で同程度であった。よってキャッチアンドリリースを行うことは資源量および釣獲量の増大に有効であることが示唆された。
著者
芳山 拓 坪井 潤一 松石 隆
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.461-472, 2021-09-15 (Released:2021-10-01)
参考文献数
38
被引用文献数
1

遊漁対象種の希少性や生物学的特性の違いに着目し,北海道然別湖,朱鞠内湖および洞爺湖における遊漁者を対象に,遊漁者の満足度と釣果の関係を比較した。その結果,1)希少魚の釣果は1尾の釣果が遊漁者の満足度を大きく高める,2)希少魚の釣果はその魚種が1番の狙いの魚種でなくとも遊漁者の満足度に影響を与えうる,3)大型に育つ遊漁対象種では釣獲尾数よりも体サイズに満足度の主眼がおかれる,4)遊漁対象種に食用としての価値が高い場合,遊漁者にとって満足といえる釣獲尾数はより多くなる,という傾向が明らかになった。
著者
芳山 拓 坪井 潤一
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.18-00029, (Released:2019-02-15)
参考文献数
20

降海型アメマスとサクラマスを狙ったルアー釣り遊漁において,鈎の形状および装着方法による掛かりやすさの違いについて検討した。本研究では一般的に用いられるトリプルフックと,フッキングダメージが小さいとされるシングルフック,一か所に2本のシングルフックを装着する方法の3種類について,掛かった魚のうち釣獲に成功した割合を比較検討した。その結果,シングルフックを2本装着する方法が,掛かりやすさと鈎による損傷軽減を最もよく両立し,キャッチアンドリリースを前提とした場合に有効であると考えられた。
著者
坪井 潤一 松石 隆 渋谷 和治 高田 芳博 青柳 敏裕 谷沢 弘将 小澤 諒 岡崎 巧
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.16-00039, (Released:2016-10-20)
参考文献数
24

西湖で発見されたクニマスは,近縁種であるヒメマスと区別されずに釣獲されている。毎年,解禁から2日間,ビクのぞき調査を行い,鱗による年齢査定,遺伝子解析による種判定を行った。Age-length keyから,体長組成分布を年齢組成に変換した。年齢組成から,平衡状態を仮定して全減少係数Zを推定し,寿命から得られた自然死亡係数を用いて,漁獲係数Fを推定した。総釣獲尾数CとF,Zの関係から資源尾数Nを推定し,クニマスの比率を乗じた結果,クニマス資源量は4,300-11,000尾と概算された。
著者
芳山 拓 坪井 潤一 松石 隆
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.858-871, 2018-09-15 (Released:2018-10-19)
参考文献数
23
被引用文献数
4 5

適切な管理の下での希少魚を対象とした遊漁は,遊漁者の消費を通じて希少魚を保全する社会的・経済的根拠を強める。本研究では,北海道然別湖におけるミヤベイワナ遊漁と,朱鞠内湖におけるイトウ遊漁において,遊漁者の消費実態を明らかにした。どちらの湖ともに,全国各地から遊漁者が訪れていた。遊漁者がそれぞれの湖で釣りをするために消費した金額は,然別湖では年間3,328万円,朱鞠内湖では4,156万円と推定された。このうち,交通費以外はほぼすべて遊漁料や宿泊滞在費として釣り場近隣地域で消費されたと考えられた。
著者
遠藤 辰典 坪井 潤一 岩田 智也
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.4-12, 2006-06-25 (Released:2018-02-09)
参考文献数
28
被引用文献数
12

砂防ダムなど河川工作物による段差は、河川に生息する生物にとって往来を妨げる障壁となる。特に魚類は、川に沿った線的な移動を余儀なくされることから、隔離の影響が著しく大きくなる。そのため、河川工作物によって分断化された場合、工作物上流に隔離された集団が絶滅している可能性がある。そこで、本研究では河川工作物がイワナSalvelinus leucomaenisとアマゴOncorhynchus masou inhikawaeの生息分布に与える影響を調査した。2004年6月から9月に、放流魚と交雑の無い在来個体群の生息が期待される富士川水系の小河川において野外調査を行った。流程に沿った潜水目視により2種の分布域を調べ、GPSによって分布最上流地点および河川工作物の正確な位置を把握した。在来個体群が生息していた29河川に設置されている工作物は計356基(1河川あたり12.3基)であり、全てにおいて魚道は併設されていなかった。調査の結果、1970年代に河川最上流部までイワナ、あるいはアマゴが生息していたが、本調査を行うまでに工作物の上流域で絶滅したと推定される河川が、両種ともに確認された。また、2種の共存河川も5河川から1河川に減少していた。ロジスティック回帰分析を用いて、最上流にある河川工作物(UAB)より上流の2種の生息に影響を及ぼす要因を検討した結果、種、河川にある工作物数、UABより上流の集水面積が有効な説明変数として選択された。すなわちUAB上流の個体群の存在確率は、アマゴの方が低く、またUAB上流の集水面積(生息水域)が小さいほど、工作物数が多いほど低かった。このモデルから、個体群維持(50%個体群存在確率)に必要な集水面積は、イワナでは1.01km^2、アマゴでは2.19km^2と推定され、これより上流に工作物が設置された河川ほど、工作物上流に隔離された集団が絶滅する可能性が高くなることが示された。
著者
坪井 潤一 高木 優也
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.12-17, 2016 (Released:2016-02-03)
参考文献数
27
被引用文献数
4 5

全国 13 水系 25 地点において潜水目視によるアユの個体数カウントおよび環境計測を行った。解析の結果,放流量に関係なく,⑴川幅が狭い川ほど,⑵河床に占める長径 25 cm 以上の石の比率が高い川ほど,⑶浮き石の比率が高い川ほど,アユの観察個体数が多いことが明らかになった。また,那珂川において行った調査では,アユの観察個体数と友釣りによる釣獲個体数に正の相関が認められたため,潜水目視で得られたアユの観察個体数は,友釣りの対象となるアユ資源量の指標として有効であることが明らかになった。
著者
芳山 拓 坪井 潤一 松石 隆
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.21-00007, (Released:2021-08-25)
参考文献数
38
被引用文献数
1

遊漁対象種の希少性や生物学的特性の違いに着目し,北海道然別湖,朱鞠内湖および洞爺湖における遊漁者を対象に,遊漁者の満足度と釣果の関係を比較した。その結果,1)希少魚の釣果は1尾の釣果が遊漁者の満足度を大きく高める,2)希少魚の釣果はその魚種が1番の狙いの魚種でなくとも遊漁者の満足度に影響を与えうる,3)大型に育つ遊漁対象種では釣獲尾数よりも体サイズに満足度の主眼がおかれる,4)遊漁対象種に食用としての価値が高い場合,遊漁者にとって満足といえる釣獲尾数はより多くなる,という傾向が明らかになった。
著者
坪井 潤一 森田 健太郎 松石 隆
出版者
日本水産學會
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.180-185, 2002 (Released:2011-03-05)

キャッチアンドリリースされたイワナの成長・生残・釣られやすさ 坪井潤一、森田健太郎、松石 隆(北大院水) 北海道南部の4河川において、天然のイワナSalvelinus leucomaenisを用いて、キャッチアンドリリース後の成長、生残、釣られやすさを調べた。釣獲直後の死亡率は6.7%であり、過去の研究結果に近い値であった。一方、キャッチアンドリリースが行われた個体において、成長率や生残率の低下は認められなかった。また、釣られやすさは釣獲経験のある個体と無い個体で同程度であった。よってキャッチアンドリリースを行うことは資源量および釣獲量の増大に有効であることが示唆された。 日水誌、68(2)、180-185(2002)
著者
坪井 潤一 森田 健太郎 松石 隆
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.180-185, 2002-03-15
参考文献数
28
被引用文献数
6 15

北海道南部の4河川において,天然のイワナSalvelinus leucomaenisを用いて,キャッチアンドリリース後の成長,生残,釣られやすさを調べた。釣獲直後の死亡率は6.7%であり,過去の研究結果に近い値であった。一方,キャッチアンドリリースが行われた個体において,成長率や生残率の低下は認められなかった。また,釣られやすさは釣獲経験のある個体と無い個体で同程度であった。よってキャッチアンドリリースを行うことは資源量および釣獲量の増大に有効であることが示唆された。
著者
坪井 潤一 寺島 祥子 高野 倫一 森 広一郎 鈴木 俊哉 石原 学 高木 優也 小森 謙次
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.17-00065, (Released:2018-05-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1

友釣りおよび投網を用いて879個体のアユを捕獲しEdwardsiella ictaluriのPCR保菌検査を行った。週の平均水温が高いほどE. ictaluriの陽性率が高く,最も陽性率の高かった7/31-8/6には,週の平均水温が25℃以上を記録した。同期間中,投網で捕獲されたアユの陽性率は20.4%であったが,友釣り個体では陽性個体は確認されなかった。日中の平均水温が高いほど友釣りのCPUEが低かった。E. ictaluri感染は友釣りでの漁獲不振を招く可能性があることが示唆された。
著者
坪井 潤一 森田 健太郎 JUN-ICHI TSUBOI KENTARO MORITA 北海道大学大学院水産科学研究科:(現)山梨県水産技術センター 東京大学海洋研究所:(現)(独)水産総合研究センター北海道区水産研究所 Graduate School of Fisheries Sciences Hokkaido University:(Present address) Yamanashi Fisheries Technology Center Ocean Research Institute University of Tokyo:(Present address) Hokkaido National Fisheries Research Institute Fisheries Research Agency
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.365-367, 2004-05-15
参考文献数
17
被引用文献数
4

釣られやすさの種間差を明らかにすることは, 天然個体群保全や放流指針策定において重要である。本研究では, 野生化したニジマスと天然のイワナが生息する自然河川において餌釣りとフライフィッシングを行い, 釣られやすさの種間差を比較した。その結果, 餌釣りではイワナの方がニジマスよりも釣られやすかったが, 逆にフライフィッシングではニジマスの方がイワナよりも釣られやすかった。放流直後のニジマスは非常に釣られやすいと考えられてきたが, 自然水域に馴化した個体や再生産された個体では, 釣られにくくなることが示唆された。