著者
中北 英一 田中 賢治 坪木 和久 大石 哲 中川 勝広 鈴木 善晴 大石 哲 坪木 和久 鈴木 賢士 川村 誠治 高橋 劭 田中 賢治 中川 勝弘 市川 温 杉本 聡一郎 鈴木 善晴 出世 ゆかり 大東 忠保 山口 弘誠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

豪雨災害の軽減を目指して、次世代型偏波レーダーの降水量推定・降水予測への利用を目的に、偏波レーダーとビデオゾンデの同期集中観測を実施し、その結果、降水粒子の粒径と種類の推定手法を構築することに成功した。さらに、モデル予測への応用や現象の理解を深めることで降水量推定・降水予測の高度化を実現した。
著者
坪木 和久
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本課題では日本海上に発生したポーラーロウについて、数値実験を行なった。また、総観場の特徴、降水系のレーダーから見た特徴を調べた。より解像度の高いモデルにより日本海西部に発生したポーラーロウについて数値実験を行ない、その詳細な構造を調べた。解像度をあげることにより、ポーラーロウの発生した収束帯の詳細な構造が見られた。この収束帯は大陸東岸にある山体によって形成されたものであるが、収束帯上には正の渦度と負の渦度を持つ直径100km程度の渦が列状にならんだ構造が見られた。ポーラーロウはそのほぼ南端に発達し、大きな正の渦度を持っていた。日本海西部のポーラーロウについては傾圧性の他、海面からの顕熱・潜熱による加熱が擾乱のエネルギー源になっていること、北海道西岸のものについてはこれらだけでなく上空にある寒冷渦が下層のポーラーロウとカップリングしていることなどが明らかになった。カナダ東岸のラブラドル海に発生するポーラーロウについても数値実験を行なった。この数値実験にはまず総観規模の低気圧をシミュレートすることが重要で、その擾乱のサブシステムとしてポーラーロウが発生することが明らかになった。数値実験でシミュレートされたポーラーロウは上空の寒冷渦の下にあり、北海道西岸のポーラーロウとよく似た特徴を持つものであることが明らかになった。日本海上のポーラーロウの数値実験については、比較的良く現実を再現するものが得られた。これは日本付近のデータが豊富にあることが結果を良くしていると考えられた。これらから日本海上のポーラーロウについてはその構造が、かなり明らかにされてきた。一方で、カナダ東岸のものについては、数値実験によりポーラーロウに近い物は再現できたが、初期値を変えると発生しなかったり、現実のものほど強いものが再現されなかったりで、初期値・境界値の与え方に問題が残った。特に初期値の初期化において発散場が必要異常に弱められる点が問題と思われる。これらを解決するために非断熱加熱を初期に取り入れるための改良を行なった。これを観測された事例に適用しさらにシミュレーションをおこなう予定である。
著者
木村 龍治 坪木 和久 中村 晃三 新野 宏 浅井 冨雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本課題の重要な実績として、梅雨期の集中豪雨をもたらしたメソ降水系のリトリ-バルと数値実験を行ないその構造と維持機構を明らかにしたことと、関東平野の豪雨をもたらしたレインバンドの発生機構を明らかにしたことが挙げられる。1988年7月に実施された梅雨末期集中豪雨の特別観測期間中、梅雨前線に伴ったレインバンドが九州を通過し、その内部の風と降水のデータがドップラーレーダーのデュアルモード観測により得られた。このデータにリトリ-バル法を適用することによりレインバンドの熱力学的構造を調べ、維持機構を明らかにした。これにより対流圏中層から入り込む乾燥空気がメソβ降水系を形成維持する上において重要であった。またこの結果を2次元の非静力学モデルを用いて数値実験により検証したところ、この結果を支持する結果が得られた。さらに3次元の数値モデルを用いて降水系を再現し、その詳細な構造を明らかにした。関東平野において発生したメソ降水系のデータ収集とその解析を行なった。1992年4月22日、温帯低気圧の通過に伴い関東平野で細長いメソスケールの降雨帯が発生した。その主な特徴は、弧状の連続した壁雲の急速な発達により降雨帯が形成された点で、他の例に見られるような多くの孤立対流セルの並んだ降雨帯とは異なるものであった。この降雨帯は、それ自身に比べてはるかに広く弱い降雨域の南端に発達したもので、Bluesteinand Jain(1985)の分類では"embedded-areal-type"に属するものであった。最終年度には、メソ降水系の中でも特に梅雨前線に伴うメソβスケールの降水系について、平成8年6月27日から7月12日まで、北緯30度46.8分、東経130度16.4分に位置する鹿児島県三島村硫黄島で観測を行った。この観測期間中には気象研究所、名古屋大学大気水圏科学研究所、九州大学理学部、通信総合研究所など他の研究期間も同時に観測をしており、結果として大規模な観測網を展開したことになった。これらの研究機関の間ではワークショップを開きデータ交換も行なわれた。
著者
坪木 和久
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

集中豪雨や豪雪をもたらす激しい降水系は、メソスケール(中規模、水平スケールで数10kmから数100kmの規模)に組織化された対流システムである。これをメソ対流系と云う。メソ対流システムのリトリーバルでは、ドップラーレーダーの速度場の解析法を発展させるとともに、雲解像モデルの開発が不可欠である。メソ対流系は100kmオーダーの構造を持っており、それを構成する積乱雲は数キロメートルオーダーの構造を持っている。これらのシミュレーションにはこうした異るスケールの構造を同時にシミュレーションできるモデルが必要である。ここで開発するべき雲解像モデルは、広域の領域を非常に細かい解像度で覆うものでなければならない。そこで高速の並列計算機で実行できる雲モデルの開発を行った。ここで開発したモデルは、基本方程式系は非静力学圧縮系で、座標系は地形に沿う3次元直交座標である。変数は、流体力学過程について、流れの3成分、温位、気圧、雲物理過程について、水蒸気、雲水、雨水を用いている。雲物理過程は現在のところバルクの暖かい雨のみを含むが、将来的にはバルクの冷たい雨、さらに詳細な雲物理過程の導入を計画している。この新モデルは並列計算機用にデザインされたもので、大規模な領域、高解像度のシミュレーションができる。このモデルのテストとして、ドライの大気では山岳波、KH不安定等をテストした。また湿潤大気では、1999年9月24日に愛知県豊橋市で、台風18号に伴って発生した竜巻のシミュレーションを行った。広領域でかつ100mの水平解像度のシミュレーションで竜巻の親雲となる準定常的なスーパーセルが形成され、その中心部付近で竜巻に相当する規模と強さの渦が発生した。これより雲解像モデルの並列計算により竜巻をその親雲と同時にシミュレーションでき、そのメカニズムを解析できる可能性が示された。この他に既存のモデルを用いて、梅雨時に小規模な山岳の風下に形成される降雨帯のシミュレーションを行い、その形成メカニズムについて調べた。