著者
坪木 和久 高橋 暢宏 篠田 太郎 大東 忠保 中山 智喜 森 浩一 山田 広幸 伊藤 耕介 山口 宗彦 新垣 雄光 松見 豊
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

1.航空機観測:台風の航空機観測で用いるドロップゾンデ受信システムとして、2チャンネル2系統受信機を開発した。合計4チャンネル受信機として使用するが、2系統にすることで一系統が動作しない場合でももう一方で受信できるという機器障害への対応性が高いという特長を備えている。また、パラシュートを用いない小型軽量の砲弾型ドロップゾンデを開発した。これらを使用する航空機GIIに搭載し受信試験を実施し、良好な受信が可能なことを確認した。これらにより次年度から開始するドロップゾンデ観測が可能となった。また、台湾から観測タイムテーブルの例を提供してもらい、台風の航空機観測の実施計画を作成した。さらに雲解像モデル・数値予報モデルを用いた予測システムを構築し、台風強度について新たな感度解析法の定式化を行った。2.超音波風速計観測:強い台風の通過の頻度が高い、沖縄県南西諸島の多良間島に長期間連続観測を行える超音波風速計と微気圧計を設置し観測を開始した。これにより地形の影響を受けにくい地上気象データを連続して観測している。3.ドローン観測:台風の接近の無いときにドローンの試験飛行を行い、2kg程度の粒子ゾンデおよびエアロゾルゾンデをつり下げた観測実験を行い、ある程度の風速でもホバリングによる観測が可能であることや飛行における問題点を明らかにした。雲粒子ゾンデを改良し、波しぶきを観測できるようにし、実際にドローンを用いて海上に吊り下げて波しぶき粒子の観測ができることを示した。4.レーダおよびゾンデ観測:Kaバンド偏波雲レーダを沖縄本島に設置し、琉球大学に設置してあるXバンド偏波レーダ、Cバンド偏波レーダと組み合わせた観測を暖候期に連続的に実施した。また、雲粒子ゾンデによる雲粒子観測を実施し、偏波レーダ観測との比較を行った。これらの観測では雲解像モデルを用いた予報を毎日実施し、観測のサポートを行った。
著者
坪木 和久 耿 驃 武田 喬男
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.777-783, 2000-11-30
参考文献数
7
被引用文献数
12

Three severe tornadoes occurred in Tokai District, the central part of Japan, on 24 September 1999 when Typhoon 9918 moved northeastward over the westernmost part of Japan. Photograph and video images showed that their width was several hundred meters and their rotation was cyclonic. The Doppler radar of Nagoya University observed the parent mesoscale convective systems of the tornadoes. PPI display of Doppler velocity showed five meso-cyclones passed over the district during the period from 1100 to 1230 JST, 24 September 1999. Three meso-cyclones of the five were accompanied by the tornadoes. The Doppler radar observation found characteristics of supercell in the convective systems : a hook-shaped echo and a bounded weak-echo region. Vorticity of the meso-cyclones estimated from the Doppler velocity was an order of 10^<-2>s^<-1>. The sounding at 0900 JST, 24 September 1999 at Shionomisaki showed that the lower atmosphere was significantly unstable and the vertical shear was strong. CAPE of the profile was 2140 J kg^<-1>. This condition was favorable for formation of a supercell. In order to examine whether the profile had a potential to produce a supercell, we performed a numerical simulation experiment using a cloud-resolving model (ARPS). The result showed that a quasi-steady supercell was formed with a significant vorticity at the central part of the intense upward motion. The result suggests that the tornadoes were produced by intense stretching of the vorticity by the intense upward motion.
著者
坪木 和久 藤吉 康志 若濱 五郎
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.985-999, 1989 (Released:2007-10-19)
参考文献数
30
被引用文献数
14 13

本研究は、主に一台のドップラーレーダーを用いて、1986年1月20日、石狩平野を南西方向に通過した寒冷前線型の収束雲の運動学的構造とレーダーエコー構造を調べたものである。40kmの幅を持つ収束雲の移動は陸風前線の進行と一致した。陸風前線の形と力学的構造は室内実験の密度流に類似していた。1-2kmの波長を持つケルビン-ヘルムホルツ不安定波が、陸風と北西風の境界に沿って観測された。寒冷前線型では、温暖前線型より強い下層収束とその結果生じた上昇流が前線の前方に存在した。一方、温暖前線型ではみられなかった明瞭な下降流が、前線の後方に存在した。また、このメソスケールの鉛直循環(~15km)の他に、温暖前線と同様な小スケールの循環(~6km)がみられた。前線の前方では上昇流によって対流性エコーが発達し、後方では下降流のためエコーは急速に衰弱する。上昇流は対流不安定層内で最大となることから、下層収束と対流不安定層の存在が、収束雲の発達に重要であると考えられた。
著者
中北 英一 鈴木 賢士 坪木 和久 大石 哲 川村 誠治 橋口 浩之 高橋 劭 城戸 由能 田中 賢治 中川 勝弘 岩井 宏徳 市川 温 杉本 聡一郎 鈴木 善晴 出世 ゆかり 若月 泰孝 相馬 一義 大東 忠保 山口 弘誠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2010-04-01

集中豪雨やゲリラ豪雨による水災害軽減のための総合的基礎研究を実施した。最新型偏波レーダーとの同期フィールド基礎観測実験においてビデオゾンデ観測の汎用化をはかることでこれまで夢に描いてきた積乱雲内の多地点連続観測を実現するとともに、ヒートアイランドの影響を受ける都市域での積乱雲形成・発達過程のマルチセンサー同期観測の緒も開いた。それらを土台に積乱雲のモデル化と豪雨予測手法の開発を行い、加えて早期警戒情報提供や水位予測などの水管理に重要な手法をも構築した。特に、開発したゲリラ豪雨の早期探知・危険性予測手法は国土交通省で現業化され試験運用が開始されており、科学的にも社会的にも意義深い貢献を果たした。
著者
坪木 和久 上田 博 篠田 太郎 出世 ゆかり 中北 英一 林 泰一 中北 英一 林 泰一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

2006年にドップラーレーダを、宮古島と多良間島に移設し観測を行った。2006年は梅雨、台風3、5、13号の観測を実施した。2007年は台風12号と15号の観測を行い、これらの台風の詳細な構造を明らかにした。観測領域の36時間予報実験を毎日行った。雲解像モデルを用いて観測された台風の超高解像度のシミュレーションを行い、発達メカニズムや構造を明らかにした。レーダデータの雲解像モデルへのデータ同化法を開発し、高精度量的予測に向けた開発を行った。台湾の研究者と国際協力を進めた。
著者
坪木 和久 榊原 篤志
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.351-373, 2006-11-30
被引用文献数
3

Accurate and quantitative forecast of heavy rainfall is one of the most important problems for disaster prevention of typhoons. A simulation experiment of Typhoon 0423 (Tokage), which landed over Japan on 20 October 2004, was performed using a cloud-resolving numerical model named CReSS (the Cloud Resolving Storm Simulator) with a horizontal resolution of 1km within a large computational domain on the Earth Simulator. The result shows that the typhoon-track, rain distribution and rainfall intensity were quantitatively simulated. The heavy rainfall in the northern Kinki District was simulated successfully. This was associated with the intrusion of the intense upperlevel rainband. The prediction of precipitation by CReSS was compared with JMA surface observations and its accuracy was evaluated statistically using parameters of RMSE, correlation coefficient, threat score, and bias score. The successful results indicate that the cloud-resolving model is useful and effective for the accurate and quantitative prediction of heavy rainfall.
著者
立花 義裕 万田 敦昌 山本 勝 児玉 安正 茂木 耕作 吉岡 真由美 吉田 聡 坪木 和久 中村 知裕 小田巻 実
出版者
三重大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

四方を海に囲まれた日本.その鮮明な四季は極めて特徴的である.日本の気候に対しては,日本を囲む縁辺海の海洋の影響が強くあることを大気と海洋の変動を評価し明らかにした.例えば,梅雨末期に豪雨が集中する理由は東シナ海の水温の季節的上昇が,九州で梅雨期に起こる集中豪雨の発生時期の重要な決定要因であること,日本海の海面水温の高低によって,寒気の気団変質過程に影響を及ぼし,寒波を強化・緩和されることを示した.
著者
中澤 哲夫 別所 康太郎 坪木 和久 斉藤 和雄 榎本 剛 原 昌弘
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

2008年に行った航空機からの台風直接観測による進路予報へのインパクトについて調査を行った結果、ターゲット観測の予報改善効果が確認できたものの、台風第13号と第15号の二つの台風での限られた観測のため、有効性を十分に確認することまでは至っていない。高い感度領域でのデータ同化が、必ずしも予報精度の改善へ寄与していない事例のあることもわかった。台風周辺での観測のインパクトについては、数値予報の成績がよい気象庁やヨーロッパ中期予報モデルなどでは改善率が小さく、逆に米国のモデルなど通常の予報成績があまりよくない場合に改善率が大きいこともわかった。また、台風中心付近のデータをどのように同化システムに取込むかどうかによって予報精度が大きく影響されることが明らかになった。
著者
中北 英一 田中 賢治 坪木 和久 大石 哲 中川 勝広 鈴木 善晴 大石 哲 坪木 和久 鈴木 賢士 川村 誠治 高橋 劭 田中 賢治 中川 勝弘 市川 温 杉本 聡一郎 鈴木 善晴 出世 ゆかり 大東 忠保 山口 弘誠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

豪雨災害の軽減を目指して、次世代型偏波レーダーの降水量推定・降水予測への利用を目的に、偏波レーダーとビデオゾンデの同期集中観測を実施し、その結果、降水粒子の粒径と種類の推定手法を構築することに成功した。さらに、モデル予測への応用や現象の理解を深めることで降水量推定・降水予測の高度化を実現した。
著者
坪木 和久
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本課題では日本海上に発生したポーラーロウについて、数値実験を行なった。また、総観場の特徴、降水系のレーダーから見た特徴を調べた。より解像度の高いモデルにより日本海西部に発生したポーラーロウについて数値実験を行ない、その詳細な構造を調べた。解像度をあげることにより、ポーラーロウの発生した収束帯の詳細な構造が見られた。この収束帯は大陸東岸にある山体によって形成されたものであるが、収束帯上には正の渦度と負の渦度を持つ直径100km程度の渦が列状にならんだ構造が見られた。ポーラーロウはそのほぼ南端に発達し、大きな正の渦度を持っていた。日本海西部のポーラーロウについては傾圧性の他、海面からの顕熱・潜熱による加熱が擾乱のエネルギー源になっていること、北海道西岸のものについてはこれらだけでなく上空にある寒冷渦が下層のポーラーロウとカップリングしていることなどが明らかになった。カナダ東岸のラブラドル海に発生するポーラーロウについても数値実験を行なった。この数値実験にはまず総観規模の低気圧をシミュレートすることが重要で、その擾乱のサブシステムとしてポーラーロウが発生することが明らかになった。数値実験でシミュレートされたポーラーロウは上空の寒冷渦の下にあり、北海道西岸のポーラーロウとよく似た特徴を持つものであることが明らかになった。日本海上のポーラーロウの数値実験については、比較的良く現実を再現するものが得られた。これは日本付近のデータが豊富にあることが結果を良くしていると考えられた。これらから日本海上のポーラーロウについてはその構造が、かなり明らかにされてきた。一方で、カナダ東岸のものについては、数値実験によりポーラーロウに近い物は再現できたが、初期値を変えると発生しなかったり、現実のものほど強いものが再現されなかったりで、初期値・境界値の与え方に問題が残った。特に初期値の初期化において発散場が必要異常に弱められる点が問題と思われる。これらを解決するために非断熱加熱を初期に取り入れるための改良を行なった。これを観測された事例に適用しさらにシミュレーションをおこなう予定である。
著者
木村 龍治 坪木 和久 中村 晃三 新野 宏 浅井 冨雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本課題の重要な実績として、梅雨期の集中豪雨をもたらしたメソ降水系のリトリ-バルと数値実験を行ないその構造と維持機構を明らかにしたことと、関東平野の豪雨をもたらしたレインバンドの発生機構を明らかにしたことが挙げられる。1988年7月に実施された梅雨末期集中豪雨の特別観測期間中、梅雨前線に伴ったレインバンドが九州を通過し、その内部の風と降水のデータがドップラーレーダーのデュアルモード観測により得られた。このデータにリトリ-バル法を適用することによりレインバンドの熱力学的構造を調べ、維持機構を明らかにした。これにより対流圏中層から入り込む乾燥空気がメソβ降水系を形成維持する上において重要であった。またこの結果を2次元の非静力学モデルを用いて数値実験により検証したところ、この結果を支持する結果が得られた。さらに3次元の数値モデルを用いて降水系を再現し、その詳細な構造を明らかにした。関東平野において発生したメソ降水系のデータ収集とその解析を行なった。1992年4月22日、温帯低気圧の通過に伴い関東平野で細長いメソスケールの降雨帯が発生した。その主な特徴は、弧状の連続した壁雲の急速な発達により降雨帯が形成された点で、他の例に見られるような多くの孤立対流セルの並んだ降雨帯とは異なるものであった。この降雨帯は、それ自身に比べてはるかに広く弱い降雨域の南端に発達したもので、Bluesteinand Jain(1985)の分類では"embedded-areal-type"に属するものであった。最終年度には、メソ降水系の中でも特に梅雨前線に伴うメソβスケールの降水系について、平成8年6月27日から7月12日まで、北緯30度46.8分、東経130度16.4分に位置する鹿児島県三島村硫黄島で観測を行った。この観測期間中には気象研究所、名古屋大学大気水圏科学研究所、九州大学理学部、通信総合研究所など他の研究期間も同時に観測をしており、結果として大規模な観測網を展開したことになった。これらの研究機関の間ではワークショップを開きデータ交換も行なわれた。
著者
坪木 和久
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

集中豪雨や豪雪をもたらす激しい降水系は、メソスケール(中規模、水平スケールで数10kmから数100kmの規模)に組織化された対流システムである。これをメソ対流系と云う。メソ対流システムのリトリーバルでは、ドップラーレーダーの速度場の解析法を発展させるとともに、雲解像モデルの開発が不可欠である。メソ対流系は100kmオーダーの構造を持っており、それを構成する積乱雲は数キロメートルオーダーの構造を持っている。これらのシミュレーションにはこうした異るスケールの構造を同時にシミュレーションできるモデルが必要である。ここで開発するべき雲解像モデルは、広域の領域を非常に細かい解像度で覆うものでなければならない。そこで高速の並列計算機で実行できる雲モデルの開発を行った。ここで開発したモデルは、基本方程式系は非静力学圧縮系で、座標系は地形に沿う3次元直交座標である。変数は、流体力学過程について、流れの3成分、温位、気圧、雲物理過程について、水蒸気、雲水、雨水を用いている。雲物理過程は現在のところバルクの暖かい雨のみを含むが、将来的にはバルクの冷たい雨、さらに詳細な雲物理過程の導入を計画している。この新モデルは並列計算機用にデザインされたもので、大規模な領域、高解像度のシミュレーションができる。このモデルのテストとして、ドライの大気では山岳波、KH不安定等をテストした。また湿潤大気では、1999年9月24日に愛知県豊橋市で、台風18号に伴って発生した竜巻のシミュレーションを行った。広領域でかつ100mの水平解像度のシミュレーションで竜巻の親雲となる準定常的なスーパーセルが形成され、その中心部付近で竜巻に相当する規模と強さの渦が発生した。これより雲解像モデルの並列計算により竜巻をその親雲と同時にシミュレーションでき、そのメカニズムを解析できる可能性が示された。この他に既存のモデルを用いて、梅雨時に小規模な山岳の風下に形成される降雨帯のシミュレーションを行い、その形成メカニズムについて調べた。