- 著者
-
沖原 謙
塩川 満久
柳原 英兒
松本 光弘
菅 輝
出口 達也
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1999
本研究の目的は,これまで,現場の指導者を通して言葉で表されてきた複数の選手の動きや,チーム全体の動きを定量化して,分析することでサッカー戦術を客観的に解明していくことであった。この目的を達成するためにDLT法を用いて選手の位置を時系列に沿って座標化し,選手の動きを客観化し,分析を行った。そして本研究の成果については,以下に示すとおりである。1.「攻撃は広く,守備は狭い」という原則と,「一試合を通してチームの状態をコンパクトに保つ」という2つの異なったチーム戦術の原則について分析を行なった結果,本研究の成果では,試合を優位に進めているチームでは,「一試合を通してチームの状態をコンパクトに保つ」という分析結果は得られなかった。「一試合を通してチームの状態をコンパクトに保つ」は,いくつかの先行研究でも試合を優位に進めているチームの現代サッカーの特徴と報告されてきたが,「攻撃は広く,守備は狭く」の原則の方が,よいチームの状態として機能しているという結果が,本研究から得られた。2.各々の選手の時系列に対するスピードの変化の平均を算出し,これをチームのスピードの変化として表すと,対戦チーム間において,スピードの変化には明らかに連動性があった。3.日本代表が採用している守備戦術である"フラットスリー"の分析において,この"フラットスリー"のフィールド上の頻度とスピードの変化を分析することで,フラットスリーの守備戦術が,ゲームにおいて機能しているかどうかという評価を加えられる可能性を示した。4.1で述べた「攻撃は広く,守備は狭い」という原則が優先される時,この原則は相対的なチーム関係において有効であり,攻守の切り替え時に相手チームよりも効率よく広がり,効率よく狭くなる方法が,今後の現代サッカーの新しい理論として構築される基礎研究となるであろう。