著者
松本 圭 塩谷 亨 伊丸岡 俊秀 沢田 晴彦 近江 政雄
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-39, 2009-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究は、注意の瞬き(AB)課題を用いて、脅威語に対する注意バイアスの時間的特性に社会不安が与える影響を検討することを目的としていた。健常な実験参加者(n=40)に、白色の中性語が高速逐次視覚呈示(RSVP)される中に出現する、2つの緑色の標的(TlとT2)の報告を求めた。このAB課題では、T2の内容(一般的・社会的)および情動価(脅威・中性)と、標的間隔を操作した。実験参加者を不安水準によって群分けし、T2に対する正答率を比較した結果、高状態・特性不安群は、通常ABがみられる標的間隔において脅威語のT2に対する正答率の上昇を示し、時間的注意バイアスを有することが示唆された。高社会不安群ではそのような傾向はみられず、むしろ低社会不安群で脅威語に対する時間的注意バイアスがみられることが示唆された。最後に、画像刺激を用いた先行研究の結果と比較しながら、本研究でみられた注意バイアスの時間的特性について議論した。
著者
松本 圭 塩谷 亨 伊丸岡 俊秀 沢田 晴彦 近江 政雄
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.83-95, 2009-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、情動ストループ課題とプローブ検出課題のそれぞれによって測定される注意バイアス指標の収束的妥当性を検討することであった。健常な実験参加者(n=39)に、情動ストループ課題、プローブ検出課題、状態-特性不安検査を実施した。本研究では、情動ストループ課題においては単語タイプをブロック化して呈示する手続きを、プローブ検出課題においては中性語ペアが呈示される試行のプローブへの反応時間を基準として、脅威語に注意が向けられる傾向と、脅威語からの注意の解放が困難となる傾向を切り分ける手続きをそれぞれ用いた。相関分析の結果、情動ストループ課題にみられる脅威語への色命名の遅延が、プローブ検出課題においてみられる脅威語からの注意の解放の困難さと関連していることが示された。ただし、それらと不安との関連はみられなかった。これらの結果から、両課題で測定される注意バイアスの解釈について議論した。
著者
塩谷 亨
出版者
室蘭工業大学
雑誌
室蘭工業大学紀要 = Memoirs of the Muroran Institute of Technology (ISSN:13442708)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.139-152, 2017-03-24

The emphatic particle fo‘i in Samoan and its cognate ho‘i in Tahitian and Hawaiian are both general particles used very frequently. In this paper, the distribution of fo‘i and ho‘i in these three languages is examined to show similarity and difference among them. The general particle fo‘i / ho‘i in all of these three languages may appear at the end of a predicate phrase (which can be a verbal predicate, a nominal predicate, an interrogative, a negative, or a conjunction which occurs in the predicate position) or at the end of a non-predicate noun phrase. The general particle fo‘i in Samoan and ho‘i in Hawaiian can appear after a topic noun phrase. The general particle fo‘i in Samoan and ho‘i in Tahitian can occur between a determiner (which can be a demonstrative, a possessive, or a determiner "other") and a noun. Each of these determiners can form a noun phrase without any following noun.
著者
塩谷 亨
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 = Journal of language and culture of Hokkaido (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.93-118, 2016-03-31

本稿では、青森県地方において方言名として認識されている魚種等の名称のリストを提示し、それについてのいくつかの特徴を明らかにした。方言名としてリストされていた名称には、標準和名と全く異なるもの、標準和名と部分的に共通部分を含むもの、標準和名に方言特有の音変化が生じたと思われるもの、標準和名を短縮した形のもの、標準和名と同一形であるが方言名リストに加えられているものが含まれていた。標準和名と全く異なる方言色が濃い名称は、全国的に広く流通していない、地元以外の一般家庭にはあまり馴染みがないような魚に多く見られる傾向があった。一方で、全国的に広く流通し地元以外の一般家庭でもおなじみの食材で商業上も重要と思われる魚の中には、標準和名では一つの魚種となっているのが何らかの基準で細分化され、それぞれに名称が付与されているものが見られた。これは、地元の人達のそれらの魚に対する関心の高さを反映していると思われる。また、大きさや収穫時期を表す<その魚の特徴を表すキーワード>+<その魚が属するグループを指す一般的な名称>という複合的な形式で下位分類を表すものについては、特に大きさや収穫時期(旬の時期と関連)は商品価値にも影響することから、商業上の重要性が大きく関与していると思われる。
著者
塩谷 亨
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.135-146, 2009-03-30

Hawaiian emotional statives can express two meanings, i.e. (1) 'somebody has a feeling of fear, happiness, pleasure, sadness, and so on', or (2) 'something (or somebody) is the cause of the feeling of fear, happiness, pleasure, sadness, and so on'. This paper examines examples of the predicative use and the attributive use of seven popular emotional statives and shows that the meaning (1) is expressed mostly by the statives in the predicative use, while the meaning (2) is usually indicated by those in the attributive use.
著者
沢田 晴彦 伊丸岡 俊秀 松本 圭 塩谷 亨 近江 政雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.479, pp.139-142, 2005-12-08
参考文献数
5

情動価を持つ単語に対して色命名反応が遅延する情動ストループ効果について、遅延反応パラダイムから検討した.通常の情動ストループ課題では、彩色された情動単語が被験者に呈示された後、即座に発声による色命名が求められる.しかし今回用いた遅延反応パラダイムでは、彩色された情動単語が被験者に呈示された後に、彩色されたターゲットの中から同じ色をボタン押しで選択させた.通常の情動ストループ課題において有意な遅延がある被験者を対象にした実験の結果、単語の呈示時間に関係なく、遅延反応パラダイムにおいて情動単語に対する色選択の遅延は有意にならなかった.この結果は、情動ストループ効果が情動単語への単純な暴露効果には依存せず、反応時に刺激が呈示されることにより生起する視覚的注意に依存した現象であることを示唆している.
著者
松原 好次 塩谷 亨
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

<研究成果の具体的内容>1 ハワイ語再活性化運動の核とも言うべきクラ・カイアプニ(ハワイ語を教育言語とする小・中・高校)におけるイマージョン教育の進展状況(カリキュラム及び教材の開発、学校数の増加など)を明らかにした。同時に、ハワイ語イマージョン教育の抱える課題(高学年の理数系科目担当者及びハワイ語教材の不足など)も明らかにした。2 ハーラウ・フラ(ハワイ伝統舞踊「フラ」の道場)が伝統文化及びハワイ語の保持・継承に果たす役割を明らかにした。特に、alohaの精神など伝統文化に対する尊敬の念を育成することによってハワイ人としての誇りを涵養できるという意味で、ハワイ語再活性化にとって不可欠な存在である点が明らかにされた。3 テレビ・ラジオ・新聞だけでなく、インターネット上で人気の高いコミュニティサイトにおけるハワイ語使用状況を調査することによって、ハワイ語再活性化に果たす新旧メディアの役割を明らかにした。<研究成果の意義・重要性>少数言語としてのハワイ語を再活性化するためには、学校教育以外にもさまざまな場が保障されなくてはしけないことを探ることによって、わが国において近年浮上してきたアイヌ語や琉球語の再活性化、あるいは外国籍児童生徒のための母語保障に関する新たな視点を提供することができた。特に、公教育における少数言語再活性化支援の具体例を提示しただけでなく、イマージョン教育を受けて卒業した若者が、獲得したハワイ語を家庭や職場等で活用していくための施策について明らかにした点は本研究の特筆すべき意義であろう。