著者
岡本 隆嗣 橋本 圭司 大橋 正洋 宮野 佐年
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.868-874, 2004-12-18
参考文献数
25

2000年5月から2003年11月までに,当院入院しリハビリテーションを行った蘇生後脳症患者14名(男性13名,女性1名,平均年齢45.3歳)の機能予後および問題点を,当院入院時データより検討した.発症から入院までの期間は264±294日であった.家族の介護負担感の観点から,発症より1.5~6.5年経過した2004年5月現在の監視の程度をSupervision Rating Scale (SRS)により評価し,自立~部分監視(SRS 1~7)であった6名を予後良好群,常時監視(SRS 8~13)が必要であった8名を予後不良群とした.診療録より後方視的に,Japan Coma Scale(以下JCS)3桁持続期間,脳画像所見でのびまん性脳萎縮の有無,神経心理学的検査,Functional Independence Measure (FIM),当院退院時の転帰,現在の社会参加状況,障害者手帳取得状況について検討を行った.2群間の比較で,JCS 3桁持続時間,びまん性脳萎縮の有無,Mini-Mental State Examination(以下MMSE),Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised(以下WAIS-R),FIM運動・認知でそれぞれ有意差を認めた.リハ病院入院時における,予後予測因子として,これらは有用であると考えられた.予後良好群では,退院後,社会復帰可能となった例が多く見られた.予後不良群では,入院中,神経心理学的検査を施行できない例がみられ,またFIM認知項目は入院中に有意な改善を認めなかった.また身体・認知の両方とも障害されている例が目立ち,退院時と1.5~6.5年経過時の監視程度はほとんど変わらず,手帳・介護保険でのサービスを多く利用していた.
著者
大橋 正洋
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.217-222, 2000-07-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
3
著者
浅井 和康 鴻 信義 柳 清 深見 雅也 遠藤 朝彦 森山 寛 伊藤 裕之 大橋 正洋
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.329-334, 1995-06-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

頸髄損傷患者3症例について, 体位変換時および排尿前後での鼻腔通気度の変化を調べた。その結果, 坐位から仰臥位に体位変換することによって鼻腔抵抗値は上昇し, 排尿することによって低下をみた。これは, 頸髄損傷患者に特有の自律神経過反射 (autonomic hyperreflexia) と呼ばれる現象に伴うものと考えられた。すなわち, 膀胱内の尿の充満などによる麻痺域への刺激が交感神経反射を惹起して全身性の血圧上昇を起こす現象であり, これによって非麻痺域すなわち鼻腔の血管拡張を招き鼻閉をきたす。また健常者でも坐位から仰臥位に体位変換することによってわずかに鼻腔抵抗が増大するが, 頸髄損傷患者では顕著にこの現象が現れることも, 外傷に伴う交感神経系の機能障害が関与していることが示唆された。
著者
大橋 正洋
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.194-199, 2002 (Released:2006-04-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

この数年,高次脳機能障害は,メディアや行政の用語として用いられるようになった。しかしながら,医学領域ではこの語の定義について見解は統一されていない。リハビリテーション医学の分野では,20年以上も以前から,診断や治療についての試みが行われてきた対象である。しかし,主な関心は脳血管障害による失語・失行・失認といった神経学的症候に絞られていた。この数年,救急医療の進歩によって,脳外傷などによるびまん性脳損傷の後,救命された人々がリハビリテーションの現場に来るようになった。これらの人々は,認知,情緒,心理社会的障害などを持つ傾向があり,これらの障害は評価や対応が困難である。高次脳機能障害を持つ人々を支援するためのシステムは,量的にも質的にも十分ではない。1998年,当事者組織が設立され,広報活動を行った結果,この用語が急速に注目をあびるようになった。
著者
岡本 隆嗣 橋本 圭司 大橋 正洋 中地 照子 石井 明美 宮野 佐年
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.678-685, 2004-10-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
16
被引用文献数
5 6

当院で入院の多数を占める脊髄損傷,脳外傷,変形性股関節症患者のHRQOLおよび費用対効果を,EuroQOLを用い調査した.対象は2003年7月~12月に30日以上入院し,質問が理解可能で,重度の合併症がない111名である.調査内容は(1)入退院時FIM,(2)入退院時EuroQOL,(1)5項目法(5 Dimension,以下5D),(2)視覚評価法(Visual Analogue Scale,以下VAS),(3)5Dで問題がある人の割合,(3)費用効用分析,とした.結果は,脳外傷・脊髄損傷はFIMが有意に改善し,5D・VASは,3疾患とも有意に改善した.5D各項目では,脳外傷・脊髄損傷は各項目とも全体的に問題を感じている人の割合が減少し,変形性股関節症では,特に痛み・不安の項目で減少がみられた.診療報酬より算出した入院中の医療費は,脳外傷146.2±50.4万円,脊髄損傷182.2±79.0万円,変形性股関節症138.9±40.7(手術料含むと285.6±71.1)万円であった.患者の状態が退院後も変化しないと仮定した場合の1質調整生存年(Quality adjusted Life Year;QALY)獲得のための医療費は,脳外傷43.1±12.4万円,脊髄損傷42.5±55.1万円,変形性股関節症47.8±48.7(手術料含むと93.2±84.7万円)であった.本調査で,リハビリテーション前後での効用値の有意な増加を確認することができ,3群とも費用効果ありと考えられた.
著者
冨田 祐司 宮野 佐年 渡辺 修 大橋 正洋 片桐 伯真 久保 義郎
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.593-598, 1999-09-18 (Released:2009-09-04)
参考文献数
21
被引用文献数
3 4

脳外傷患者の社会復帰を検討する際の指標としてのWAIS-Rの有用性について検討した.対象は, 55歳以下, 実用的な屋外歩行が可能で, 失語症がない重症脳外傷患者60例である.社会復帰状況を, 就労群と福祉的就労を含む非就労群に分け, 各知能指数と11の下位検査について検討した.就労群で言語性知能指数 (VIQ) 90.4±14.6, 動作性知能指数 (PIQ) 80.5±14.2, 非就労群でVIQ82.3±14.2, PIQ62.3±13.0で, 非就労群のPIQの低下が顕著であった.判別分析を行うと, PIQとその下位検査の絵画配列と符号が両群の判別に有用であった.これらは社会的能力をよく反映し, 重症脳外傷患者の社会復帰を知的側面から検討する場合, 有用な指標になる.
著者
橋本 圭司 大橋 正洋 渡邊 修 宮野 佐年
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.253-256, 2002-05-18
被引用文献数
5

A thirty-seven-year-old man with cognitive, emotional and behavioral dysfunction due to anoxic encephalopathy after a myocardial attack was admitted to nor hospital. The purpose of thin hospitalization wan to evaluate bin impairment and to help bin family to care him at home. Din brain dynfunction wan no nevere that he could not participate in the ordinary rehabilitation program. Bemoan of hin condition, nor rehabilitation team and hin wife communicated closely to obtain mutual agreement shoot the way to deal with his difficult behavioral problems. The therapists treated him with whatever the way that can bring up patient's better responses. As a result of such transdinciplinary team (TDT) approach for about five months, he became to show less problematic behaviors and to be able to live with bin family at home. The TDT approach is reported to be effective to those who have cognitive and behavioral problems such as this patient.
著者
伊藤英一 大橋 正洋 飯塚慎司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.88, pp.9-16, 1995-09-14

頚髄損傷による四肢麻痺者は運動機能のみならず、上肢の感覚機能にも障害を有する。そのため、高い巧緻性を必要とするマウス操作が困難となる場合が多い。そこで、感覚の無い手指やスティックによりポインティング操作を行なうためマウスの代替装置を利用する。しかし、キー操作などによる代替装置では失われた感覚機能を視覚により代替することが必要であり、マウスポインタに集中するべき視線が頻回に移動せざるを得ない。そこで、キーボードなどによる選択や押し替えの必要な方法ではなく、上肢の位置に影響されず、粗大な運動によって二次元の方向を示すことが可能なポインティングデバイスを考案・試作し、評価実験を行なった。Quadriplegics cannot operate the mouse because of paralyzed hand's motor and sensory function. When they use the mouse emulators by keyboard operation or switch operation, they have to move line of sight from the display to the keyboard quite frequently. We developed a pointing device that is not infruenced by position of the upper limb and can operate with limited motor function. This pointing device, "Magic Wand" can reduce excessive line of sight movement when quadriplegics are accessing the computers.
著者
伊藤 英一 大橋 正洋 飯塚 慎司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎
巻号頁・発行日
vol.95, no.237, pp.9-16, 1995-09-14
被引用文献数
1

頚髄損傷による四肢麻痺者は運動機能のみならず、上肢の感覚機能にも障害を有する。そのため、高い巧緻性を必要とするマウス操作が困難となる場合が多い。そこで、感覚の無い手指やスティックによりポインティング操作を行なうためマウスの代替装置を利用する。しかし、キー操作などによる代替装置では失われた感覚機能を視覚により代替することが必要であり、マウスポインタに集中するべき視線が頻回に移動せざるを得ない。そこで、キーボードなどによる選択や押し替えの必要な方法ではなく、上肢の位置に影響されず、粗大な運動によって二次元の方向を示すことが可能なポインティングデバイスを考案・試作し、評価実験を行なった。