著者
太田 岳史
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.37-48, 1989
被引用文献数
6 14

山地での積雪水量の経時変化を簡易な気象要素から推定するため, 降水量と気温のみを用いて積雪水量の経時変化を検討した.その結果, 以下の知見をえた. (1) 降水形態は, た。 (2) 融雪量が0日平均気温1.5~2.0℃で雨と雪の確率がほぼ50%となり, この値は他の地域と大きな相違はなかっとなる日はなく, 厳冬期においては緩やかな季節変化が認められるがほぼ1mm/dayの一定な融雪が生じた.また, 日平均気温0℃以上での日平均気温と日融雪量の関係はべき数関係にあった. (3) 標高による降水量の増加比は積雪水量の増加比から推定できた. (4) 上記の観測結果にもとづいて積雪水量の推定を行ったところ, 再現性は良好であった.また, 対象地域では, 下部の標高240~850mの間での標高と降水量増加比の関係を1次式で近似することで, 標高1060mまでの積雪水量をほぼ安定した精度で推定可能であった。
著者
飯島 慈裕 会田 健太郎 浅沼 順 石川 守 岩崎 博之 太田 岳史 小谷 亜由美 佐藤 友徳 篠田 雅人 杉浦 幸之助 朴 昊澤 檜山 哲哉 平沢 尚彦 金子 有紀 堀 雅裕 GOMBOLUUDEV Purevjav OYUNBAATAR Dambaravjaa IIJIMA Yoshihiro AIDA Kentaro ASANUMA Jun ISHIKAWA Mamoru IWASAKI Hiroyuki OHTA Takeshi KOTANI Ayumi SATO Tomonori SHINODA Masato SUGIURA Konosuke PARK Hotaek HIYAMA Tetsuya HIRASAWA Naohiko KANEKO Yuki HORI Masahiro
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学大学院生物資源学研究科紀要
巻号頁・発行日
no.43, pp.15-25, 2017-09

宇宙航空研究開発機構によって2014年2月に打ち上げられた全球降水観測計画(GPM: Global Precipitation Measurement)の主衛星は高緯度地域の降水量が新規に得られる。このデータの検証は,今後の寒冷圏陸域の水循環・水資源研究等への利用促進に向けた観測精度の向上を図るうえで必要不可欠である。本研究プロジェクトでは,観測研究を実施してきた国内外の機関が協働して,北東ユーラシア(主としてモンゴル・東シベリア)で既設の観測システムを改良し,他の衛星データ解析と合わせて,夏季降水(降雨),冬季降水(降積雪)およびそれらの空間分布に関する地上検証を行う。また,今後の応用研究に向けて,陸面モデル・分布型河川流出モデル,メソ気象モデルを利用した,地域規模のGPM観測データの利用可能性を検討する。
著者
太田 岳史 小谷 亜由美 伊藤 章吾 花村 美保 飯島 慈裕 マキシモフ トロフューム コノノフ アレキサンダー
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

筆者らは,1998年よりロシア・ヤクーツクの北方,約20kmに位置するスパスカヤパッド・カラマツ実験林において,渦相関法を用いた全生態系からの蒸発散量,光合成量の観測を行ってきた.植生条件は上層植生は2007年6月に展葉していた樹木が枯れ始め,下層植生は2006年~2007年よりコケモモから湿地性の草本や低木が繁茂するようになった.気象条件は,降水量は,1998年~2000年は平年並み,2001年~2004年は渇水年,2005年~2009年は豊水年,2010年~2011年は平年並みとなった.その間に,大気側の成分(放射量,気温,飽差など)はあまり大きな経年変動をしなかったのに較べて,地表下の成分(地温,土壌水分量)は明確な経年変動を示した.そして,蒸発散量,光合成量は,この地表面下の成分により変化したと考えられた.すなわち,土壌水分量と蒸発散量は関係は2007年から低下しており,土壌水分量と光合成量は1年遅れて2008年より低下した.つまり,2005年から土壌水分量は上がりはじめ,2年の時間遅れで蒸発散量を低下し,光合成量はもう1年の時間遅れが必要であった.詳しくは,講演時に発表する.
著者
飯田 真一 太田 岳史 松本 一穂 中井 太郎 KONONOV Alexander V. MAXIMOV Trofim C. VAN DER MOLEN Michiel K. DOLMAN Albertus J. 矢吹 裕伯
出版者
日本水文科学会
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.109-121, 2016

シベリアのカラマツ林を対象として林床面上および林冠上において渦相関法を適用し,下層植生および全生態系からの蒸発散量を計測した。そして,これらの旬積算値の年々差を評価した。その結果,旬蒸発散量の年々差は全生態系で-11.0 mm~9.5 mm,下層植生で-2.4 mm~4.7 mmと見積もられ,この値は月蒸発散量の平均値の20~30%に相当しており,本林分では顕著な旬蒸発散量の年々差が発生することが明らかとなった。この要因を検討するため,Penman-Monteith式の放射項と移流項の年々差との相関を解析したところ,本林分の低い乖離率を反映して,蒸発散量の年々差は移流項の年々差によって説明されることが分かった。そして,移流項の年々差を生じさせる要素としては,飽差の差異とそれに伴う表面コンダクタンスの変化が重要である。
著者
田中 広樹 太田 岳史 檜山 哲哉 Maximov Trofim C.
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.259-267, 2000-08-16
被引用文献数
1

北方落葉樹林における光合成・蒸散特性を明らかにするために, シベリアタイガのカラマツ林樹冠上でのCO_2・H_2Oフラックス観測を行った。開葉前にはフラックスは検出されず, 夏期には正午または正午直前にピークを持つ日周変化が見られた。高温乾燥による光合成抑制は見られたが, 蒸散抑制は明らかではなかった。また, 光合成・蒸散活動は開葉の時期に急激に活性化し, 夏期の終りに向かって緩やかに減衰した。更に, 観測されたフラックスから気象環境の季節変化の効果を取り除き, その時点での光合成・蒸散特性を評価するために, 樹冠単層モデルを用いて光合成・蒸散特性を表現する最小群落抵抗, クロロフィル密度, 光量子捕捉率などのパラメータを抽出した。パラメータの変化から, 開葉期の特性の変化が明瞭に表現された。蒸散活性と光合成活性には開葉後も2週間程度の成熟期があることが示唆され, クロロフィル密度のような量的特性は比較的早く定常に達することが示唆された。
著者
太田 岳史 福嶌 義宏 鈴木 雅一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.125-134, 1983-04-25
被引用文献数
6

山腹斜面における雨水流出機構を明らかにするため, 琵琶湖南東部に位置する風化花崗岩山地内の山腹斜面に小ブロットを選定し, 人工降雨および自然降雨による雨水流出観測を行った。その結果, 以下の知見を得た。(1)雨水は, 基岩層まで浸透し, 基岩層上に形成される飽和層より流出する。実験範囲内で生じた表面流は, この飽和土層深が土層厚を越えたことによって生じた。(2)ハイドログラフが定常に達するまでに要する時間は, 降雨強度および初期流量の増加によって減少する傾向にある。(3)減水係数の最大値は, 降雨停止直後ではなく停止後10分から1時間の間に生じる。(4)降雨停止後30分間は実験に用いた降雨強度の増加につれて減水係数が増加する。しかし, その後はほぼ一定値をとりながら減少する。(5)雨水の流出過程を, 基岩までの浸透過程と飽和側方流過程の2過程に分け, 前者に一次元鉛直不飽和浸透, 後者に飽和ダルシー流を用いるモデルによってシミュレーションを行ったところ, 観測ハイドログラフならびに(2)から(4)の傾向を再現することができた。