著者
亀田 貴雄 高橋 修平 渡邉 興亜 平沢 尚彦 佐藤 秀昭 浜田 始
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.541-554, 2018 (Released:2023-03-01)
参考文献数
27

1991年から現在まで,北海道足寄郡陸別町では雪氷分野での実験・観測として,陸別の寒さに関する観測,深層掘削機開発実験,雪上滑走路造成実験,降雪量比較観測,が実施されてきた.これらの大規模な観測・実験を実施するためには,実験を計画する研究者側の熱意とともにそれを受けとめる地域の協力が極めて重要である.陸別での観測・実験では両者が有機的につながったため,これらの実験・観測を実施することができた.この報告ではこれらの観測・実験の最初の一歩の説明から始まり,それぞれの観測・実験の実施状況,さらに主要な成果を説明する.
著者
平沢 尚彦 本山 秀明 山田 恭平 杉浦 幸之助 栗田 直幸
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.67-77, 2021 (Released:2021-09-01)
参考文献数
19

超音波積雪深計を搭載したAWS(Automatic Weather Station)を,2016 年1 月から2019 年10 月 にかけて4 つの地点に新設した.それらの地点は,海岸域のH128,カタバ風が発達する大陸斜面域 のMD78,大陸斜面上部の内陸高地域のNRP,氷床頂上部のNDF である.この観測システムの目的 は,広域にわたる南極氷床の地域特性を把握しながら,総観規模擾乱や日変化による堆積の時間変化 を明らかにすることである.本論文はこれらの4地点で観測された雪面レベルの時間変動について調 べた.その結果以下のことが分かった.1)雪面レベルの時間変化には階段状の変動とパルス状の変 動がある.雪面レベルの上昇は主に階段状の上昇によりもたらされる.2)H128 及びNRP の比較に よって広域に同時に雪面レベルの変動が表れた4 つの事例が見いだされた.これらの事例では総観規 模擾乱に伴う雲域が氷床上に侵入していたことがNOAA の赤外画像から示唆された.3)雪面レベル の比較的大きな変動は異なる地点で同じ日に起こっていないことの方が圧倒的に多い.4)NRP 以外 の3地点において,暖候期にゆっくりとした雪面レベルの低下が観測された.
著者
飯島 慈裕 会田 健太郎 浅沼 順 石川 守 岩崎 博之 太田 岳史 小谷 亜由美 佐藤 友徳 篠田 雅人 杉浦 幸之助 朴 昊澤 檜山 哲哉 平沢 尚彦 金子 有紀 堀 雅裕 GOMBOLUUDEV Purevjav OYUNBAATAR Dambaravjaa IIJIMA Yoshihiro AIDA Kentaro ASANUMA Jun ISHIKAWA Mamoru IWASAKI Hiroyuki OHTA Takeshi KOTANI Ayumi SATO Tomonori SHINODA Masato SUGIURA Konosuke PARK Hotaek HIYAMA Tetsuya HIRASAWA Naohiko KANEKO Yuki HORI Masahiro
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学大学院生物資源学研究科紀要
巻号頁・発行日
no.43, pp.15-25, 2017-09

宇宙航空研究開発機構によって2014年2月に打ち上げられた全球降水観測計画(GPM: Global Precipitation Measurement)の主衛星は高緯度地域の降水量が新規に得られる。このデータの検証は,今後の寒冷圏陸域の水循環・水資源研究等への利用促進に向けた観測精度の向上を図るうえで必要不可欠である。本研究プロジェクトでは,観測研究を実施してきた国内外の機関が協働して,北東ユーラシア(主としてモンゴル・東シベリア)で既設の観測システムを改良し,他の衛星データ解析と合わせて,夏季降水(降雨),冬季降水(降積雪)およびそれらの空間分布に関する地上検証を行う。また,今後の応用研究に向けて,陸面モデル・分布型河川流出モデル,メソ気象モデルを利用した,地域規模のGPM観測データの利用可能性を検討する。
著者
平沢 尚彦 青木 輝夫 林 政彦 藤田 耕史 飯塚 芳徳 栗田 直幸 本山 秀明 山内 恭
巻号頁・発行日
2016-12-02

第7回極域科学シンポジウム/横断セッション:[IL]極域科学における学術の大型研究計画について12月2日(金)国立極地究所 3階セミナー室
著者
平沢 尚彦 Naohiko Hirasawa
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.249-264, 2000-11

本論文では, 第38次南極地域観測隊によって1997年にドームふじ観測拠点で観測された地上風向データに複数の重大なエラーが含まれることを報告し, その特徴を記述した。最も重大なエラーは方位45度, 135度, 225度, 315度に向かって, 風向データが変移していることであった。補正方法の検討を通して, 1度の解像度を持つ測定データを同程度の解像度で補正することは不可能であることが分かり, 可能な最高の解像度として16方位に補正した。補正方法として, ドームふじ観測拠点で併行して観測していたAuto Weather Station (AWS)の風向を真値とし, AWS風向に合わせ込む経験的な方法を提案する。付録では補正方法に関する理論的な考察を行い, それに基づく一例として指数関数を利用した補正方法を検討するが, ここでは十分な補正結果が得られない。Some kinds of error in surface wind direction data at Dome Fuji Station observed by the 38th Japanese Antarctic Research Expedition (JARE-38) in 1997 are reported. The most serious error is that the wind direction data was shifted toward azimuths of 45-, 135-, 225- and 315-degrees. However. data correction is possible since the error is systematic. For example. the data in the 0-∿90-degrees azimuth domain are shifted toward 45-degrees. As a result of examining the correction method. though it is impossible to correct the data with the same resolution of 1 degree that the observed data had, it is possible to correct it at the resolution of 16 sectors. Wind direction data of the Auto Weather Station (AWS) at Dome Fuji Station are regarded as true values in this correction process. An empirical method comparing with the AWS data was proposed here. In the appendix, theoretical discussion on the correction is given, and corrections using exponential functions are demonstrated, which however, do not work well.
著者
平沢 尚彦 高橋 晃 渡辺 興亜 佐藤 夏雄 Naohiko Hirasawa Akira Takahashi Okitsugu Watanabe Natsuo Sato
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.255-258, 1996-07

本研究小集会の目的はSARデータを使った南極氷床・氷河に関する最近の研究成果, 及び今後の研究計画について議論することである。本会は1996年2月6日, 極地研究所講義室において行われ, 出席者は約30名であった。SAR画像に見られる様々な模様にについての紹介, 飛行機観測や可視画像との比較, 現地氷状観測との比較, インターフェロメトリの今後の課題などが議論された。The main purpose of the workshop is to discuss recent results of Antarctic research using SAR data. It was held on February 6,1996 at the National Institute of Polar Research (NIPR), the number of participants being about 30. The contents of the workshop are demonstration of various SAR images, comparison with pictures from an airplane and visible images, comparison with observational data on ice conditions and demonstration of problems in interferometry.
著者
山内 恭 和田 誠 塩原 匡貴 平沢 尚彦 森本 真司 原 圭一郎 橋田 元 山形 定
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

両極におけるエアロゾルの航空機集中観測を通じ、極域のエアロゾルにとって、南極・北極ともに,大気の長距離輸送過程が支配的であることが明らかになり、気候影響の大きい黒色炭素の問題等も興味ある発展が期待される。1.16年度5〜6月に、ドイツ、アルフレッド・ウェーゲナー極地海洋研究所(AWI)と共同で、同航空機2機を使った「北極対流圏エアロゾル雲放射総合観測(ASTAR 2004)」を実施した。航空機による散乱係数,吸収係数とも汚染の度合いの高かった北極ヘイズの活発な時期であったASTAR 2000の3〜4月の結果に比べいずれも低めの値が示されたほか、黒色炭素粒子が硫酸液滴に取り込まれた内部混合粒子が卓越することが明らかにされた。また、地上では降水に伴うエアロゾルの除去過程が観測され、エアロゾルと雲の相互作用が類推された。2.18年12月から19年1月にかけて、引き続きAWIの航空機による南極域での「日独共同航空機大気観測(ANTSYO-II)」を実施した。大西洋セクターではノイマイヤー基地を中心に内陸のコーネン基地まで、合計22フライトを実施し、インド洋セクターの昭和基地側では大陸上S17拠点をベースに内陸、海洋上水平分布と鉛直分布を取得する観測飛行を合計15フライト実施した。エアロゾルの物理、光学、化学特性の3次元分布を得たと共に、温室効果気体の鉛直分布を得るための大気試料採取も行った。南極大陸沿岸域でも、西経側に位置するノイマイヤー基地周辺では、大気が南極半島側から輸送されることが多く、一方東経側に位置する昭和基地では、南大洋を越え南米大陸からの輸送が多いことが、エアロゾルの性質を特徴づけていること、さらに昭和基地近傍で内陸からの大気の中にも黒色炭素の多いエアロゾルが見られることが明らかになった。そのほか、昭和基地観測、海鷹丸観測と併せ、海洋起源物質の寄与の解明も期待される。
著者
平沢 尚彦 藤田 耕史
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.159-169, 2008-06-30

第44次南極地域観測隊のドームふじ基地におけるシーロメータ観測の結果から,雲及び降雪粒子の鉛直プロファイルの季節変化の概要をまとめ,特徴的な鉛直プロファイルを示した.夏季の2003年2月,12月,及び2004年1月には高度1000m以下に明瞭な雲底が検出される場合が比較的多かった.4月から10月には高度3000mから5000m(標高約7000-9000m)層で夏季より高頻度に雲が観測された.極夜期には高度1500m以下の層でストリーク状の降雪が観測され,これまでの研究と比較し議論した.このストリーク状の降雪は地上に近いほど後方散乱係数が大きくなる特徴を示した.