著者
高乗 仁 寺田 弘
出版者
日本薬史学会
雑誌
薬史学雑誌 (ISSN:02852314)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.236-240, 2020 (Released:2021-01-28)

目的:安土桃山時代から江戸時代初期にかけて,武将・幕府官僚として活躍した柳生但馬守宗矩が認めた書状の中に,薬薗に関して言及した書状を発見した.本論文の目的は,書状に記載された人物の特定を通して,薬薗の特定と柳生宗矩の薬薗との関係を明らかにすることである. 方法:書状の釈文作成に基づき,書状記載の人物の特定,薬薗の特定,柳生宗矩を含む書状記載の人物と薬薗との関係を解析した. 結果:書状に記載の文面より,次の仮説が提案された.即ち,江戸幕府直営の御薬園の 1 つである京都鷹ヶ峰御薬園の設営において,徳川将軍家御典医であった岡本玄冶が,後に鷹ヶ峰御薬園の初代預かりに任命される藤林道寿と共に,主導的役割を果たし,また,柳生宗矩は,後見人としてその設営に関わっていたとする説である. 結論:書状は,京都鷹ヶ峰御薬園の設営に柳生宗矩を始めとする複数の人物が関与したことを示唆するものであることが明らかにされた.江戸初期の幕府による御薬園創設の政策経緯の詳細は詳らかにされていないが,柳生宗矩の本書状は,その解明に貢献する資料になるものと考える.
著者
湯川 夏子 前田 佐江子 明神 千穂 平川 美奈子 寺田 弘美 村山 由美 久保 陽子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】料理活動は対象者の認知症の行動・心理症状(BPSD)の緩和や生活の質(QOL)の向上など様々な療法的効果が期待できる。我々はこれを「料理療法」として提唱し、実践的研究を行ってきた<sup>1)</sup>。<br />本研究の目的は、高齢者にとって懐かしい「粉もん」(小麦粉)メニューを開発し、効果を検証することである。今回は軽度認知障害(MCI)および軽度の認知症高齢者を対象とした実践結果を報告する。<br />【方法】2016年年7月~12月、有料老人ホーム一般居室入居者を対象に「おやつの会」を月1回、合計6回実施した。参加者は1回7-9名、スタッフは3-5名であった。各回約2週間前に参加者3名スタッフ2名で試作した。介入前後に認知症程度をCDRと「物忘れ相談プログラム」、QOL評価を高齢者用多元観察尺度(MOSES)およびPGCモラールスケールにて評価した。スタッフにより各回の全体評価(支援方法等)に加え観察調査を行った。京都教育大学研究倫理委員会の承認を受け実施した。<br />【結果】事前の聞き取りより、洋菓子を取り上げ、試作時の参加者からの提案を加味したレシピを作成した。初回は準備や支援方法に関して全体評価が低かったが2回目以降高評価であった。参加者への効果では、継続参加した7名中5名に認知症程度の改善がみられた。特に試作も含め全回参加した1名はMCIから健康な状態に回復し、MOSESによるQOLの向上、スタッフや参加者とのコミュニケーションの増加、表情の変化がみられた。他4名はMOSESや観察評価が向上し、他のアクティビティへの参加も増加した。また自室における料理回数が増加した参加者もいるなど日常生活の質の向上にも効果が見られた。<br /><sup>1)</sup> 湯川, 前田, 明神:認知症ケアと予防に役立つ料理療法, クリエイツかもがわ (2014).
著者
篠原 康雄 寺田 弘
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.131-134, 1988-05-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
19

This paper deals with why the Pβ0-Pγ bond is cleaved specifically in the enzymic hydrolysis of ATP mediated by Mg2+. Mg2+ coordinates with the β-and γ-phosphoryl groups in such a way that it binds more strongly to the former. This asymmetric coordination weakens the bond where specific cleavage takes place in the enzyme catalyzed hydrolysis.
著者
川田 純 寺田 弘 藤田 稔夫
出版者
化学同人
雑誌
化学 増刊 (ISSN:03685470)
巻号頁・発行日
no.116, pp.p1-239, 1989-09
著者
樋口 富彦 PONNAPPA B.C KRAAYENHOF R DEVENISH R.J NAGLEY Phill 寺田 弘 PONNAPPA Biddanda C
出版者
徳島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本プロジェクトでは,主として下記の2つの方向の研究成果を得た.1.異方性阻害剤のリピド平面二重膜における電気生理学的解析研究代表者らが発見した異方性阻害剤のリピド平面二重膜における電気生理学的解析を行い,以下の重要な事実を明らかにした.1)TPP^+よりも阻害活性の高い(4〜5倍)triphenyltetrazolium(TPT^+)ではほとんど膜電流を発生しなかった。また、TPP^+により発生した膜電流は、TTC^+の添加により逆に減少した.これらの結果は,異方性阻害剤によるリピド平面二重膜における膜電流産生と異方性阻害剤のエネルギー変換阻害能との間には相関性がないことを示している.2)TPT^+の膜透過性がTPP^+に比べて低いということは、current-clamp法を用いた膜電位変化によっても明らかにされた。TPP^+存在下にTPT^+を加えることによる膜電位の変化からGoldman-Hodgkin-Katz式に基づき計算したそれらの透過比(P_<TTC>/P_<TPP>)は、約0.3であった。これらのことは、異方性阻害剤の阻害活性がその膜透過性とは相関しないことを示している。3)TPP^+による膜透過電流の産生には、数秒のlag timeが存在した。TPP^+による阻害反応にlag timeが存在しないので、TPP^+の膜透過はその阻害作用とは無関係と考えられる。これらの発見は,エネルギー変換の分子コンデンサー仮説を強く支持している.2.ラットH^+-ATP合成酵素の活性制御システムの解明高等動物におけるミトコンドリアH^+-ATP合成酵素活性が,Ca^<2+>-依存性の細胞内情報伝達システムによって,″低レベル″から″高レベル″に可逆的にスイッチされ細胞内のエネルギー要求量に応じて制御されていることがラットで明らかにされているが,その分子機作は解明されていなかった.研究代表者らは,1991年ラット肝ミトコンドリアの内膜にATP感受性K^+-チャネルが存在することを発見した[Nature352,244-247(1991)].このチャネルは,ATP濃度が低下すると開き,逆に増大するとCa^<2+>の存在に依存して閉じる.研究代表者らは,このチャネルの特異的阻害剤であるグリベンクラミド等により,ミトコンドリアにおけるATP合成反応が阻害されATPの分解活性が増大することを見出した.これらの結果は,ミトコンドリアに存在するATP感受性K^+-チャネルがCa^<2+>-ポンプと共同して,H^+-ATP合成酵素の活性の制御に関わっていることを強く示唆している.他方,研究代表者らは,ラット肝ミトコンドリアからH^+-ATP合成酵素を精製する方法を開発し,各サブユニットを単離しそれらの一次構造を解明してきた[Biochemistry30,6854(1991);J.Biol.Chem.(1992)267,22658など].驚いたことに,それらのサブユニットの一つであるsubunit eの34〜65残基のアミノ酸配列が,トロポニンTのCa^<2+>依存性トロポミオシン結合部位の共通配列と高いホモロジーがあることが当研究室で明らかになった.従ってこのタンパク質がCa^<2+>情報伝達システムに依存したH^+-ATP合成酵素活性の制御に関わる本体である可能性が示唆されていた.本プロジェクトでは,トロポニンTのCa^<2+>依存性トロポミオシン結合部位の共通配列と高いホモロジーがあるsubunit eの34〜65残基のペプチドを合成し,このペプチドに対する抗体をウサギを用いて作製し,以下の新事実を明らかにした.a)今回作製した抗subunit e抗体を,H^+-ATP合成酵素から単離精製したsubunit e,H^+-ATP合成酵素精製品,SMP(亜ミトコンドリア粒子)をそれぞれ電気泳動して,ウエスタンブロットしたものと反応させたところ,分子量8,000付近に単一のバンドを示した.従ってこの抗体が,subunit eを特異的に認識する抗体であること,また,subunit eがH^+-ATP合成酵素を構成するサブユニットであることが明かとなった.b)今回作製した抗subunit e抗体を用いて,H^+-ATP合成酵素精製標品及びSMPのATPase活性に対する抗体の添加効果を調べたところ,H^+-ATP合成酵素精製標品に大しては何の変化も見られなかったが,驚いたことに,ミトコンドリア内膜が存在するSMPに対して,抗subunit e抗体を添加したとき活性が上昇することが明かとなった.従って,subunit eがH^+-ATP合成酵素活性の制御に関わる本体である可能性が強く示唆されてきた.
著者
岸本 統久 沢辺 幹夫 寺田 弘慈
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.112, pp.1-4, 2007-06-21
被引用文献数
3

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、関係研究機関と協力して高精度測位実験システムの開発を実施すると共に、2006年3月31日の政府方針「準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針」に基づき、準天頂衛星システム第1段階(準天頂測位衛星初号機、準天頂衛星追跡管制システム)の整備を行っている。これまで、高精度測位実験システムについては、詳細設計、及び、準天頂測位衛星初号機・準天頂衛星追跡管制システムについては、予備・基本設計を実施してきており、本稿ではこれらのシステム設計について示す。
著者
山下 忠幸 三須 幹男 山本 志郎 寺田 弘 石井 祥之
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.27-"42-2", 1963-12-25

いわゆるホモの不妊の原因を形態学的に明らかにする目的で,東北海道の3ミンク飼育場で蒐集したホモ3種類の合計50個体および対照としての3品種の合計33個体の尿生殖器についてまず肉眼的観察を行ない,次のような成績をえた。1)一側の泌尿器に異常が認められた個体に,同時に同一側の生殖器にも異常が認められたもの(尿生殖器異常群)がNAMRのHomo Sapphire3例中1例(33.3%)およびHomo CCPastel19例中7例(36.9%),またTAMRのHomo Sapphire21例中3例(14.3%)に発見れた。2)一側の生殖器にのみ異常が認められるものがNAMRのHomo CCPastel19例中2例さ(14.3%)に観察された。3)対照としての3品種33例および品種不詳の500剥皮屍体には尿生殖器あるいは生殖器の異常なものは1例も発見できなかった。4)尿生殖器異常群の肉眼的異常所見として,一側の腎臓欠損とこれにともなう腎脈管および尿管の欠如,さらに泌尿器異常側の腹部潜在精巣あるいは精巣上体,精管の欠如が観察され,これら異常の出現様式によって尿生殖器異常群を3型に分類した。5)生殖器異常群の2例中1例は左側の腹部潜在精巣と同側の精巣上体,精管を欠如していたもので,他の1例は右側の鼠径部潜在精巣を示していたものである。6)尿生殖器の異常側の出現頻度には差がみられなかった。7)ミンクの正常腎は左右ほぼ同様の形態を示し,一般に菜豆形を呈する。8)ホモにおける一側腎臓欠損例の他側残存腎は個体によって長径,幅径,厚径それぞれの増加率で異なるために,一律な形態を示さなかったが,形態のいかんにかかわらず残存腎は正常腎のほぼ2倍の重量増加を示すものが多かった。9)ミンクの精巣は採皮時期において蜿豆豆形を呈するが,繁殖期においては長径が短径および厚径に比べその増加率が著しく大である結果,厚い丸味を帯び,あたかもラッキョウ様の形態をとるようになる。10)ホモの精巣は他品種の精巣に比べ極めて発育が悪く,採皮時期,繁殖期ともホモの精巣は他品種の精巣の約1/2の重量を示すに過ぎなかった。11)ミンクの精巣は対照,ホモとも左精巣が右精巣より重いものが多かった。