著者
市 育代 小城 勝相
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.236, 2007 (Released:2008-02-26)

<目的> 動脈硬化発症には血管内皮細胞や平滑筋細胞における細胞死とアポトーシスのバランスの破綻が関与している。セラミドは細胞膜を構成するスフィンゴ脂質で、強いアポトーシス作用がある。最近、動脈硬化病変に多い凝集したLDLは通常のLDLに比べてセラミド含量が高いことが報告されている。従って、動脈硬化発症にセラミドのアポトーシス作用が関与している可能性がある。そこで今回、ヒトの血漿セラミドと動脈硬化危険因子との関係について検討を行った。また以前、LDLのラジカル反応によって生じるapoBの酸化物(B-ox)がヒトの血漿中に存在し、それらが動脈硬化指標と相関関係にあることを報告していることから、B-oxとの関係についても検討した。 <方法> 対象者は健康診断の受診者100名である。セラミドは脂質抽出後、LC-MS/MSにて測定した。血漿中のB-oxはWestern blotにて測定した。 <結果> 血漿セラミドは血清脂質や収縮期血圧と正の相関がみられた。またLDLが170 mg/dl以上の高LDL血症者は、健常者やLDLが140-169 mg/dlの中度のLDL血症者に比べて血漿セラミドが著しく高かった。従って、より高いレベルのLDLと血漿セラミド増加は関係があることが示唆された。また、セラミドはB-oxとも正の相関がみられた。以上より、血漿セラミドはLDLだけでなく、その酸化物とも関係があることが示唆された。本研究は(奈良女大)宮下矢誉衣、中原佳代子、日高篤子、沓掛佐保子、井上佳奈、(九大医)三輪宜一、(埼玉社会保険病院)丸山太郎、(国際医療福祉大学熱海病院)都島基夫、(国立循環器病センター)斯波真理子との共同研究である。
著者
佐野 晴洋 山下 節義 川西 正祐 井口 弘 吉永 侃夫 小城 勝相 塚本 幾代 藤田 博美 岡本 浩子 加藤 伸勝 宮本 宣博 浮田 義一郎 山根 秀夫 森 律 池田 栄三 乾 修然 藤岡 惇 阿部 醇吉
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.566-579, 1982-06-30 (Released:2009-02-17)
参考文献数
32
被引用文献数
1 3

An epidemiological survey and clinical investigations were carried out on 162 retired workers from manganese mines and ore grinders, who were the residents of the Tamba district of Kyoto Prefecture. Most of the workers had been employed in small industrial factories with less than five employees under very poor working conditions. Fifty-five percent of them had worked in the mines and factories for longer than 11 years. Forty-six percent had been retired for 11-20 years, whereas 27% for longer than 21 years. A group of 124 people living in the same region but who had not been exposed to manganese served as the control group.The incidence of subjective symptoms associated with chronic manganese poisoning such as emotional instability, psychomotor irritability and neurologic abnormalities was apparently high in the experimental group and it increased with the period of exposure to manganese dust. Twenty-eight percent of the workers reported the subjective symptoms while they were employed, but 45% of them reported as late as six years after they retired.Of the retired workers, five (3.1%) had parkinsonism, three (1.9%) showed symptoms of hemiparkinsonism, and fifteen (9.3%) showed neurological symptoms including maskedlike, gait unbalance, slurred speech and imparied fine movements. Forty-five percent of these patients recognized these abnormalities for more than five years after they had left the contaminated workings. It is noteworthy that 39% of the retired workers were diagnosed as having pneumoconiosis.Some of the problems encountered in diagnosing manganese poisoning after exposure has been terminated is also discussed here.
著者
小城 勝相 市 育代
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

メタボリックシンドロームでは脂質代謝が重要であり、特にセラミドが重要な役割をもつことがわかった。シークワーシャーに含まれるノビレチンという物質が脂質代謝異常に関与するタンパク質の発現に影響を与え、メタボリックシンドロームを予防する可能性を見出したが、今後はこのような脂質代謝に影響を与える食品成分が重要であることがわかった。
著者
西村 一朗 畠山 絹江 中山 徹 小城 勝相 水野 弘之 小野木 禎彦 阿部 登茂子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

3年間の個々の研究を総括し、以下のような内容から、高齢者の状況、生活各側面での要求、問題点、将来への課題等についてまとめた。(1)食物関係高齢者は加齢に伴い、確実に骨密度の低下が進行していた。低骨密度、骨粗鬆症の高齢者が骨折を起こさないための環境づくり、支援が課題である。買い物、調理の楽しみを持続させ、高齢者の希望に叶った配食サービスなどの生活支援体制を整える必要がある。(2)衣服関係高齢者の体型分布の幅の広さから、高齢者用既製服の衣服サイズ、デザインが乏しいことが指摘される。高齢者の体型と既製服サイズの適正化について更なる研究が必要である。また、高齢者向けの衣服の売り場展開の検討も必要である。(3)住居関係マンションの共用部分において、手すり、エレベーターの設置が少なく、今後改善が望まれる。高齢期にはできるだけ住み慣れた自宅で過ごしたいと考える高齢者が多かったが、身体が不自由になったとき、看護・介護・ひとりで生活できないこと・体力に不安を感じていることがわかった。持ち家一戸建住宅において、居住者の高齢化に伴う家族人数の減少により、相対的に広い住宅の空洞化が進んでいる。高齢者の住環境への要求には、高齢期を反映した独特の住環境要求があるが、それらの要求と住空間との間に乖離が進展する中、それを取り除いていくことが重要である。
著者
小城 勝相 市 育代
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

1.動物実験における酸化ストレス評価に関する研究生体内における酸化ストレスを評価する指標として、ビタミンC、E、脂質ヒドロペルオキシドを使い、各種病態におけるこれら指標の動態を検討した。その結果、老化においては脂質ヒドロペルオキシドが優れていることが、老化促進モデルマウスの実験から判明した。薬物による肝炎モデル動物ではビタミンCが最も鋭敏な指標であることが判明した。2.この50年間ビタミンCと同等の活性があるとされてきたデヒドロアスコルビン酸の生理活性をODSラット(ヒトと同様ビタミンCを体内で合成できない)を用いて検討した結果、デヒドロアスコルビン酸の生理活性はビタミンCの10%程度であることが判明した。同じ手法を用いて、天然物である2-O-(β-D-glucopyranosyl)ascorbic acidにビタミンC活性があることが判った。3.動脈硬化に関する研究動脈硬化の初発反応は低密度リポタンパク質(LDL)の酸化であると考えられている。しかしその化学的意味は全く判っていなかった。本研究において、LDLを酸化すると、LDLのアポリポタンパク質B-100(アポB)が分解すること、その反応性はビタミンEと同程度で血液中の他のタンパク質よりずっと高いことがわかった。さらに、酸化分解したアポBはヒト血液中に存在し、その量を定量すると、動脈硬化の診断に使われている臨床指標と良好な相関をした。アポB分解生成物の定量にはWestern blotを用いるため、27時間もの時間がかかり、実用には向かない。そこで実用的な方法を開発する目的で、LDLの酸化を評価する別の方法を検討した。その結果、酸化とともにLDLの粒子径が小さくなることを発見した。この発見は昔から、動脈硬化の危険因子とされるsmall dense LDLに酸化反応が関与することを初めて明らかにした点でも重要な発見である。