著者
市 育代
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.18-25, 2020-01-25 (Released:2021-01-31)

In mammals, polyunsaturated fatty acids (PUFAs) such as linoleic acid (18:2n-6) and α -linolenic acid (18:3n-3) cannot be synthesized de novo. Therefore, these PUFAs are essential fatty acids (EFAs). However, these PUFAs can be converted to arachidonic acid (20:4n-6) and eicosapentaenoic acid (20:5n-3). Mead acid (20:3n-9), is an unusual n-9 series PUFA, which is endogenously synthesized from oleic acid (18:1n-9) in an essential fatty acid (EFA)-deficiency state. In this study, we showed that Mead acid was produced from oleic acid by two desaturation enzymes (FADS1 and FADS2) and one elongation enzyme (ELOVL5), indicating that n-3, n-6, and n-9 PUFAs are metabolized by the same enzymes. Furthermore, ELOVL5 acquired an elongation activity towards oleic acid under EFA-deficient state, which allows it to synthesize Mead acid. We revealed a novel regulatory mechanism that the substrate preference of ELOVL5 was modified by a post-translational modification. The function of Mead acid during EFA-deficiency is not known, but we showed that the inhibition of Mead acid synthesis induced hepatic triacylglycerol accumulation via the suppression of very low-density lipoprotein (VLDL) secretion in EFA-deficiency mice. From these results, it is possible that Mead acid functions as a substitute for the PUFA produced from EFAs in VLDL secretion during EFA-deficiency.
著者
市 育代 小城 勝相
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.236, 2007 (Released:2008-02-26)

<目的> 動脈硬化発症には血管内皮細胞や平滑筋細胞における細胞死とアポトーシスのバランスの破綻が関与している。セラミドは細胞膜を構成するスフィンゴ脂質で、強いアポトーシス作用がある。最近、動脈硬化病変に多い凝集したLDLは通常のLDLに比べてセラミド含量が高いことが報告されている。従って、動脈硬化発症にセラミドのアポトーシス作用が関与している可能性がある。そこで今回、ヒトの血漿セラミドと動脈硬化危険因子との関係について検討を行った。また以前、LDLのラジカル反応によって生じるapoBの酸化物(B-ox)がヒトの血漿中に存在し、それらが動脈硬化指標と相関関係にあることを報告していることから、B-oxとの関係についても検討した。 <方法> 対象者は健康診断の受診者100名である。セラミドは脂質抽出後、LC-MS/MSにて測定した。血漿中のB-oxはWestern blotにて測定した。 <結果> 血漿セラミドは血清脂質や収縮期血圧と正の相関がみられた。またLDLが170 mg/dl以上の高LDL血症者は、健常者やLDLが140-169 mg/dlの中度のLDL血症者に比べて血漿セラミドが著しく高かった。従って、より高いレベルのLDLと血漿セラミド増加は関係があることが示唆された。また、セラミドはB-oxとも正の相関がみられた。以上より、血漿セラミドはLDLだけでなく、その酸化物とも関係があることが示唆された。本研究は(奈良女大)宮下矢誉衣、中原佳代子、日高篤子、沓掛佐保子、井上佳奈、(九大医)三輪宜一、(埼玉社会保険病院)丸山太郎、(国際医療福祉大学熱海病院)都島基夫、(国立循環器病センター)斯波真理子との共同研究である。
著者
石永 正隆 望月 てる代 上田 愛子 市 育代 七枝 美香 小田 光子 岸田 典子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.291-296, 2001-10-10
被引用文献数
2 3

小学生100人の1日の飲食物から脂質摂取量を陰膳方式で実測した。その結果, 平均39.7g/dayの脂肪酸を摂取していたが, 男女とも肥満児と非肥満児間で有意差はみられなかった。成人の場合に比べて, 飽和脂肪酸が4-6%多く, 多価不飽和脂肪酸特にn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量や割合がともに成人の半分ほどで3.3%であった。魚介類由来の脂肪酸の平均摂取量は297mg/dayで, 100mg/day以下の児童が50%を占めていた。コレステロールおよび植物ステロールの摂取量は, それぞれ平均255mg/dayおよび137mg/dayで, 肥満群と非肥満群間で, 男女ともに有意差はみられなかった。以上の結果から, 小学生の肥満群と非肥満群で脂質成分の1日摂取量に差はみられなかったが, 子どもたち全体としては, 魚介類や野菜類の摂取量を増大させることが重要であることがわかった。
著者
市 育代
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

酸化ストレスは動脈硬化発症と進展に深く関与している。セラミドはアポトーシスを誘導する生理活性脂質で、細胞内のセカンドメッセンジャーとして機能していることが知られている。我々は以前、ヒトの血漿セラミドが動脈硬化の脂質マーカーと相関関係にあることを報告している。そこで本研究では、酸化ストレスにおけるセラミド代謝の変化を動物実験によって明らかにするために、四塩化炭素による劇症肝炎時に誘発される酸化ストレスが、肝臓だけでなく、他の臓器においてもセラミド代謝に影響をあたえるかについて調べた。組織のセラミドは、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)を用いて測定した。次に、ストレプトゾトシンによる糖尿病ラットにおいて、各臓器でセラミド代謝の変化がみられるか、またセラミドの蓄積が糖尿病の合併症に関与しているかについて検討した。肝臓のセラミドには変化はみられなかったが、血漿と腎臓のセラミドは糖尿病ラットで増加した。またセラミドの産生酵素であるスフィンゴミエリナーゼ(SMase)活性は、血中の分泌型SMaseが有意に増加した。このように、酸化ストレスを介した過度のセラミド蓄積は動脈硬化の発症因子のひとつであることが示唆された。
著者
小城 勝相 市 育代
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

メタボリックシンドロームでは脂質代謝が重要であり、特にセラミドが重要な役割をもつことがわかった。シークワーシャーに含まれるノビレチンという物質が脂質代謝異常に関与するタンパク質の発現に影響を与え、メタボリックシンドロームを予防する可能性を見出したが、今後はこのような脂質代謝に影響を与える食品成分が重要であることがわかった。
著者
小城 勝相 市 育代
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

1.動物実験における酸化ストレス評価に関する研究生体内における酸化ストレスを評価する指標として、ビタミンC、E、脂質ヒドロペルオキシドを使い、各種病態におけるこれら指標の動態を検討した。その結果、老化においては脂質ヒドロペルオキシドが優れていることが、老化促進モデルマウスの実験から判明した。薬物による肝炎モデル動物ではビタミンCが最も鋭敏な指標であることが判明した。2.この50年間ビタミンCと同等の活性があるとされてきたデヒドロアスコルビン酸の生理活性をODSラット(ヒトと同様ビタミンCを体内で合成できない)を用いて検討した結果、デヒドロアスコルビン酸の生理活性はビタミンCの10%程度であることが判明した。同じ手法を用いて、天然物である2-O-(β-D-glucopyranosyl)ascorbic acidにビタミンC活性があることが判った。3.動脈硬化に関する研究動脈硬化の初発反応は低密度リポタンパク質(LDL)の酸化であると考えられている。しかしその化学的意味は全く判っていなかった。本研究において、LDLを酸化すると、LDLのアポリポタンパク質B-100(アポB)が分解すること、その反応性はビタミンEと同程度で血液中の他のタンパク質よりずっと高いことがわかった。さらに、酸化分解したアポBはヒト血液中に存在し、その量を定量すると、動脈硬化の診断に使われている臨床指標と良好な相関をした。アポB分解生成物の定量にはWestern blotを用いるため、27時間もの時間がかかり、実用には向かない。そこで実用的な方法を開発する目的で、LDLの酸化を評価する別の方法を検討した。その結果、酸化とともにLDLの粒子径が小さくなることを発見した。この発見は昔から、動脈硬化の危険因子とされるsmall dense LDLに酸化反応が関与することを初めて明らかにした点でも重要な発見である。