- 著者
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小幡 哲史
木下 博
- 出版者
- バイオメカニズム学会
- 雑誌
- バイオメカニズム (ISSN:13487116)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, pp.37-47, 2014 (Released:2017-02-15)
- 参考文献数
- 9
3軸小型力覚センサーを指板に埋め込んだ実験用バイオリンを用いて, 熟練奏者と初心者を対象にビブラート音なしでの単音演奏とビブラート音演奏での指板力を計測した. また, 一部の熟練奏者ではそれに関わる左手の筋活動も同時に計測した. 熟練奏者の単音演奏では, 弦を押さえる瞬間に, 指板力の鋭い立ち上がりが見られ, 遅いテンポではその後力が減少した状態で保たれるが, 速いテンポではパルス波形のみが見られた. ピークの力は1, 2 [Hz] では4.5 [N] を超える程であったが, それより速いテンポでは力が減少した. 一方で, 手内および前腕の筋活動はテンポが速くなるにつれて増大した. 初心者は熟練者に比べ, テンポや指の違いに関わらず, 力発揮が弱かった. ビブラート音演奏では, 熟練者は弦を固定するために一定の垂直方向への力を加えた上で, 弦長を変化させるための長軸方向への力を加えていた. 本研究は, 実際の演奏における指板力の測定を実現し, 得られた指板力情報とテンポや指, ビブラート音や経験の差について, また関連する筋活動について議論した.