著者
河瀬 諭
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.638-648, 2015-12-01 (Released:2016-06-01)
参考文献数
67

The aim of this study was to review the roles of visual cues in communication between performers and audience members during a music performance. Although numerous studies have elucidated that visual cues convey such elements as performance manners,emotional expressions, musical structure, or sound expressions, little has been done to provide a holistic perspective of these findings. Thus, we scrutinized how visual cues af-fect the encoding of performers’ intentions or the decoding of a performance by audience members. With respect to each cue, the existing literature has revealed that body move-ment directs the manner of performance, emotional expression, and musical structures toward the audience members. Specific parts of the body, particularly, demonstrate this tendency. Facial expressions serve to convey emotional expressions and features of sound. Gaze is regarded as an important cue for communication, although its role remains unclear. Physical attractiveness and attire also influence performance evalua-tions. Overall, visual cues dominate over auditory cues and have a powerful impact on performer-audience interaction in many studies. These results contribute to a deeper understanding of music performance and music appreciation in concert or under mul-timodal conditions.
著者
望月 愛 河瀬 諭 川口 明日香
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.89-89, 2010

本研究の目的は、テレビコマーシャルで用いられている音楽が商品の認知に与える影響について検討することである。そのために、本研究では、実際にテレビコマーシャルで使用された曲を用いて、そこから商品名を想起する実験を行った。実験参加者は大学生22人(ほとんどが音楽専攻生)、使用した曲は22曲、商品は全て同一ジャンルのものとした。実験は集団聴取実験であり、実験参加者は刺激曲を聴取した後、択一式でその音楽が使用されていたと思う商品を選択した。実験の結果、正しく想起されやすい商品と楽曲の属性には関連が見られた。さらに、各実験参加者の正解数は、テレビコマーシャルに対する視聴行動に影響を受けることが示唆された。また、特定の音楽において、イメージの類似した商品間で間違いが多かった。本研究は、広告認知のみならず、音環境によって記憶が想起されるメカニズムを解明する上でも示唆に富むものである。
著者
河瀬 諭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.190, pp.93-98, 2011-08-19

本研究の目的は,アンサンブル演奏における視覚情報の役割について,タイミング調整の側面から検討することである.そのために,ピアノデュオ演奏において,様々に視覚情報を制限した際の演奏者間のタイミングのずれを計測した.実験1では,非対面条件,頭部のみ見える条件,頭部以外見える条件,対面条件での演奏について検討した.その結果,非対面条件以外で,ずれは十分に小さく,条件間でずれの大きさに差は無かった.実験2では,頭部の動作の有無について実験を行った.その結果,頭部を固定すると,ずれの大きさは非対面条件よりも小さく,頭部の動きが自由な条件よりも大きかった.これらの結果から,タイミング調整には,演奏者の動作が寄与しているものの,視線などの頭部に含まれる手がかりも用いられていることが示唆された.
著者
河瀬 諭
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.19-24, 2009
参考文献数
14

音楽演奏において,視覚情報は演奏者の表現を聴取者が理解する上で重要な役割を果たしている.中でも視線は,これまでにも定性的にはその重要性が指摘されながら,定量的にはほとんど検討されてこなかった.そこで,本研究は,実際に演奏中の視線行動を分析することにより,音楽演奏に果たす視線の役割を明らかにすることを目的とした.手続きとして,音楽を専攻する学生で構成されたポピュラー音楽バンドの演奏を録画し,各演奏者の顔の向きを分析した.その結果,演奏者は楽曲構造に依存して互いに頻繁に視線を交わすこと,楽曲上の中心的な役割を担う者を見ることが示された.このような行動は,より良い演奏音の産出という演奏者間コミュニケーションのみならず,観客の注意を誘導し,次の音楽的主役へ向ける演奏者-聴取者間コミュニケーションの役割もあると考えられる.
著者
小幡 哲史 中村 敏枝 河瀬 諭 片平 建史 安田 晶子 谷口 智子 正田 悠
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.27, 2007 (Released:2007-10-01)

演奏者は複数人で演奏を行う際,演奏音やそれ以外の感性情報を用いて,演奏を合わせていると考えられる。本研究では特に演奏者が使用する呼吸情報に注目した。演奏者はお互いのタイミングを合わせることや,楽曲の構造上,演奏者が息継ぎをするためなどに,呼吸情報を使用していると考えられるが,このような点について定量的に分析した研究例は数少ない。そこで本研究では2人のバイオリン奏者による演奏実験を,対面条件と非対面条件で実施し,演奏音と演奏者の呼吸情報の使用について定量的に分析した。その結果,対面条件においてのみ2人の演奏者が呼吸情報を使用する箇所や,対面,非対面に関わらず2人の演奏者が呼吸情報を使用する箇所が見られた。このことから,演奏者は演奏を行う際に呼吸情報を使用してお互いのタイミングを合わせていることや,楽曲の構造上,演奏者自身のために呼吸情報を使用していることが示唆された。
著者
河瀬 諭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.189, pp.75-78, 2014-08-15

本研究の目的は,演奏者の日常的なコミュニケーション能力が合奏の成否に与える影響を明らかにすることである.本研究では,演奏者のコミュニケーション能力が合奏の練習方略に影響し,練習方略と個人の演奏スキルが合奏の出来に影響すると仮定した.音楽専攻生68人を対象として,質問紙調査を実施した.その結果,以下のことが示された.(1)社会的スキルと,対人葛藤を自分も他者も満足できるように解決する能力は,合奏での平等な練習方略に影響していた;(2)日常場面でのリーダーシップは,合奏の練習でのリーダーシップ方略に影響していた;(3)2つの練習方略は,合奏の出来に寄与していた;(4)日常場面でのコミュニケーション能力,合奏の練習方略,合奏の出来には因果関係があった.
著者
河瀬 諭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.189, pp.75-78, 2014-08-22

本研究の目的は,演奏者の日常的なコミュニケーション能力が合奏の成否に与える影響を明らかにすることである.本研究では,演奏者のコミュニケーション能力が合奏の練習方略に影響し,練習方略と個人の演奏スキルが合奏の出来に影響すると仮定した.音楽専攻生68人を対象として,質問紙調査を実施した.その結果,以下のことが示された.(1)社会的スキルと,対人葛藤を自分も他者も満足できるように解決する能力は,合奏での平等な練習方略に影響していた;(2)日常場面でのリーダーシップは,合奏の練習でのリーダーシップ方略に影響していた;(3)2つの練習方略は,合奏の出来に寄与していた;(4)日常場面でのコミュニケーション能力,合奏の練習方略,合奏の出来には因果関係があった.