著者
田村 和之 来間 泰男 小田 清 高原 一隆 秋葉 節夫 岡本 篤尚 仲地 博
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、以下のようなことを明らかにすることができた。1.地方自治体に対して国が交付する在日米軍基地・自衛隊関連交付金等(基地交付金)は、補助率が高く、これを受ける地方自治体は基地交付金に依存する傾向が見られる。また、その算定にあたり国の裁量が働く余地があり、この仕組みは依存を昂じさせる。2.基地交付金は、これまで自治体の公共事業の実施に大きな影響を与えてきた。過疎地域の地方自治体がこの傾向から脱却することは容易でない。しかし、産業の発展している都市周辺部の自治体の基地交付金依存度はさほど大きくない。3.一部地域では、新しい基地公害(野生種絶滅の危険)などに基地交付金を対応させる必要が見られる。4.軍事施設・基地は、当該地域の産業や住民の生活に密着する限りにおいて地域経済の活性化効果をもつが、その施設の後始末、発生する公害等の処理を考慮すると、短期的な効果だけでみるのは問題である。5.基地と地域経済とは微妙なバランスをたもたせながらも、将来的には暮らし密着型の産業構造へシフトすることが求められる地域は少なくない。6.沖縄県では、復帰により経済の基地依存度は大きく落ちたが、近年、やや高めている。そのような中で、軍用地料が「相当に高い」という問題がある。このことが沖縄経済だけでなく自治体行財政にもゆがみをもたらしている。
著者
小田 清 小坂 直人 松田 光一 武市 靖 大西 有二 山田 定市 千葉 卓
出版者
北海学園大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

北海道・有珠山は平成12年3月31日、23年ぶりに噴火した。事前避難活動が徹底していため、人的被害は皆無であったが、道路や水道等のライフラインや住宅地、工場や病院等は大きな被害を受けた。また、地域経済の活動中心地であった洞爺湖温泉街は、「危険地域」という風評被害的なものもあって観光客が激減し、地域経済にとって大きな痛手となっている。その後、噴火活動は沈静化し、大部分の地域では平常さを取り戻しつつある。しかし、3年有余が経過した現在、復興に向けて、各種の公共事業が展開しつつあるが、新たなハザードマップの作成や土地利用計画、観光産業の不振による経済生活の不安定さと有効な手段の欠如、教育施設や福祉施設の移転等による不便さなど、新たな問題が山積している。本研究では、平成13年度に引き続き、(1)経済・産業の復興視点、(2)地域社会・生活・教育の復興視点、(3)復興に伴うインフラ整備と地方財政問題視点、(4)復興に伴う行政・法的諸問題の視点から、総合的な地域復興計画を探ることを目的とし、地域実態調査と補足調査を実施してきた。その結果、ほぼ、上記の4つの視点からの研究成果が得られた。すなわち、(1)の視点からは、現実に経済活動を行っている地域を「危険地域」として非居住地にすることの根強い地域住民からの反対と法的規制の困難さ、(2)医療・福祉・教育施設の移転に伴う諸問題と避難住民・生徒のケア問題の存在、(3)インフラ整備と財政負担問題、国庫補助の引き上げ問題、(4)災害復興に関する行政対応と義援金配分問題の存在などである。その結果、20〜30年周期で予想される再噴火に対応しての防災マニュアルづくりの難しさが浮き彫りになってきている。行政の防災対応と生活している地域住民との折り合いをどうつけるのか、地域経済の再興をどのように実現するのか、これらに関しては、さらに詳細な地域実態調査・研究が必要であると考えている。
著者
出口 浩一 横田 のぞみ 古口 昌美 中根 豊 深山 成美 西村 由紀子 小田 清次 田中 節子 加藤 三枝子 佐藤 久美子 福本 寅雄
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1600-1622, 1988

1987年後半に分離した入院患者由来グラム陰性桿菌に対するMonobactam系抗生物質 (Carumonam (CRMN), Aztreonam (AZT)) の抗菌力をPenicillin系抗生物質 (PCs)(Piperacillin (PIPC)), Cephem系抗生物質 (CEPs)(Ceftazidime (CAZ), Cefotaxime (CTX), Latamoxef,(LMOX), Cefsulodin (CFS)), Carbapenem系抗生物質 (Imipenem (IPM)), そしてPyridonecarboxylic acid系抗菌剤 (Norfloxacin (NFLX), Ofloxacin (OFLX)) を加えて検討した。<BR>検討に供した株は<I>Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Proteus mirabilis, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia rettgeri, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae, Enterobacter aerogenes, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosa</I>, そして<I>Haemophilus influenzae</I>の合計13菌種400株である。<BR>1. Monobactam系抗生物質であるCRMN, AZTの抗菌力はほぼ同等であり, <I>E. coli, Klebsiella spp., Proteus spp., M. morganii, P. rettgeri</I>, そして<I>H. influenzae</I>の耐性菌はなく, <I>S. marcescens</I>の耐性菌は少ない。<I>C. freundii, Enterobacter spp., P. aeruginosa</I>の Monobactam系抗生物質の耐性菌は比較的高率であるが, これらの菌種に対するPCs, CEPs 耐性菌はMIC値≥50μg/mlのいわゆるResistant (R株) が高率であるが, Monobactam 系抗生物質の耐性菌はMIC値が12.5~25μg/mlのいわゆるIntermediate (I株) の占める割合が高い成績だった。<BR>2. PCsのPIPC耐性菌は検討に供した株のいずれにも平均して高率にみられた。<BR>3. CEPsの抗菌力は菌種によって異なっていた。CTX, CAZ, LMOX耐性菌は<I>C. freundii, Enterobacter spp., S. marcescens</I>に共通して高率であるが, <I>C. freundii, Enterobacter spp</I>. のLMOX耐性菌はI株の占める割合が高く, CTX耐性菌は<I>P. vulgaras,. M. morganii</I>にもみられた。なお, P. aeruginosaのCEPs耐性菌 (1株を含む) はCFS28%, CAZ12% だつた。<BR>4. Carbapenem系抗生物質であるIPMの抗菌力は13菌種のいずれに対しても耐性菌が皆無もしくは, 耐性菌が少なく最も安定した抗菌力を示したが, <I>Klebsiella spp., P. mirabilis</I>, そして<I>H. influenzae</I>にはMonobactam系抗生物質, CEPsの抗菌力に劣つていた。<BR>5. Pyridonecarboxylic acid系抗菌剤であるNFLX, OFLXの抗菌力はほぼ同等であるが, <I>P. vulguris, M. morganii, P. rettgeri, S. marcescens</I>, そしてP. aeruginosaの耐性菌 (I株を含む) が高率である他, K. pneumoniae, C. freundii, E. aerogenes, <I>H. influenzae</I>の耐性菌も散見された。