著者
谷村 弘 内山 和久 石本 喜和男 OCHIAI Minoru TUJI Takeshi IWAHASHI Makoto 岩橋 誠
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

炎症性腸疾患における食物繊維の意義は、いまだ未解決のままである。われわれは、その原因は、食物繊維の特性の違いを無視した検討がなされてきたためであると考える。そこで、特性のことなる2つの食物繊維(15%セルロースと10%フラクトオリゴ糖)と無繊維食、普通食をラット、デキストラン硫酸ナトリウム誘発潰瘍性大腸炎モデルに投与し、糞便中短鎖脂肪酸、腸内細菌叢、病理組織学的検討を行い、食物繊維の炎症予防効果、治癒促進効果について検討した。その結果、同じ食物繊維でもセルロースに代表される不溶性で、刺激性の強い食物繊維は、むしろ炎症を助長するが、フラクトオリゴ糖では、腸内細菌叢を早期に改善し、短鎖脂肪酸を増加させ、腸内環境をいちはやく改善し、炎症予防・治癒促進の両面の作用を有することが判明した。この理由としては、まず第一にフラクトオリゴ糖が水様性で、発酵性に富み、なかでもビフィズス菌に選択的に利用される特性からビフィズス菌優位の腸内細菌叢を作り出し、短鎖脂肪酸代謝を活性化するためであると考える。短鎖脂肪酸は、大腸粘膜細胞のエネルギー源であり、細胞回転率を高め、粘膜血流を増加させ、水分や電解質の吸収を調整し、腸管の蠕動運動を高める作用がある。このような作用が抗炎症的効果を産み出したものと考える。また臨床例においても、フラクトオリゴ糖10〜30g/日を投与した結果、腸内細菌の改善や短鎖脂肪酸の増加に有用であり、そのような症例では、便性の改善や臨床症状の改善が認めれ、新食物繊維としてのフラクトオリゴ糖の有用性が確認された。
著者
相川 直樹 谷村 弘 河野 茂 吉田 稔
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.721-734, 1998-12-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
28

深在性カンジダ症は白血病などの好中球減少患者に好発する感染症と考えられていたが, 近年, 外科あるいは集中治療室 (以下ICUと称す) 入室患者などの好中球非減少患者に発症する深在性カンジダ症も増加傾向にあることが, 欧米を中心に報告されてきている1.2)。The European Prevalence of Infection inIntensive Care (EPIC) による調査3) では, ICUにおける院内感染症の起炎菌の中で, 真菌は5番目に多く検出されていた。この増加の原因としては, 外科ならびにICU領域における, 広域スペクトル抗細菌薬の繁用, 免疫抑制薬, 抗癌薬の使用の増加, 中心静脈栄養の多用など, 深在性カンジダ症発症のリスクファクターの増加が考えられる。さらに, 医療技術の進歩によりICU入室患者の生存率が改善され, 入院期間が延長したことも深在性カンジダ症の増加に関係している。この中でも, 広域スペクトル抗細菌薬の繁用は腸管内常在菌叢を撹乱し, カンジダ症を発症しやすくするとも考えられ, 重要なリスクファクターとなる。深在性カンジダ症のmorbidityとmortalityに関するWEYら4) のmatchedpair法を用いた研究では, カンジダ血症は死亡の38%に寄与しており, カンジダ血症を発症したものの生存した患者の入院日数は, 対照患者に比較して平均30日も延長した。また, 好中球非減少患者において, カンジダによる眼内炎は失明など予後不良なため問題となっている。わが国においても, 真菌性眼内炎の頻度は, 中心静脈栄養施行患者の3%, カンジダ血症発症患者の約40%と報告5・6) されている。消化管にコロナイゼーションしているカンジダは, 消化管の大手術, 外傷および熱傷, 免疫抑制薬などの影響による消化管粘膜のintegrityの減弱により, 血中に移行することが知られている7・8) ○近年, このことが深在性カンジダ症の発症の原因の一つと考えられている。このように, 好中球非減少患者における深在性カンジダ症に関して, 最近多くの知見が得られるようになった。しかしながら, 深在性カンジダ症は, 血液など本来無菌である部位からの培養が陽性となる以外に, 確定診断することが困難である。このため, 臨床の現場では深在性カンジダ症の診断および治療の開始が遅れ, 予後の悪化をまねいており, 早期診断, 早期治療の必要性が認識されつつある。この点に関して, 欧米では, 好中球非減少患者における深在性カンジダ症の診断および治療のガイドラインが提案9 {12) されている。しかし, わが国ではいまだその診断と治療において必ずしも十分な議論がなされておらず, 施設あるいは主治医によって様々な考え方のもとに診療が行われているのが現状である。一方, わが国では, 血清学的補助診断法として, 真菌細胞壁構成成分であるβ-D-glucanを検出する方法や, Condida抗原を検出する方法が実用化されて, 深在性カンジダ症の存在を推測することが可能であるが, 欧米では血清学的補助診断法はあまり普及していない。このような背景から, わが国独自の深在性カンジダ症の診断および治療のガイドライン作成が必要と考えられる。そこで, 深在性カンジダ症の診断・治療のガイドラインの基礎となる情報を得ることを目的として, 会議を開催した。会議では, 全国の深在性真菌症の診断と治療に携わる機会の多い臨床家の参加を得て, 好中球非減少患者に発症する深在性カンジダ症の診断方法, 抗真菌薬の投与開始のタイミング, 投与薬剤の選択・投与・量に関して, 臨床現場での現状あるいは考え方などの情報を収集した。