著者
下川 哲徳 下川 学 高橋 宗良 小山 泰文 松本 高明 山本 外憲 中治 洋一 井之上 正信 野田 亘 窪田 辰政 徳田 眞三
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-10, 2000

本研究は,大学柔道部員,その指導者,および警察柔道選手を合わせた220名を対象に,肩鎖関節損傷についてアンケート調査を行った。その目的は,柔道選手における肩鎖関節損傷の発生率と受傷後の影響,そして,その回復を目指した処置としてのリハビリテーションの効果について明らかにするためである。その結果,以下の点が明らかとなった。<br>1)今回調査対象とした220名に起きた全外傷数は,487例であった。全外傷数487例のうち,肩鎖関節損傷は99例あり,それは全体の20.3%であった。<br>2)肩鎖関節損傷を負った99人中の9人の柔道の技は,その後変わった。彼らの得意技は,主に背負い投げから一本背負いへと変わった。また,他のスポーツへの影響については,6人が野球の投球動作に支障をきたした。<br>3)肩鎖関節損傷の損傷程度は,Weaver式診断法を活用し,以下の方法に基づいて3タイプに分類した。それらは,99人に対する整形外科医による肩鎖関節損傷についての過去の外傷ないしは症状の直接質問,およびX線による肩鎖関節損傷部分の正面画像の撮影,さらに肩鎖関節損傷部分に変形がみられる場合は,X線による5kg負荷のストレス撮影である。その結果,type Iが45人,type IIが35人,type IIIが19人であった。<br>4)本研究では,リハビリテーション・プログラムを受けた者はtype IIないしはtype IIIから合計11人であったが,彼らは全員,機能的評価判定について「優」を示した。そして,彼らの回復期間は,リハビリテーション・プログラムを受けなかった者と比べて,短縮した。これらの結果は,肩鎖関節損傷が起きた場合は,可動域や筋力は,適切な診断,ICES処置の徹底,身体面と精神面の両方を考慮して作られたリハビリテーション・プログラムを実行することにより,効果的に回復することを示唆している。リハビリテーション治療の効果は,損傷の程度により差はあるものの,本研究で試みたリハビリテーション・プログラムは,柔道選手が径我をした際,肩鎖関節損傷部分の機能を回復させるための有効な手段の一つになると思われる。
著者
木田 光広 長谷川 力也 松本 高明 三島 孝仁 金子 亨 徳永 周子 山内 浩史 奥脇 興介 宮澤 志朗 岩井 知久 竹澤 三代子 菊地 秀彦 渡辺 摩也 今泉 弘 小泉 和三郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.456-463, 2015-03-05 (Released:2015-03-05)
参考文献数
26
被引用文献数
1

胆嚢腺筋症は,1960年にJutrasによりRASの増殖とそれにともなう胆嚢壁の肥厚を引きおこす病態として報告され,武藤らにより胆嚢壁1 cm以内にRASが5個以上存在し,壁が3 mm以上に肥厚したものと定義された.病変の広がりにより胆嚢全体に瀰漫性に存在するびまん型(G型)diffuse type,胆嚢頸部や体部あるいは両方にまたがり輪状に存在し,胆嚢を2つに分節する分節型(S型)segmental type,胆嚢底部に限局的に存在する底部型(F型)fundal typeの3つに分類される.画像診断では胆嚢癌との鑑別が重要で,胆嚢腺筋症は胆嚢壁の肥厚と,拡張したRASが診断の決め手であり,簡便な腹部超音波検査でスクリーニングされ,診断能の高い検査は超音波内視鏡(EUS)とMRIである.胆嚢腺筋症は,40~60歳代の男性に多く診断される.胆嚢癌との関係は疑われているがコンセンサスは得られていない現状では,定期的な経過観察が必要と思われる.
著者
青葉 貴明 松本 高明 青山 利春 角田 直也
出版者
日本トレーニング科学会
雑誌
トレーニング科学 (ISSN:13494414)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.339-345, 2010 (Released:2014-04-03)
参考文献数
27

本研究は,陸上競技の投擲選手(TR),短距離走者(SP),長距離走者(DR)における全身・各部位の除脂肪軟組織量(LSTM)と安静時代謝量(REE)の関係,および安静時代謝量の推定値を求め,競技特性との関係を明らかにすることを目的とした.被験者は,大学陸上競技選手 59名(TR : 20名,SP : 20名,DR : 19名)であった.身体組成測定は全身用デュアルX線骨密度測定装置(DXA 法)を用い,頭部,体幹部,上肢部,下肢部及び全身を測定した.種目間の有意な差異は,各部位および全身のLSTM においてみられた.TRにおける体重あたりのREE は,他の種目に比べ有意に低い値が示された.一方,活性組織量あたりの安静時代謝量は,種目に関わらず30kcal/day/kg が示され,種目による顕著な差異は認められなかった.全身のLSTM とREE との間には有意な高い相関関係が認められた.これらのことから,安静時代謝量はスポーツ選手のトレーニング様式の違いによる活性組織量に影響を受けることが示唆された.
著者
内藤 祐子 市川 公一 竹中 敏文 松本 高明
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

唾液は日常において被検者に苦痛や侵襲を与えずに試料を採取できる利点がある。したがって、各種疾患のスクリーニングや診断の指標として唾液のモニタリングの有用性について基礎的検討を加えた。1.心理的ストレスと肉体的ストレスの及ぼす影響を唾液物質でスクリーニングする:(1)1日に30kmを走行するハードトレーニングを実施した合宿前後の唾液中のsIgAの変化量と合宿後のPOMS検査による活気度得点との間には有意な正の相関関係(p<0.05)が観察されたが,試合前後による変化量には違いはなかった。(2)試合前後の唾液クロモグラニンAの変化量と試合後の活気度得点との間に有意な負の相関関係(p<0.05)が認められたが,肉体的ストレスである合宿前後での変化量に関しての相関は認められなかった。(3)これより唾液中のsIgAの変化量の増加にともなって合宿後の活気度得点が増加していることからハードトレーニングで身体的に疲労している場合でも精神的に充実しているものはsIgA濃度も高値を示すが,心身ともに疲れきったものはsIgA濃度も減少し,易感染しやすいと考えられる。また,試合後の活気度得点とクロモグラニンAの変化量の関係から,試合による肉体的疲労よりも試合結果のダメージによる心理的ストレスの度合いが試合翌日後の活気に影響を与えていると考えられる。2.唾液ストレスホルモン物質の違い:90%VO2maxの激運動後では唾液抗菌物質であるリゾチームと唾液コルチゾールの分泌量に変化が見られたが,その動向は唾液クロモグラニンAの変化とはかならずしも同一ではなかった。この点についてはさらに検討を加えている。3.唾液カルシウム濃度:運動選手の骨密度と血液や尿中のカルシウム濃度に関しては有意な相関関係がなかったが,唾液カルシウム濃度と骨密度の間には有意な相関関係がえられた。したがって,唾液カルシウム濃度を骨粗鬆症のスクリーニング値とする可能性が示唆された。