著者
棚町 千代子 吉永 英子 水島 靖子 齊藤 祐樹 天本 貴広 井上 賢二 中島 収 山口 倫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.447-452, 2016-07-25 (Released:2016-09-10)
参考文献数
7

2012年9月より,当院の手術室の手洗い水は滅菌水から水道水へ変更となった。これに伴い,2箇所の手洗い場の7つの蛇口から採取した水道水の細菌汚染調査を行い,適切な管理方法について検討した。以前は一般細菌と大腸菌について検査されていたが,従属栄養細菌を追加し調査した。手洗い水から一般細菌と大腸菌については検出されなかった。しかし,従属栄養細菌は目標値とされる集落数2,000 CFU/mLを超えていた。優勢菌種はSphingomonas pausimobilisとMethylobacterium sp.であった。対策として,まず蛇口の清掃,使用前の流水の確認,塩素濃度の測定を行った。これらの結果では塩素濃度は十分であったにもかかわらず,従属栄養細菌が多く検出された。すなわち塩素に対し耐性を示す細菌が存在することから,塩素以外の熱水殺菌が有用であると思われたため,次に65℃の熱水による処理を実施した。この対策後,現在まで従属栄養細菌は2,000 CFU/mL以下となっている。これまでの管理を見直し,徹底することで手洗い水の改善に至った。今後も手洗い水に含まれる従属栄養細菌を検査することにより,清浄度が保たれると思われる。
著者
山口 倫直 伊藤 秀隆 鈴木 典子 高橋 猛 井上 登太
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.D3P2548-D3P2548, 2009

【目的】呼吸機能検査においてスパイロメロリーは簡便でかつ比較的侵襲性の低い検査方法であるが,正確なデータを得るには検査技師の技量のみならず,被験者の協力,努力が必要不可欠である点が挙げられる.さらに測定値にばらつきが出やすいことが問題になっている.6秒量(以下FEV6)は呼気開始時点から最初の6秒間に呼出された気量のことで,努力肺活量(以下FVC)の代用として注目されている.今回我々はFVCの代用としてFEV6の有用性について検討したので報告する.<BR><BR>【方法】計画内容を説明のうえ協力の同意を得た被験者25名(男性14名,女性11名,平均年齢68.5歳)を対象とした.方法は,英国フェラリス社製PiKo-6にてFEV6,FEV1,FEV1/FEV6を測定し,またフクダ電子社製Spiro Sift Sp-750にて肺機能検査を行いFVCの測定を行った.そこでFEV6とFVCとの相関を評価した.統計手法として,ピアソン相関係数をおこないp < 0.05を有意水準として判定した.<BR><BR>【結果】Piko-6によるFEV6測定値とSpiro Sift Sp-750によるFVC測定値との相関を評価した結果,相関係数r = 0.838と高い相関を示した.<BR><BR>【考察】FVCの測定は肺気量分画を測定するとき以上に被験者の協力,努力が必要で,特に閉塞性換気障害を有する場合,胸腔内圧の上昇から引き起こされる循環動態の変化から,胸部不快感や稀に失神などの危険性も孕んでいる.呼出努力の時間を6秒間に限定することにより合併症のリスクが減少すると考えられる.また閉塞性換気障害が高度な場合,呼出の終末に近づくに従い呼気流速が著しく低下してスパイロメーターの測定感度を下回る状態が続くことがあり,結果として測定終了点が不明確になることも少なくない.この測定終了点の明確さにおいてもFEV6はFVCに比べ測定値のばらつき少ないと言える.<BR>PiKo-6はFEV6の測定に機能を絞った安価な測定機器であり,従来のスパイロメーターと比較して小型・軽量で持ち運びに便利な上,操作も安全かつ簡便で検査者による測定値の差が出にくい利点がある.今回の結果から,PiKo-6によりFEV6の測定を行うことでFVCの代用としての有用性が示唆された.FEV6の採用により測定時間が大幅に短縮され,限られた時間内により多くの検査やスクリーニングが可能になると思われる.さらに,ベッドサイドや訪問リハビリなど様々な場面,様々な職種における簡便な呼吸機能評価が可能になることが期待される.<BR><BR><BR>【まとめ】Piko-6によるFEV6測定値とスパイロメーターによるFVC測定値との相関を評価した.その結果,相関係数r = 0.838と高い相関が認められた.FEV6はFVCよりも簡便でかつ安全に施行でき,検査者による測定値の差が出にくい特徴がありFVCの代用としてのFEV6の有用性が示唆された.FEV6は呼吸器疾患,特にCOPDなどの閉塞性換気障害に対して有効な評価方法であり,今後の呼吸リハビリテーションの発展への貢献が期待される.
著者
山口 倫
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

乳癌は、組織学的見地の他、現在サブタイプという概念が浸透している。我々は、乳癌が早期から浸潤癌までどのように進展、発育するかをサブタイプ (基本的にルミナル、Her2陽性、トリプルネガティブ群に大別) の概念から、特に免疫応答の観点も加え、検診における過剰診断や過剰治療にも言及できるよう検討を行った。早期乳癌において、Her2陽性上皮内癌はコメド壊死を有する高異型度癌が多く、腫瘍リンパ球浸潤免疫応答によって浸潤する経路があり、他サブタイプとは異なることが明らかになった。また、浸潤性Her2陽性乳癌ではER陽性と陰性群で病理・形態学的・免疫応答の点において大きく二分されることが明らかとなった。
著者
山口 倫 森田 道 山口 美樹 大塚 弘子 赤司 桃子 田中 眞紀 矢野 博久
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.143-147, 2017 (Released:2018-06-27)
参考文献数
16

以前,乳癌検診は早期発見,早期治療を掲げていたため,病理医も早期癌あるいは将来癌になるであろう病変を見出すことに重きを置いていた。しかし昨今,過剰診断の問題が取り沙汰され,特に検診では予後改善が目的で,“命に関わらない”病変を如何に見出さないかという考えにシフトしているようだ。一方で,その対象が境界病変,低異型度(LG)―DCIS,LG 浸潤癌なのか,それら全部なのかは不確かである。 DCIS はluminal だけでなく,HER2陽性も存在するheterogenous なグループで,前者はLG,後者は高異型度の浸潤癌となる。従来の乳癌モダリティでは,triple negative DCIS はきわめて検出されづらく,残念ながら致死的癌の“芽”の早期発見は大部分ができていない。一方で,大半が予後良好と思われるLG-DCIS も一定の割合で浸潤し,低頻度ではあるが数年後死に至る例もある。 これらのことから私見であるが, ( i )今後の検診について, 1.多形線状石灰化≒コメド壊死≒HER2陽性癌の早期検出にフォーカスし,抗HER2療法の抑制に繋げる。 2.早期乳癌,境界病変の病理診断者間一致率は低いため,マンモグラフィ精査基準を上げ,LG-DCIS/LN/境界病変(luminal)の検出・採取率を減らす。結果的に取扱いに悩む機会が減る。 3.致死的TN の早期検出に関しては新しいモダリティを見出す。 (ii)病理診断(癌診断基準)について, LG 乳癌は低頻度だが死に至り,LN 転移など悪性のポテンシャルも有する。したがって,しばらくの間現状のクライテリアとし,“低リスク”病変の病態を明らかにする。 今後は,“命に関わらない”病変の臨床病理学的定義とその所見を明確にしていく必要がある。
著者
山口 倫子
出版者
神戸親和女子大学福祉臨床学科
雑誌
神戸親和女子大学福祉臨床学科紀要 = Bulletin of social welfare, Kobe Shinwa Women's University (ISSN:18812414)
巻号頁・発行日
no.13, pp.75-85, 2016-03-31

1998年以降の自殺者数の増加や、精神障害等に係る労災請求件数の増加などから、メンタルヘルス対策が喫緊の課題であった。そこで2014(平成26)年6月に「労働安全衛生法の一部改正」により、ストレスチェック制度が創設された。この制度の目的は、メンタルヘルス不調の一次予防、労働者自身の気付きを促す、職場環境の改善の3点である。制度の概要と流れは、①事前準備、②ストレスチェックの実施、③面接指導の実施、④集団的な分析による職場環境の改善となっている。そこで、精神保健福祉士は一定の条件をクリアすれば検査の実施者となれることが規定された。これは、精神科医療現場における精神保健福祉士の活躍に対する一定の社会的評価であると考えられる。また、この制度に関しても、面接指導への勧奨や職場環境の調整、あるいは専門機関への紹介等の支援など、個別ケースワーク的なかかわりが期待されるため、精神保健福祉士の力が発揮できるのではないかと考える。 昨今、医療現場だけでなく、教育や司法といった分野においても精神保健福祉士が活躍しているが、ストレスチェック制度導入をきっかけに、今後、労働現場におけるメンタルヘルス対策が進み、産業保健分野においても精神保健福祉士に対するさらなる期待と可能性が広がると思われる。
著者
山口 倫照 浅川 和久 柏田 師宏 瀬川 典久 澤本 潤 矢澤 正人 玉置 晴朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LOIS, ライフインテリジェンスとオフィス情報システム = IEICE technical report. LOIS, Life intelligence and office information systems (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.470, pp.19-23, 2012-03-01

センサネットワークの基本技術が開発され約10年経ち,現在その技術をいかに一般社会に生かして行くかが重要な課題となっている.現在おこなわれているセンサネットワークの実用化の実証実験は,都市部または安定してネットワークインフラが構築できる地域を対象とすることが多い.しかしながら,中山間地等の条件不利地域が多い東北地域では携帯パケット,ADSL等の通信網はもとより,容易に電源を得るのも難しい状況である.また,山間地等の地理的条件から,簡単にセンサネットワークのインフラを構築するのが困難であるのが実情である.しかし,都市部,中山間部といった利用する場所が異なるだけの理由でセンサネットワーク技術の利益が得られないことは避けたいと考えている.本研究は,災害時に要救助者を迅速に発見することを目的にしたシステムを提案する.提案するシステムでは,要救助者の位置情報の他に生体情報を基地局に送信することで,救助後の救命処置を助ける.