著者
松岡 亮二
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.241-262, 2015-05-29 (Released:2016-07-19)
参考文献数
47
被引用文献数
8 1

近年,国内データを用いた教育分野における社会関係資本研究は増えつつあるが,社会関係資本の可変性を考慮した上で教育不平等との関連を検討した実証研究は未だに行われていない。そこで本稿は,厚生労働省が収集する21世紀出生児縦断調査の個票データを使用し,(1)家庭の社会経済的地位,(2)父母の学校における社会関係資本,(3)子どもの社会関係資本を含む学校適応の関連を実証的に検討した。 大規模な3時点の縦断データを用いたハイブリッド固定効果モデルによる分析の結果によると,世帯収入(経済資本)と父母学歴(文化資本)が,父母それぞれの学校行事出席・保護者活動参加で指標化された学校社会関係資本を分化していた。これらの学校社会関係資本の多寡は子ども間の学校適応差異を部分的に説明し,資本量の変化は観察されない異質性を統制しても子どもの社会関係資本を含む学校適応の変化と関連していた。世帯収入と親学歴の学校社会関係資本を介した学校適応への影響は強くはないものの,社会関係資本の差異を通した不平等の再生産という傾向は確認された。 縦断データを用いた本稿の実証結果は,階層的基盤を有する父母の学校活動関与で示される社会関係資本が子どもの学校適応を促していることを示している。一方で,本稿の知見は,父母の学校関与という「つながり」の増加を通して対人関係を含む学校適応を促すことができる可能性も示唆している。
著者
松岡 亮二 中室 牧子 乾 友彦
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.89-110, 2014-11-28 (Released:2016-11-15)
参考文献数
35
被引用文献数
3 3

P. ブルデューの文化的再生産論は日本社会においても教育達成の格差生成メカニズムの一つとして研究され,各家庭における文化資本の偏在,それに家庭の文化資本と子の教育達成の関係について知見が蓄積されてきた。近年,教育選抜の早期化によって社会階層と教育達成の関連強化が懸念されているが,早期家庭内社会化によって文化資本が世代間相続する過程については未だに実証的に明らかにされていない。そこで本稿は厚生労働省による21世紀出生児縦断調査の個票データを用い,文化的行為である読書に着目し,文化資本の世代間相続という動的な過程をハイブリッド固定効果モデルによって検討した。 分析の結果,父母の学歴と世帯所得は,父母それぞれの一ヶ月あたりの雑誌・マンガを除く読書量という文化的行為を分化していた。また,これらの学歴と世帯所得によって異なる父母の読書量は,子ども間の読書量格差と関連していた。そして,父母の読書量の変化は,観察されない異質性を統制しても子の読書量の変化と関係していた。親の学歴は制度化された文化資本,世帯所得は経済資本であり,それらの資本量の差が読書行為を分化し,親子の文化的行為が関連している──小学校1,2,4年生の3時点の縦断データに基づいた本稿の結果は,子ども間の文化資本格差,それに先行研究が考慮しなかった観察されない異質性を統制した上で,文化的行為の世代間相続を実証的に示している。
著者
松岡 亮二
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.241-262, 2015
被引用文献数
1

近年,国内データを用いた教育分野における社会関係資本研究は増えつつあるが,社会関係資本の可変性を考慮した上で教育不平等との関連を検討した実証研究は未だに行われていない。そこで本稿は,厚生労働省が収集する21世紀出生児縦断調査の個票データを使用し,(1)家庭の社会経済的地位,(2)父母の学校における社会関係資本,(3)子どもの社会関係資本を含む学校適応の関連を実証的に検討した。<BR> 大規模な3時点の縦断データを用いたハイブリッド固定効果モデルによる分析の結果によると,世帯収入(経済資本)と父母学歴(文化資本)が,父母それぞれの学校行事出席・保護者活動参加で指標化された学校社会関係資本を分化していた。これらの学校社会関係資本の多寡は子ども間の学校適応差異を部分的に説明し,資本量の変化は観察されない異質性を統制しても子どもの社会関係資本を含む学校適応の変化と関連していた。世帯収入と親学歴の学校社会関係資本を介した学校適応への影響は強くはないものの,社会関係資本の差異を通した不平等の再生産という傾向は確認された。<BR> 縦断データを用いた本稿の実証結果は,階層的基盤を有する父母の学校活動関与で示される社会関係資本が子どもの学校適応を促していることを示している。一方で,本稿の知見は,父母の学校関与という「つながり」の増加を通して対人関係を含む学校適応を促すことができる可能性も示唆している。
著者
松岡 亮二
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.155-175, 2016-05-31 (Released:2017-06-01)
参考文献数
56
被引用文献数
7 2

親の世帯収入と学歴によって学校外教育活動への参加に差があることは,実証的に示されてきた。しかし,先行研究は一時点における横断データに依拠してきた。よって,成長に伴って大多数の児童が学校外教育を利用するが,そこに社会経済的な格差が存在するのかは明らかにされていない。また,先行研究は観察されない異質性を統制していないので,経済資本と学校外教育機会利用の関連が過大評価されている可能性がある。そこで本稿は,厚生労働省が実施している21世紀出生児縦断調査の個票データを用い,(1)学齢と参加の関連が,世帯収入を含む社会経済的地位によって異なるのか,そして(2)世帯収入の変化が学校外教育参加の変化と関連しているのかを検討することによって,学校外教育投資における経済資本の役割を精査した。 世帯収入を含む3時点の大規模縦断データを,成長曲線を含むハイブリッド固定効果モデルによって分析した結果,資本転換の基底にあるとされる経済資本量が多く,父母の学歴が高いとき,学齢と学校外教育活動種類の増減の関連がより強い傾向にあった。また,係数は小さいものの,世帯収入の変化と習い事の種類数の変化の関連が明らかになった。この傾向は養育費を目的変数としても確認された。これらの知見は,学校外教育機会量の社会経済的格差は子の成長に伴って拡大するが,微弱ながら経済資本の効果が確認されたことから,経済的支援による格差解消の可能性を示唆している。
著者
松岡 亮二 中室 牧子 乾 友彦
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.89-110, 2014
被引用文献数
3

<p> P. ブルデューの文化的再生産論は日本社会においても教育達成の格差生成メカニズムの一つとして研究され,各家庭における文化資本の偏在,それに家庭の文化資本と子の教育達成の関係について知見が蓄積されてきた。近年,教育選抜の早期化によって社会階層と教育達成の関連強化が懸念されているが,早期家庭内社会化によって文化資本が世代間相続する過程については未だに実証的に明らかにされていない。そこで本稿は厚生労働省による21世紀出生児縦断調査の個票データを用い,文化的行為である読書に着目し,文化資本の世代間相続という動的な過程をハイブリッド固定効果モデルによって検討した。<BR> 分析の結果,父母の学歴と世帯所得は,父母それぞれの一ヶ月あたりの雑誌・マンガを除く読書量という文化的行為を分化していた。また,これらの学歴と世帯所得によって異なる父母の読書量は,子ども間の読書量格差と関連していた。そして,父母の読書量の変化は,観察されない異質性を統制しても子の読書量の変化と関係していた。親の学歴は制度化された文化資本,世帯所得は経済資本であり,それらの資本量の差が読書行為を分化し,親子の文化的行為が関連している──小学校1,2,4年生の3時点の縦断データに基づいた本稿の結果は,子ども間の文化資本格差,それに先行研究が考慮しなかった観察されない異質性を統制した上で,文化的行為の世代間相続を実証的に示している。</p>
著者
松岡 亮二 中室 牧子 乾 友彦
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.89-110, 2014
被引用文献数
3

<p> P. ブルデューの文化的再生産論は日本社会においても教育達成の格差生成メカニズムの一つとして研究され,各家庭における文化資本の偏在,それに家庭の文化資本と子の教育達成の関係について知見が蓄積されてきた。近年,教育選抜の早期化によって社会階層と教育達成の関連強化が懸念されているが,早期家庭内社会化によって文化資本が世代間相続する過程については未だに実証的に明らかにされていない。そこで本稿は厚生労働省による21世紀出生児縦断調査の個票データを用い,文化的行為である読書に着目し,文化資本の世代間相続という動的な過程をハイブリッド固定効果モデルによって検討した。<BR> 分析の結果,父母の学歴と世帯所得は,父母それぞれの一ヶ月あたりの雑誌・マンガを除く読書量という文化的行為を分化していた。また,これらの学歴と世帯所得によって異なる父母の読書量は,子ども間の読書量格差と関連していた。そして,父母の読書量の変化は,観察されない異質性を統制しても子の読書量の変化と関係していた。親の学歴は制度化された文化資本,世帯所得は経済資本であり,それらの資本量の差が読書行為を分化し,親子の文化的行為が関連している──小学校1,2,4年生の3時点の縦断データに基づいた本稿の結果は,子ども間の文化資本格差,それに先行研究が考慮しなかった観察されない異質性を統制した上で,文化的行為の世代間相続を実証的に示している。</p>
著者
岸 慎太郎 關岡 亮二 袖山 真学 志賀 正恩 瀬戸 康雄
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.65-76, 2010-01-05
被引用文献数
17

The detection performance of a portable <sup>241</sup>Am ionization aspiration-type ion mobility spectrometer (M90-D1-C, Environics Oy) was investigated with nerve gases, blister agents, blood agents, choking agents and related compounds. The vapors of nerve gases, sarin, soman, tabun, cyclohexylsarin were recognized as "NERVE" after about several seconds of sampling, and the limits of detection (LOD) were < 0.3 mg m<sup>−3</sup>. The vapors of blister agents, mustard gas and lewisite 1, and blood agents, hydrogen cyanide and cyanogen chloride were recognized as "BLISTER" with an LOD of < 2.4 mg m<sup>−3</sup> and > 415 mg m<sup>−3</sup>, respectively. The vapor of chlorine was recognized as "BLOOD" with an LOD of 820 mg m<sup>−3</sup>. The vapors of nitrogen mustard 3 and chlorpicrin were recognized as different alarm classes, depending on their concentrations. The vapors of nitrogen mustard 1, 2 and phosgene did not show any alarm. As for interference, the vapors of nerve gas simulants, dimethylmethylphosphonate, trimethylphosphate, triethylphosphate, diisopropylfluorophosphate, blister agent simulants, 2-chloroethylethylsulfide, 1,4-thioxane, 2-mercaptoethanol, and 20 organic solvents within 38 solvents examined were recognized false-positively. The patterns of detection sensor channel response values of 6 ion mobility cells and semiconductor cell were compared with the situation of the alarm against chemical-warfare agents.