著者
赤嶺 淳 長津 一史 安田 章人 落合 雪野 浜本 篤史 岩井 雪乃
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ゾウ類や鯨類など環境保護運動のシンボルとして表象(エコ・アイコン化)された特定の稀少生物と、そうした野生生物が生息する生態空間(生態資源)を資源としてツーリズム振興をはかろうとする人びとの動態を、①東南アジアとアフリカ、日本でのフィールドワークにもとづき批判的に検証し、②エコ・アイコン化された野生生物のみならず、そうした生物群を利用してきた人びとの生活様式・生活文化の保全を目的に、観光振興の可能性を展望した。本研究が目指すmulti-sited approachの実践例として、ラオスにおいて野生生物の利用者と(調査者をふくむ)多様な利害関係者間の対話を創出し、研究成果の社会還元をおこなった。
著者
河井 亨 岩井 雪乃 兵藤 智佳 和栗 百恵 秋吉 恵 加藤 基樹 石野 由香里 島崎 裕子 KAWAI Toru IWAI Yukino HYODO Chika WAGURI Momoe AKIYOSHI Megumi KATO Motoki ISHINO Yukari SHIMAZAKI Yuko
出版者
名古屋大学高等研究教育センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.245-265, 2017-03

本研究は、早稲田大学オープン科目「体験の言語化」という同一科目複数クラス開講型授業の授業開発を対象とし、共同の授業リフレクションの場で、どのように授業実践へのふりかえりが語られるかを明らかにすることを目的とし、同一科目複数クラス開講型の授業リフレクションのあり方を考察する。2015年7月と2016年2月の2回の共同の授業リフレクションの記録を分析した。共同での授業リフレクションの役割は、授業者間で共通理解を形成していくことにある。まず、学生のつまずきについての共通理解が形成された。具体的には、どのように自分の言葉にしていくか、社会課題を当事者意識を持って考えていくかといったつまずきが見られた。また、そうしたつまずきについてどのように教師が働きかけていくかについて共通理解が形成された。その際には、実際の授業で生じる具体的な状況とそこでの学生の学習に即すことによって授業リフレクションが深まることがわかった。共同での授業リフレクションの場は、暗黙知的に行っていることを共有していく場である。そのような共同での授業リフレクションを土台とすることで、授業改善が可能になると展望された。This study focuses on the class “Contextualizing Self in Society,” provided as six lectures at Waseda University. This paper aims toinvestigate how these lectures reflect collaboratively on theirteaching practices. We analyzed reflection sessions from July 2015and February 2016. The framework of teachers’ reflections consistedof students’ learning (contexts/contents) and results (success/failure).Our results showed that collaborative reflection fostered sharedunderstanding of practice and of students’ learning. The challenges tostudent performance that they shared concerned how students maketheir own narratives, how they thought about social problems withtheir own authorship, and what teachers could do when studentsencountered difficulties. Although we did not find a final solution, wecould agree on what the problems were and come up with trialsolutions. The most effective measure for practice improvement is toconvert tacit knowledge with common understandings. The resultsalso showed that relating concrete student performance to the classcontext enabled deep class reflection. We concluded that collaborativereflection can improve the classroom experience for lectures.
著者
岩井 雪乃
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、アフリカゾウによる農作物被害が発生している地域で、地域住民がゾウといかに共存できるのかを「被害認識の緩和」の視点から実証的に明らかにすることを試みた。研究の過程では、タンザニアのセレンゲティ国立公園に隣接する村落において、被害対策(車による追払い・養蜂箱の設置)を実践し、多様な関係者(県・地元NGO・国際NGO・観光企業・日本人ボランティアなど)が連携する場をつくった。その結果、被害対策において多義的な関係性を創出することが、被害認識の緩和につながる可能性が示唆された。
著者
岩井 雪乃
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.7, pp.114-128, 2001-10-31
被引用文献数
2

アフリカの自然保護政策は,人間を排除する「原生自然保護」からの転換期を1980年代にむかえ,「開発か保護か」の二元論を脱却する施策として「住民参加型保全」が試みられている。しかしこの政策は,いまだ生態系の保全を重視する傾向が強く,その法規制と住民生活の実態には大きな乖離が見られる。本稿では,セレンゲティ国立公園に隣接して暮らすイコマの生活実践を事例に,この乖離点を明らかにし折衷の方向性を見出すことを試みる。イコマは政府によって狩猟が規制される以前から,野生動物を自給だけでなく商業的にも利用してきた人びとである。1970年代に規制が強化されると,パトロールに見つかりにくくかつ彼らにとって効率的な猟法を編み出し,現在では専業化と分業化の傾向を強めながら狩猟を継続している。これらの変化の中で,セレンゲティ地域における人と野生動物の距離は過去に比べると「遠く」なっている。しかし数年に一度「ヌー騒動」を経験するイコマは,野生動物との関係を比較的「近く」保っているといえる。本稿に見るイコマの実践は,「科学的」な研究にもとづいて猟法を規制し,利用可能な動物個体数を制限する政策とはかみ合わないが,その一方で,歴史的に利用してきた野生動物という資源を今後も持続的に利用していくことでは政策との接点が見出せるのである。