著者
鬼頭 秀一 丸山 康司 佐藤 哲 井上 有一 池田 啓 桑子 敏雄 丸山 徳次 白水 士郎 森岡 正博 松田 裕之 森岡 正博 蔵田 伸雄 松田 裕之 瀬戸口 明久 立澤 史郎 福永 真弓 吉永 明弘 富田 涼都 安田 章人 二宮 咲子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

生物多様性保全と自然再生の理念は、地域社会の文化や社会のあり方と密接に結びついており、そのようなものを統合した「地域再生」の理念と深い関係がある。そのため、自然と社会や文化の入れ子状態の中で、「サステイナビリティ」などの自然にかかわる理念も社会や文化の理念から再定義されなければならない。そのようなことを実践的に可能にするための人材育成のあり方を実践的に提示するとともに、生物多様性保全や自然再生が、治水や災害などの問題も含めた包括的な環境や社会のあり方、さらには、エネルギーや脱炭素化社会の構築にも展開できる社会的な論理を提示した。『環境倫理学』(東京大学出版会)を出版してその成果の内容を提示した。
著者
安田 章人
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
vol.14, pp.38-54, 2008

<p>本稿の目的は,アフリカにおける娯楽のための狩猟,スポーツハンティング(sport hunting)を事例に,グローバルな価値づけがなされた野生動物の資源利用の裏側にある歴史的な権力問題を指摘することにある。</p><p>アフリカにおけるスポーツハンティングは,植民地時代の西洋人が権力や富を象徴するためにアフリカの野生動物を狩猟したことに端を発する。現代になり,人間中心主義からの脱却を目指す環境思想からの狩猟に対する倫理的批判が隆盛したことや,スポーツハンティングを起源とする植民地主義的な政策に対する批判を一因として住民参加型保全の理念が台頭したこと,そしてエコツーリズムが勃興したことから,スポーツハンティングは影を潜めた。ところが,スポーツハンティングは現在まで消滅することなく活発におこなわれており,近年,莫大な経済的利益を生み出す管理された「持続可能性」のある狩猟として,住民参加型保全政策を支える主柱となると,一部の政府や保全論者に注目されている。</p><p>しかし,カメルーン・ベヌエ国立公園周辺でおこなわれているスポーツハンティングは,その地域の住民に雇用機会と利益分配を付与する一方で,植民地時代を彷彿とさせる「自然資源利用権の収奪」という重層的なインパクトをもたらしていた。この背景には,「持続可能性」という環境思想が,歴史的な権力構造を背景に地域住民による狩猟を断罪し,スポーツハンティングを正統化するために,新しい植民地主義的な政治的言説によって解釈されているという現象があった。</p>
著者
赤嶺 淳 長津 一史 安田 章人 落合 雪野 浜本 篤史 岩井 雪乃
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ゾウ類や鯨類など環境保護運動のシンボルとして表象(エコ・アイコン化)された特定の稀少生物と、そうした野生生物が生息する生態空間(生態資源)を資源としてツーリズム振興をはかろうとする人びとの動態を、①東南アジアとアフリカ、日本でのフィールドワークにもとづき批判的に検証し、②エコ・アイコン化された野生生物のみならず、そうした生物群を利用してきた人びとの生活様式・生活文化の保全を目的に、観光振興の可能性を展望した。本研究が目指すmulti-sited approachの実践例として、ラオスにおいて野生生物の利用者と(調査者をふくむ)多様な利害関係者間の対話を創出し、研究成果の社会還元をおこなった。
著者
安田 章人
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.73, pp.1-15, 2008
被引用文献数
1

アフリカにおける自然保護政策の原型である「原生自然保護」は, 植民地時代におけるスポーツハンティングのための猟獣を保護することを主たる動機の1つとして始まった。しかし, そのための地域住民への強権的な対応に対する批判などから, 1980年代に「住民参加型保全」へとモデルシフトし, 住民への高圧的な対応の克服が目指された。また動物に対する環境倫理思想と野生動物の非消費的な利用の隆盛も関係し, スポーツハンティングは過去のものとされがちであった。しかし, スポーツハンティングは現存するばかりでなく, 多くのアフリカ諸国でその活動を活発化させている。本稿は, カメルーン共和国のベヌエ国立公園を調査地として, 現代のスポーツハンティングの実態に注目し, 自然保護政策における位置づけと, 地域住民との相互関係を分析する。その結果, スポーツハンティングを,「自然保護政策を経済的に支えうるツール」として現実的に評価しつつも, それがもつ「地域住民を犠牲にしたうえでおこなわれる欧米富裕層の娯楽」という時代錯誤的な性格を是正する必要性があることを指摘する
著者
安田 章人
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.1-15, 2008-12-31

アフリカにおける自然保護政策の原型である「原生自然保護」は, 植民地時代におけるスポーツハンティングのための猟獣を保護することを主たる動機の1つとして始まった。しかし, そのための地域住民への強権的な対応に対する批判などから, 1980年代に「住民参加型保全」へとモデルシフトし, 住民への高圧的な対応の克服が目指された。また動物に対する環境倫理思想と野生動物の非消費的な利用の隆盛も関係し, スポーツハンティングは過去のものとされがちであった。しかし, スポーツハンティングは現存するばかりでなく, 多くのアフリカ諸国でその活動を活発化させている。本稿は ,カメルーン共和国のべヌエ国立公園を調査地として,現代のスポーツハンティングの実態に注目し,自然保護政策における位置づけと,地域住民との相互関係を分析する。その結果,スポーツハンティングを,「自然保護政策を経済的に支えうるツール」として現実的に評価しつつも,それがもつ「地域住民を犠牲にしたうえでおこなわれる欧米富裕層の娯楽」という時代錯誤的な性格を是正する必要性があることを指摘するThe early wildlife conservation policy in Africa called "Protectionism" was introduced in order to protect wild animals that played an important role in sport hunting. However in the 1980's, the heavy hand of policy enforcers towards local people was criticized, leading to this policy model shifting from "Protectionism" to "Community-based conservation". Two changes were expected from this shift in policy, namely, an exclusion of the colonialistic practices of conservation and a shift to a community based bottom-up approach. Moreover, with the greater observance of environmental ethics and more widespread non-consumeristic use of wildlife, such as ecotourism, sport hunting has become inconspicuous. This study focuses on the Bénoué National Park in Cameroon and describes the present condition of sport hunting as an activity that is not talked of and explores the position in the conservation project, along with its relationship with local people. The government has leased the area located around the national park to the Western capital and earmarked it as a "hunting zone". Sport hunting in that area is the centerpiece of the tourism that provides financial support for the management of the national park. Further, the local labor force and the income generated result in a reciprocal relationship between the industry, the government, and the local people. On the other hand, local hunting has been regulated in cooperation with international conservation institutes. This has resulted in the creation of tension between the concerned parties. One of the expected results of this case study, i.e., the bottom-up approach, was not observed. This is not the expected outcome of the model shift to communitybased conservation. Moreover, it was evident that the conservation structure and the methodologies adopted, which are reminiscent of colonialism, still remain strong. I also highlight the fact that sport hunting can be considered as an economic support for the implementation of the conservation policy. However, in my opinion, sport hunting should change its character from the present colonialistic mindset of the amusement of Western wealthy class with an exclusion of local people.
著者
安田 章人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究は、カメルーン共和国・ベヌエ国立公園地域を主な調査地とし、「持続可能性」を基盤としたスポーツハンティングと地域住民の生活実践の両立および、「人と野生動物の共存関係の構築」に対する学問的貢献と具体的提言を探求することを研究目的とした。最終年度にあたる平成24年度は、以下の二点を大きな目標として研究活動を進めた。つまり、第一に補完的フィールドワークの実施、第二にこれまでの研究成果の具現化である。第一の補完的フィールドワークについて、科研費の使用状況および時間的拘束のため、アフリカ・カメルーンおよびタンザニアでのフィールドワークをおこなうことはできなかったが、比較調査地とした北海道・占冠村において、2013年2月の一ヶ月間、フィールドワークをおこなった。そこでは、猟区を基盤とした野生動物保全管理に揺れる地域社会の姿を把握することができた。アフリカの事例と比較し、今後、論文執筆および学会発表による研究成果の結実を目指す。第二に、研究成果について、これまでのアフリカでのフィールドワークおよび文献研究の成果として、国際学会での発表1件、国内学会・研究会での発表を3件おこなった。また、これまでの研究の一区切りとして、単著を勁草書房より刊行した。本書は、国内初のスポーツハンティングに関する著書として、関係学界にてすでに多くの注目を集めている。3年間にわたる本研究の総括として、まずフィールドワークについて、資金および時間的制約によりカメルーンおよびタンザニアでの十分な調査をおこなうことが難しかった点はあるものの、北海道での調査を開始し、比較事例のレベルにまで達することができた。つぎに、成果発表について、単著の刊行および国際学会誌の掲載が主な成果である。また、Society and Natural Resourcesやヒトと動物の関係学会などの国内外の学会で学術的交流を深めることができた。こうした研究活動をさらに進め、我が国における.学術研究および現実社会に寄与したいと考える.
著者
安田 章人
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は、カメルーン共和国・ベヌエ国立公園を調査地とし、現代アフリカにおけるスポーツハンティングを基盤とした自然保護政策と地域住民の関係に焦点を当て、人と野生動物の共存関係の構築を前提とした住民参加型自然保護政策のあり方を探求することを目的としている。採用第2年度目にあたる2008年度は、研究成果をまとめ、発信することを重点として研究活動をおこなった。詳細は、次項の一覧を参照していただきたい。これまでの研究成果をまとめた2本の論文が、査読を経て学会誌に掲載された。また、もう1本も印刷中・刊行予定である。学術雑誌および商業誌への執筆もおこない、4本(うち1本は国際ワークショップのプロシーディング集)が刊行済みあるいは刊行予定である。研究発表に関しては、今年度は海外での発表に精力的に取り組んだ。その結果、ケニア・ナイロビおよびカメルーン・ヤウンデでの国際ワークショップでの発表をおこなった。研究発表以外にも、他の研究者との関係作りをおこなうことができたことも、大きな成果であった。また、国内でも学会発表をおこなうとともに、これまでのようにアウトリーチ活動の一環として、高校での授業もおこなった。年度末に調査地であるカメルーン北部へ赴き、2ヶ月間の補完調査をおこなった。現在、このデータをまとめ、これまでの成果と融合させ、2009年度内の博士論文の完成および学位の取得のために尽力している次第である。