著者
日髙 聡太 川越 敏和 浅井 暢子 寺本 渉
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.95.22051, (Released:2023-12-25)
参考文献数
33

Our sensory functions decline with age. Older people have been reported to compensate for sensory deficits by using auxiliary equipment, medical treatments, and sensory mechanisms such as multimodal integrations. To the best of our knowledge, there has been no systematic surveys research for sensory problems of older people in daily life. Through an online survey, we investigated what kind of sensory problems exist and how these problems were coped with by older people (60─70 years old), with middle-aged people (40─50 years old) data. Frequency and text-mining analyses found that problems of hearing and body movements were reported more frequently for older people due to aging. Visual problems were reported by all age groups and were attributed to aging, but coped with by using auxiliary equipment and medical surgeries in older people. The 50’s age group reported visual problems most frequently. Our findings suggest that sensory problems subjectively felt in daily life are attributed to aging but are not necessarily remarkable in older people.
著者
山口 修平 小野田 慶一 高吉 宏幸 川越 敏和
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.60-66, 2019 (Released:2020-05-22)
参考文献数
29

【要旨】アパシーは動機づけが欠如し目的指向活動の減少した状態とみなされ、臨床的には意欲低下あるいは自発性低下として観察される。アパシーでは、報酬獲得のための行動オプションの生起、オプションの選択、動機づけに関連した覚醒反応、負荷と報酬の関連の評価など、認知モデルのさまざまな段階において障害が生じている可能性がある。近年、コンピューターによるそのモデル解析も可能となってきた。脳卒中、軽度認知障害、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病などで、アパシーは高頻度に出現する症状である。その病巣部位、脳血流、脳機能画像等による解析から、内側および外側前頭前野、腹側線条体、辺縁系、中脳腹側被蓋野を含む神経ネットワークの破綻がアパシーに関与することが推定されている。アパシーの評価には主観的あるいは他者による評価スケールが使用される事が多いが、脳活動を直接記録する事象関連電位による評価も適切な認知課題を設定することで可能となってきた。アパシーはうつと合併する事があるが、臨床的に区別をする事が必要であり、その両者は基盤となる神経機構に相違があることが、機能的MRIや拡散テンソル画像などの手法によって明らかにされている。アパシーの治療に関しては神経薬理学的な研究が進展している。神経伝達物質との関連では、動機づけあるいは報酬志向性にドパミンとセロトニンの交互作用が重要であり、その研究成果が薬物治療の確立に貢献することが期待される。
著者
西口 周 青山 朋樹 坪山 直生 山田 実 谷川 貴則 積山 薫 川越 敏和 吉川 左紀子 阿部 修士 大塚 結喜 中井 隆介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】一般的に,加齢に伴う脳萎縮などの脳の器質的変化が,アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)や軽度認知機能障害(mild cognitive impairment:MCI)の発症リスクを高めるとされている。また,ワーキングメモリ(working memory:WM)低下はADやMCIの前駆症状であり,認知機能低下と共にWMに関連する脳領域の活動性が低下すると報告されている。つまり,ADやMCIの発症を予防するためには,WM関連領域の脳活動を高め,脳萎縮を抑制することが重要であると予想されるが,脳萎縮とWMに関連する脳活動の関連性はまだ十分に検証されていない。そこで本研究では,地域在住高齢者における脳萎縮とWM課題中の脳活動との関連性を機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)を用いて明らかにすることを目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者50名(73.5±5.2歳,男性27名,女性23名)とした。Mini-Mental State Examination(MMSE)<24点の者,重度な神経学的・整形外科的疾患の既往を有する者は除外した。全ての対象者のWM課題中のfMRI画像及び構造MRI画像は3.0TのMRI装置(シーメンス社MAGNETOM Verio)にて撮像した。WM課題としてはブロックデザインを用いて,画面上に映る点の位置がひとつ前の点の位置と一致するかを問う1-back課題と,画面上に映る点の位置が中心かどうかを問う0-back課題を交互に8ブロック行なった。また,構造MRI画像をVSRAD advanceにより処理し,対象者の脳全体における定量的な灰白質萎縮割合を算出した。統計解析は,統計処理ソフトウェアSPM8を用いてfMRIデータを処理した後,1-back課題と0-back課題のサブトラクションを行ない,WM課題中の脳活動部位を同定した。続いて,相関分析にて脳萎縮割合とWM課題中の脳活動部位の関連性を検討した。なお,WFU PickAtlasを用いて,解析範囲を前頭前野,内側側頭葉に限定した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当該施設の倫理委員会の承認を得て,紙面および口頭にて研究の目的・趣旨を説明し,署名にて同意を得られた者を対象とした。【結果】本研究の対象者のMMSEの平均値は,27.5±1.9点であった。WM課題において,右の海馬,海馬傍回を中心とした領域,両側の背外側前頭前皮質(Brodmann area:BA9),右の下前頭回(BA45)を中心とした領域に賦活がみられた(p<0.005,uncorrected)。また,脳萎縮割合と関連がみられたWM課題中の脳活動部位は,両側海馬及び両側の背外側前頭前皮質(BA9),右前頭極(BA10)を中心とした領域であった(p<0.005,uncorrected)。なお,これらの関連性は負の相関を示しており,脳萎縮が小さいほど上記の領域の脳活動量が大きいという関連性が認められた。【考察】本研究の結果により,脳萎縮の程度が低いほど,視空間性WM課題中の海馬,背外側前頭前皮質を中心とした領域の脳活動が高いことが示唆された。視空間性WMは前頭前野や海馬の灰白質量と関連すると報告されており,本研究はそれを支持する結果となった。海馬を含む内側側頭葉は記憶機能の中枢であり,一方,背外側前頭前皮質はWMを主とする遂行機能を担う領域とされており,双方ともにともに加齢による影響を受け,萎縮が強く進行する領域であると報告されている。つまり,これらの領域の活動が低下し萎縮が進行することが,記憶機能や遂行機能の低下を主とする認知機能低下を引き起こし,ADやMCIの発症リスクを高める要因の一つになりうると考えられる。今後は,二重課題や干渉課題といったWMの要素を取り入れた複合的な運動介入を行ない,関連領域の脳活動を高めることで,脳萎縮を抑制できるかどうかを検証していく必要があると考える。本研究は横断研究のため脳萎縮と脳活動の因果関係は不明であり,また脳の詳細な萎縮部位は同定していないことが本研究の限界であると考える。今後は,詳細かつ縦断的研究を行なうことが検討課題である。【理学療法学研究としての意義】高齢者の認知機能低下を抑制することは,近年の介護予防戦略において重要な役割を担っている。本研究の結果により,脳萎縮の程度には記憶や遂行機能に関連する領域の脳賦活が関連することが示された。本研究を発展させることで,脳萎縮や認知機能低下抑制を目的とした非薬物療法のエビデンスを構築するための一助となると考えられる。
著者
川越 敏和
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.148-154, 2017-09-30 (Released:2017-12-07)
参考文献数
47

Many reports have associated aging with deterioration in a number of cognitive functions. These reports have also demonstrated the beneficial effect of physical fitness on cognitive function, especially executive function. Here, studies related to cognitive-physical association in older adults are reviewed and I also report our recent studies for such association. In our study, we utilized task-based and resting-state functional magnetic resonance imaging techniques. The mechanism of the relationship between physical fitness and cognitive function could be further investigated by functional brain network.