著者
川野 英二
出版者
日本社会病理学会
雑誌
現代の社会病理 (ISSN:1342470X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.5-20, 2021 (Released:2022-11-01)
参考文献数
40

現在の社会調査をめぐる状況は、大規模な量的調査のデータを収集したアーカイブが構築され、先端的な計量モデルが適用される二次分析が普及している一方で、数少ない当事者の主観的な経験を再構成する質的調査の両極端に分かれているようにみえる。そこでは、かつて農村・地域調査でおこなわれていたような、ある地域をつぶさに調査してまわり、実態を明らかにしようとする「実態調査」は目立たないものとなっている。しかし、各大学が立地する地域にねざした社会調査はいまでも地道におこなわれていることはあまり知られていない。大阪では、工業化の時代から大阪を対象とした自治体社会調査が実施され、それは戦後の社会病理学調査に引き継がれてきた。とくに関西の社会学者たちは、共同研究として大阪社会学研究会を組織し、大阪を拠点とした社会調査を実施してきた。大阪の社会病理学研究には時代的な限界があったが、これまで現代の都市・社会問題を課題とする様々な実態調査が積み重ねられてきた。 本稿では、主に研究会メンバーであった故土田英雄が残した【土田英雄資料】 をもとに、大阪社会学研究会のおこなった調査を再構成し、戦後から現代にいたるまで大阪の社会調査がどのようにおこなわれてきたのか、そして今後の展開について考えたい。
著者
川野 英二 木田 勇輔 原田 謙
出版者
Japan Association for Urban Sociology
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.40, pp.1-7, 2022-09-05 (Released:2023-09-16)
参考文献数
7

At the 2021 annual conference of the Japan Association for Urban Sociology, we held a symposium on “Neighborhood Effects and Cities in Japan.” Although we planned this symposium as an international one, the pandemic of Covid-19 made it impossible to invite presenters from abroad. Thus we invited three leading researchers in this field living in Japan to the symposium. The three presenters referred to some important topics such as ethnographic research, urban subcultures, urban crimes, neighborhood disorder, health inequalities, and deprivation. The presentations and the discussion raise some important questions. (1) What contexts are important in the research of neighborhood effects? (2) What kind of social process works in neighborhood effects? (3) How can we measure neighborhood environments in the context of social research? We expect that this symposium stimulates theoretical and empirical research on neighborhood effects in the field of urban sociology.
著者
落合 恵美子 伊藤 公雄 岩井 八郎 押川 文子 太郎丸 博 大和 礼子 安里 和晃 上野 加代子 青山 薫 姫岡 とし子 川野 英二 ポンサピタックサンティ ピヤ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

アジアの家族は多様であり、東アジアと東南アジアの違いというような地理的違いにも還元し尽くせないことが、統計的に明らかになった。一枚岩の「アジアの家族主義」の伝統も現実も存在しない。しかし圧縮近代という共通の条件により、国家よりも市場の役割の大きい福祉レジームが形成され、そのもとでは家族の経済負担は大きく、移民家事労働者の雇用と労働市場の性質によりジェンダーが固定され、近代的規範の再強化も見られる。